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松下、HD-PLC方式を採用したPLCアダプターを発売 ― 最大速度190Mbps、コンセントに挿すだけで設定可能

公開日 2006/11/13 18:16
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松下電器産業(株)は、「HD-PLC」方式を使用した高速電力線通信(PLC)用アダプター「BL-PA100KT」「BL-PA100」の発表会を本日開催した。発売する製品のラインナップは以下のとおり。

■PLCアダプター スタートパック「BL-PA100KT」 ¥OPEN(予想実売価格20,000円前後) 12月9日発売
■増設用アダプター「BL-PA100」 ¥OPEN(予想実売価格13,000円前後) 12月9日発売


BL-PA100

BL-PA100の接続端子部

本体前面で通信速度の確認ができる
本機は家庭内の電力線をLAN回線として利用するPLCアダプター。今年始めのInternational CESで北米向けの発売アナウンスがなされていたが(関連ニュース)、今年10月4日の総務省の公布により、日本でも製品化の運びとなった。

通信速度は最大190Mbps(PHY速度)、実効通信速度で80Mbps(UPD)、55Mbps(TCP)。通信距離は宅内のみ(1分電盤内150m)で、ターミナルアダプターは最大15台まで接続が可能だ。


パソコンを使わず設定できる
設定の際パソコンは不要で、すでに同一キー埋め込みによって親子設定がなされているマスターアダプター(親機)とターミナルアダプター(子機)の電源プラグを宅内電源コンセントに差し込むだけだ。

ターミナルアダプター増設も、マスターアダプターとターミナルアダプターを同一コンセントにつなぎ、本体にある「SET UP」ボタンを長押しするだけで可能だ。

PLC技術にはHomePlug Alliance、UPA(Universal Powerline Associationの提唱している方法が存在しているが、本機は同社が提唱する独自のPLC規格「HD-PLC」方式を採用している。特徴として、独自技術の「Wavelet OFDM」方式と、米国商務省標準技術局(NIST)によって選定された次世代標準暗号化方式「AES128bit暗号技術」を採用している点、設定や増設が容易である点が挙げられる。

Wavelet OFDMとは、周波数帯ごとに細かく信号をカットし、高効率・高速度を実現する方法だ。深いフィルター特性を持ち、フレキシブルなノッチフィルターを外部回路なしで実現する。そのため既存機器への影響を低減するほか、アマチュア無線帯域全てとラジオNIKKEIの周波数帯域を阻害しない利点がある。


Wavelet OFDMの説明

AES128bit暗号技術の説明
また、AES128bit暗号技術は、各製品に違う暗号キーが設定されており、異なるネットワーク間で傍受されないため、同一の送電線を使用していてもセキュリティは保護される。


パナソニック コミュニケーションズ(株)藤吉一義氏
発表会の冒頭、パナソニック コミュニケーションズ(株)代表取締役社長の藤吉一義氏は、有線LANではケーブル配線が煩雑になる、無線LANではセキュリティが甘く、遮蔽物による速度低下があるなどの問題を挙げ「電源を差し込むだけで家庭内ネットワークが構築できるPLCはこれらの問題を解決する方法だ。将来的には家庭内の家電が全てPLCでネットワーク化されるだろう」と予測した。

さらに「今日発表する製品は、PLC製品として型式指定された第1号のもの。今後PLC製品の開発を積極的に押し進め、“PLCで暮らしを豊かに”を合言葉に、安心・安全・快適なユビキタスネットワークを実現したい」と抱負を述べた。


パナソニックマーケティング本部 原昭一郎氏
また、パナソニックマーケティング本部 PCDグループ グループマネージャーの原昭一郎氏が、国内市場向けの営業戦略について説明した。

同社の調査によると、日本国内でブロードバンド回線を使用している世帯は2300万世帯にのぼり、PCを複数台使用している世帯も急増しているが、そのうちの60%以上が配線の手間やセキュリティなどに不満を持っているという。

同氏は「競合ではなく共存」であると強調。HD-PLC/有線LAN/無線LANそれぞれの方式の長所を活かし、補完しあう関係であると述べた。


PLCアダプター販売展開の予測

PLCアダプターとモジュールの世界需要

今後の展望
販売展開としては、まずPCユーザーへのアプローチから始め、デジタルAV機器インターネットへの接続を容易にし、最終的には白物家電への組み込みを図るという。「将来的にイーサネットジャックがあるものはPLC使用が標準になるのでは」と述べ、「弊社はICチップからデバイス、アダプターまでPLC関連機器を一貫して生産している。この総合力を活かしてさまざまな展開をしていきたい」と抱負を述べた。


来年3月発売予定のタップ一体型アダプターも出品された
また、この日、2007年3月発売予定のタップ一体型PLCアダプター(
価格、発売日未定)や、機器組込用PLCモジュール「MMDPMS150」シリーズのサンプル出荷もアナウンスされた。出荷開始は12月1日で、価格や量産開始の目処は未定だという。

以下、発表会での主な質疑応答の内容を掲載する。

Q: PLCモジュールはどのような機器への組み込みを狙っていくのか。
A: 我々としては、家庭からオフィスまで、ネットにつながる機器にはすべて搭載をするよう働きかけていきたい。ルーターメーカーからは「すぐにでも付けたい」という要望が来ているし、ほかのメーカーさんからも色々考えてもらえるのではないか。また、小さなオフィスやお店などにも展開が見込めると考えている。

Q: PLCモジュールのサンプル価格、月産個数、量産時期は。
A: 個別対応なので回答は差し控えたい。

Q: PLCの他方式との共存は可能か。
A: すでに中低速では市場ができてしまっている。3方式が並立したとしても、それぞれが共存する方法を提案しているところだ。

Q: 無線LANなどは現在かなり低コストで組み込みが可能。外付けの場合、価格高になってしまうと思うが、どうやって戦っていくか。
A: 無線LANとは競合するものではなく、お互いに補完する関係。それぞれ適材適所があるので、PLCのメリットはご理解頂けるものと思う。アメリカではスターターキットを199ドルで販売し、予想以上の反応を得ている。ただし、将来的に出荷する数が増えれば無線LANモジュールのコストと同じレベルにはできると考えており、コスト面でも遜色なくなるはずだ。

Q: HD-PLC方式の長所を教えて欲しい。
A: Wavelet OFDM方式を採用しているのはHD-PLCのみで、アマチュア無線などへの影響を抑えている。また、これまで難しかった設定を簡便化し、暗号化をPCレスで行える。さらに、接続時のスピードを表示できるなど、使いやすさを高めている。

Q: 海外では宅外でのPLCもサービスされているようだが、国内ではどうなのか?
A: 国内は宅内での使用のみ認められた。国内では、高速インターネットに光ファイバーなどがすでに普及しており。あまり必要はないのではないか。

Q: 宅外用機器を海外で展開する予定はあるか。
A: 今のところ開発には着手していない。今後、動向を見極めて対応したい。

(Phile-web編集部)

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製品スペックやデータを見る
  • ブランドPANASONIC
  • 型番BL-PA100KT/BL-PA100
  • 発売日2006年12月9日
  • 価格¥OPEN(予想実売価格20,000円前後)/¥OPEN(予想実売価格13,000円前後)
<PLCインターフェース>●通信方式:HD-PLC ●周波数範囲帯域:4〜28MHz ●変調方式:Wavelet OFDM ●通信速度:最大190Mbps(PHY速度) ●実効通信速度:最大80Mbps(UDP)/最大55Mbps(TCP) ●セキュリティ:AES128bit暗号技術 ●通信距離:最大150m(環境条件により変化)
<LANインターフェース>●物理インターフェース:10Base-T/100Base-TX×1 MDI-/MDI-X クロス/ストレートケーブル自動認識 ●データ転送速度:10Mbps/100Mbps(オートセンス) ●ポート数:1ポート(RJ-45コネクター) ●対応プロトコル:TCP/IP/UDP/HTTP(IPv4,IPv6)
<接続に関する仕様>●通信可能なPLCアダプター台数:一台のマスターモード、最大15台(推奨台数)のターミナルモードのPLCアダプターが電力線を介して通信可能 ●接続端末機器の台数:マスターアダプター、ターミナルアダプターそれぞれに8台(推奨値)
<本体>
●消費電力:約4W ●外形寸法:約121W×40H×70Dmm(突起部含まず) ●質量:約240g(本体のみ)