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Senka21好評連載 工藤恒夫「21世紀のブランドの課題」<上>

公開日 2002/05/01 10:55
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●Senka21で好評連載中の、工藤恒夫氏(平成国際大学教授、東京マーケティングアカデミー学院長)の「21世紀のブランドの課題」から、4月号掲載の「イーベイのブランド戦略 1」を、今日と明日の2回に分けてお送りする。


ネット・ビジネスの第3のタイプであるネット・オークションの世界で先発で、しかも最大の企業・米国のイーベイ(eBay)の戦略を考察する。

イーベイはネット・オークションの業界ではダントツの世界ナンバーワン企業である。創立は95年9月。創立者はP・M・オミディア。彼は契約していたプロバイダーが提供するサイトを使って、自分の狭いアパートメントで個人事業として、ネット・オークションビジネスを開業した。設立時にはファイル用キャビネット、古いスクールデスク、ラップトップ型パソコンしかなかったという。ところが、事業開始後、世界発のネット・オークションビジネスはきわめて順調に成長し、98年9月にはIPO(株式公開)にこぎつける。アフター・マーケット取引きの初日、株価は18ドルから54ドルに上昇、終値は48ドルであった。98年末の終値は80へ上昇。さらに、IPOから半年後、株価は200ドルに達した。

ところで、ネットビジネスを商品やサービスの売り手と買い手という観点から見ると、次の4つに分けられる。企業から消費者(BtoC)、企業から企業(BtoB)、消費者から企業(CtoB)、消費者から消費者(CtoC)の4つである。ネット・オークションは、「CtoC」の代表的な事例である。なお、「CtoC」は個人間取引・「PtoP」(Person to Person)とも呼ばれている。自分の手持ちの商品を売りたい人がネット上のオークション市場に出し、買い手が競り落すという競売(Auction)をインターネット上で行うのがネット・オークションであり、米イーベイが世界の最大大手企業である。

創立者ピエール・オミディアはパリで生まれた。彼はボストン郊外のタフツ大学でコンピューター・サイエンスの学位を取得した後、アップル・コンピュータのソフト部門の子会社であるクラリスに入社し、ここで有名なソフト「マックドロー」の開発に携わった。

一方、オミディアのパートナーのジェフ・スコールはスタンフォード大学のMBA(経営学修士)を取得後ナイト・リッダー・ニュースペーパーズ社のオンライン・インフォメーション事業をはじめとして、いくつかの実践的なビジネスを体験していた。この両者がパートナーを組むことによって、世界最大のネット・オークションが誕生したのである。

ところで、従来のオークション市場はきわめて効率の悪いものであった。地理的に離れている買い手と売り手が相手を探して取り引きを成立させること自体が難しい以上に、会場費のコスト等を考えると一般人にとって、オークション取引きは現実的なビジネスとはいえなかった。

しかし、インターネットの出現が、一般人のオークションに対する潜在ニーズを一挙に充足させることになる。創業者のオミディアはネット・オークションビジネスの発想の原点を次のように述べている。

「僕は誰もが同じ情報にアクセスできて、同じ条件で戦うことができる平等な土俵、効率的な市場をつくり出すにはどうしたらいいか、ずっと考えていた。大企業が消費者に製品を売ったり、インパクトのある広告を出すだけのサイトではなく、人々が相互に『取引』できるような場所だ(中略)。ある程度の数の人間を集め、各人が妥当と思える金額を提示する。それができれば製品の真値が明らかになり、究極的に公平なシステム、つまり買い手も売り手も万々歳というシステムがつくれるはずだ」(デビット・ブネルとリチャード・レッケ共著『イーベイ・オークション戦略』30頁・ダイヤモンド社)
(この続きは明日掲載)

(Senka21編集部)

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