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カーエレクトロニクス事業を強化

パイオニア、ドコモ・三菱電機と資本業務提携 − 中期経営計画も発表

2013/05/13 ファイル・ウェブ編集部
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パイオニアは、2012年度通期連結業績決算を発表。同時に中期事業計画も発表し、三菱電機とNTTドコモとの資本・業務提携についてもアナウンスした。

'12年度業績は増収減益に

2012年度通期の売上高は4,158億円(前年度比3.5%増)と増収となったが、営業利益は60億円と同52.1%減となり、純損益は196億円の赤字となった。

2012年度通期連結業績の概況

光ディスクドライブ関連製品や市販カーナビの売上が減少したものの、OEMカーナビや市販カーオーディオの売上が増加。カーエレクトロニクスの売上は前期比15.4%増の約3,125億円となった。円安の影響もあり、前年度よりも売上高を伸ばした。一方でホームエレクトロニクスの売上は前期比22%減の959億円。DJ機器は増加したものの、光ディスクドライブ関連製品が、AV機器向けを中心に大きく減少したことが大きかった。

カーエレクトロニクスの概要

ホームエレクトロニクスの概要

一方営業利益は、売上高が増加したものの為替の影響などで販売費や一般管理費の増加、原価率の悪化があり、前年度比52.1%減益となった。ホームエレクトロニクス分野の営業損益は、前年度の約35億円の黒字から約28億円の赤字となった。

2013年度の通期連結業績予想も発表。売上高は5,150億円、営業利益は150億円、純利益は60億円と予想し、増収増益となる計画だ。カーエレクトロニクスでOEM、市販市場向けともに増収を見込んでいるほか、ホームエレクトロニクスでも、光ディスクドライブ関連製品は引きつづき減収を見込むものの、DJ機器やCATV機器などで売上増を予想している。

2013年度の通期連結業績予想

セグメント別の通期連結業績予想


カーエレクトロニクスの業績予想

ホームエレクトロニクスの業績予想
利益については、売上拡大のための活動費用や新規事業に対する先行投資費用が発生するものの、売上高の増加や原価率の改善が見込めること、また構造改革の効果などにより、営業利益、経常利益、当期純利益ともに増益を見込んでいる。

三菱・ドコモと提携しカーエレクトロニクス事業を強化

同社はまた、2013年度、2014年度の2年間の中期事業計画も発表した。2014年度には売上高5,400億円、営業利益200億円、純利益110億円という計画を発表している。

三菱電機およびNTTドコモとの戦略的アライアンスの狙い

主力のカーエレについてハード/ソフト両面での強化を目指す

主力のカーエレクトロニクス事業では、今後の自動車環境の変化を見据え、これまでのカーナビ端末の領域を超えた、高度な情報を扱う次世代車載機器への変化が起こると予想。この流れに対応するため、カーナビで協業している三菱電機(株)と資本・業務提携を行う。これまで三菱電機は2.3%のパイオニア株式を保有していたが、三菱電機は第三者割当増資を引き受けることで、約39億円を追加出資。追加出資後の持株比率は7.49%となり、8.05%を持つシャープに続く第2位株主となる。

パイオニアと三菱電機は、車両情報と連携した次世代車載機器を実現するための基盤技術、「マルチメディア・プラットフォーム」の共同開発を行う。クルマの部品の管理やほかのクルマとの通信などを行い、安全・安心などの新たな価値を提供していくという。

さらにNTTドコモとも資本・業務提携を行い、同社を対象にした、約50億円の第三者割当増資を実施する。出資後のNTTドコモの持株比率はは6.92%となり、シャープ、三菱電機に続く第3位株主となる。

パイオニアとNTTドコモは、クラウド情報サービス基盤の取り組みを強化。NTドコモのスマホユーザー基盤や通信インフラ、コンテンツやサービスと、パイオニアの持つ膨大な交通データや、それらを処理するサーバー技術を組み合わせ、自動車ユーザーへのクラウド情報サービス関連事業を早期に立ち上げる。

そのほか、コスト構造の見直しも実施。製品開発にモジュラーデザイン方式を本格的に採り入れるほか、生産拠点の再編やスリム化も実施する。

ホームAV事業は分社化して新会社設立

中期事業計画でのホームエレクトロニクス事業はDJ機器を主軸に置き、堅実な成長を目標とする。また別項で記事にしたとおり、今年7月には、ホームAV事業を分社化し、国内販売会社のパイオニアマーケティング(株)、また電話機製造のパイオニアコミュニケーション(株)と合併させる。合併後はパイオニアの100%子会社となる。いったんはパイオニアマーケティングが吸収分割承継会社となるが、最終的に新会社はパイオニアホームエレクトロニクス株式会社という名称になる見込み。さらに光ディスク事業ではさらなるスリム化を行い、本年7月を目処に、人員を含めた事業体制を前期比で約40%削減する。

「今回の事業計画は極めて重要」− 小谷社長会見

本日パイオニアは、業績や中期事業計画に関する記者会見を実施。小谷進社長らが出席した。

パイオニア 小谷進社長

通常、同社の中期事業計画は3年スパンで発表されるが、今回発表されたのは2014年度と2015年度の2カ年計画。これは、急激な変化のなかでどう対応していくかをより具体的に表明するためだという。

2カ年の中期事業計画を発表した

「前回発表した中期事業計画は、想定以上の事業環境の変化により収益性が低下。コアビジネスであるカーエレクトロニクス事業は、自動車の小型化・低価格化の進行、などにより利益目標に届かなかった。DJ機器は順調だが、ホームAV分野で安定的収益が得られないなど課題が見えてきた。これを改善すべく、より強固な事業体制が必要と考え、今回の事業再編成に至った次第だ。今回の事業計画は極めて重要だと考えている」と語る小谷社長。

中期事業計画の概要

「前年度は度重なる下方修正で当初の目標を達成できず、申し訳なく思っている。急速な事業環境の変化に迅速・的確についていけなかった。また、当初目標としていたコストダウンが思ったようにいかなかったこと、在庫削減のための施策に追われてしまったことなどが理由だ。今回発表した事業計画は、この反省を踏まえて見通しを立てた。三菱電機やNTTドコモとの資本・業務提携は、足元の利益改善にすぐ寄与するものではないが2016年度以降に収益に好影響を与えてくれると考えている。両社とはこれまでも協業してきており、まだ小さいとはいえ収益化に貢献してきてくれている」と説明する。

また、シャープとの事業合弁を行っている光ディスク事業については「上述のとおり40%程度のスリム化を目指している。「光ディスク事業の内訳は、シャープ向けの製品とPC向けドライブ等に分けられる。パイオニアは光ディスク事業関連の沢山の特許を保有しており、その特許はカー/ホームなど様々な事業にまたがって使われている。家電市場の縮小に伴い市販向けレコーダー搭載ドライブなどが大きく影響を受けているが、だからと言って市場がすぐなくなるわけではない。一部伸びている分野もある。とはいえ全体的な方向性としてはメモリに進んでいくと見ているため、今後光ディスク事業に投資することはまずない。収益を維持できる範囲で続けていく考えだ」と語った。

「新規事業としては、今後2年間に事業がスタートする有機EL照明と医療機器を充填テーマとして取り上げた。有機EL照明は来年2月頃量産化を開始予定。医療機器は小型血流計を来年春までに商品化する目処がたった。ただし、どちらも本格的収益立ち上がりは2016年頃と見ていおり、このふたつの利益は中期事業計画の数字に織り込んでいない。2014年度150億円、2015年度200億円という営業利益は、前年度の数字を見ても高いハードルとは言えない。これまでの反省点を踏まえ、市場変化に迅速に対応していく。この目標を必ず達成できる、していきたい、と考えている」と積極的な姿勢を示した。

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