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Senka21好評連載 工藤恒夫「21世紀のブランドの課題」<下>

公開日 2002/05/02 10:34
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●Senka21で好評連載中の、工藤恒夫氏(平成国際大学教授、東京マーケティングアカデミー学院長.の「21世紀のブランドの課題」から、昨日に続き、4月号掲載の「イーベイのブランド戦略1」をお送りする。

<昨日からの続き>
このような発想に基づいて、95年9月に自分の狭いアパートメントで開業した「イーベイ」は、ビジネス開始当初はオークション参加者を確保するため、ユーザーから利用料を徴収しなかった。しかし、6ヵ月も経たないのにサイトの維持費が急増したため、対抗策として売り手から1点当り25セントの出品料を課すことにした。その後出品料は改正され、2001年5月時点では、最低入札額またはリザーブ・プライスが9・99ドルまでは30セント、10〜24・99ドルまでは55セント、25〜49・99ドルまでは1・10ドル、50〜199・99ドルまでは2・2ドル、200ドル以上の出品料は3・30ドルになっている。

売り手は出品料のほかに、オークションが成立すると、落札料を払わなければならない。支払額は最高で、入れ額の5%に始まり、落札額が高くなるにつれて、パーセンテージが下がる仕組みになっている。ただし、不動産と自動車の出品料と落札料は固定料金制を採用している。不動産については、出品料は一律50ドル、落札料ゼロ。自動車については、出品料一律25ドル、落札料も一律25ドルである。イーベイの売上げは2000年までは、オークションの売り手が支払う料金がすべてであった。しかし、AOLとの提携を契機に関係企業の広告を実験的に扱うようになり、2000年10月以降は広告を本格的に扱うようになって現在に至っている。

イーベイのビジネスモデルはインターネット上で売り手と買い手が対話できるシステムを提供し、売り手から出品料と落札料を徴収するという極めてシンプルなものだ。このビジネスモデルは創業初日から営業利益を生み出し、日を逐うごとに黒字が増える仕組みになっている。1999年には純利益が1080万ドルに達した。イーベイのビジネスモデルの持徴は自社サイトで売り手と買い手の間に行われる取り引きに対して完全に中立であることだ。中立の立場に立っているために、普通のビジネスでは不可欠ないろいろな業務が不要となる。

具体的には、在庫を持つ必要もないし、出品される商品に責任を負ったり、買い手から代金を徴収したり、商品の物的流通機能を持つ必要もない。イーベイの商品販売に伴うコストの大半は、顧客サポート費とサイトの減価償却費で構成されている。

ところで、今日のイーベイの驚異的な成長はCEO・メグ・ウィットマンの手腕によりところが大きいと言われている。弱冠30歳の創業者・オミディアはイーベイの今後の順調な成長には、自分に代わって経営を任せられる経験豊かなCEOを採用する必要あると考え、メグ・ウィットマン女史にイーベイのCEO就任を依頼した。彼女はプリンストン大学とハーバード・ビジネス・スクールを卒業した後、ベイン&カンパニーのサンフランシスコ事務所のコンサルタント、次いでディズニー・コンシューマー・プダクツのマーケティング部門の上級副社長を務めた。95年2月には生花を宅配するフローリスツ・トランスワールド・デリバリー(FTD.の社長兼CEOに就任。次いで就学前児童部門のゼネラル・マネージャーとして玩具メーカー・ハスブロ社に勤務していた。メグ・ウィットマンはオミディアの強い要請で98年3月イーベイにCEOとして入社した。彼女の年俸はオミディアとスコールの約2倍。さらにオプションとして、イーベイ株720万株(総株数の約6%.を1株当り0・022ドルで購入できる特典も与えたれた。

イーベイは在庫を持たず、集金コストも物流コストもかからない上に、スタート時点から粗利が大きいという優良企業の共通項とも言えるメリットを有していた。この点について、CEOメグ・ウィットマンは、次のように述べている。

「我が社は粗利が非常に大きいところからスタートしました。私は20年の経験から、スタート時点で粗利の大きい会社はすべてがうまくいくとわかっていました。最初から粗利が少ないと資金繰りが難しくなるからです。ハスブロ社では、粗利益率40%と42%に雲泥の差があり、なんとかその2%を埋めようと必死で努力したものです。イーベイがきわめて健全な粗利からスタートしたおかげで、必要なものに必要なだけ投資できる柔軟性がもたらされたのです」(前掲「イーベイ・オークション戦略」99頁.

商品在庫や莫大な固定資産に投資する必要のないイーベイのビジネスモデルは、アマゾン・ドット・コムと比較すると、全く対照的だ。例えば、99年12月31日時点でのアマゾンの総資産に対する在庫と固定資産の割合は21・8%だ、イーベイのそれは11・6%に過ぎない。イーベイの資産の大半は現金、有価証券、債券などであるため、顧客サービス、製品開発、ブランド確立などの前向きの活動に何時でも投入できる点が特長である。

設立初年度から利益を出し続けているイーベイ、のビジネスモデルが、創立7年目の2001年第1・四半期にようやく黒字に転換できたアマゾンのビジネスモデルとの差異を生んだのである。
(この続きは、現在発売中の「Senka21 5月号」で是非ご覧ください/Senka21編集部)

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