ロスレス再生や遅延への対応を強化
「Snapdragon Sound」が第2世代に進化、何が変わる?クアルコム幹部に聞いた
■aptX Losslessは48kHz/16bit対応になる
S5/S3 Gen 2 Sound PlatformはBluetoothオーディオによるロスレス再生への対応を強化する。
クアルコム独自のaptX AdaptiveコーデックをベースとするaptX Losslessは、対応する機器どうしを接続するとロスレス品質のワイヤレスオーディオ再生が楽しめる。現在はCD品質の44.1kHz/16bitを音質の上限に設定しているが、Gen 2のローンチに合わせて48kHz/16bitまで拡張する。
チャップマン氏は「音楽ファンの方々に注目されているロスレス品質の音楽配信サービスをより心地よく楽しめるように、クアルコムはaptX Losslessの技術をブラッシュアップすることに力を注いでる」と話す。今後はハイレゾロスレス再生にも対応するのだろうか。チャップマン氏は数値の目標については言明しなかったが、「今後も一歩ずつ限界を超えて、より高品位なロスレス再生を楽しんでいただけるように挑戦を続ける」と意気込みを語ってくれた。
Snapdragon Summitではボーズの「QuietComfort Earbuds 2」が、近くソフトウェアアップデートによりSnapdragon Soundに対応することも発表された。aptX Adaptive、aptX LosslessなどSnapdragon Soundに含まれる高音質技術から実装が進むようだ。
aptX Losslessに対応するデバイスはクアルコムのaptX特設サイトに最新状況が公開されている。チャップマン氏によると「今後ワイヤレスヘッドホンもSnapdragon Soundとロスレス再生の輪の中に加わる」という。
■aptXとLE Audio、両方の技術をベースとしたワイヤレス・ロスレス再生に対応
Snapdragon Soundの発表前後に誕生したクアルコムのモバイル向け、ワイヤレスオーディオ向けのSnapdragonシリーズのチップセットは、いずれもBluetooth LE Audioへの対応を完了している。チャップマン氏は「いよいよ2023年には私たちが楽しめるLE Audio対応のデバイスが商品化され、その数も充実してくるだろう。クアルコムもLE Audioへの最適化を図るために少なからぬ投資をしてきたので、早く一般にそのメリットが実感できるものになってほしい」と展望を語っている。
LE Audioが普及するためにはメーカーによる製品の企画開発だけでなく、グーグルによるAndroid OSへの組み込みも欠かせない。鍵を握るのは、Bluetoothの技術を取りまとめるBluetooth Special Interest Group(SIG)による継続的な働きかけだ。
クアルコムのS5/S3 Gen 2プラットフォームはLE Audioベースのロスレス再生にも対応する。この機能を実現するためにいくつか乗り越えるべき課題があったと、チャップマン氏は振り返る。
「データ量の多いロスレスのオーディオ信号を伝送するためには “太いパイプ” が必要です。ところがLE Audioが採用するLC3コーデックは、もともと低データレートでも高いオーディオ品質を確保することをコンセプトとしており、ロスレスオーディオには不向きでした。そのためLE Audioをベースに独自の技術を加えることによってパイプを拡張しています。その次に遭遇した課題は、東京の大きな駅近辺など無線通信が混み合う環境ではロスレス再生の安定性が確保しづらくなることでした。リスニング中に伝送が途切れたり、ノイズが混入しないように、無線通信の環境に合わせて通信を柔軟に適応できる、aptX Adaptiveと同じ仕組みをLE Audioによるロスレス再生にも取り込んでいます」
LE Audioによるロスレス再生を実現する太い伝送路と環境適応型のアルゴリズムを処理するためには、送受信側双方に高いチップセットの性能が要求される。そのため、LE Audioベースのロスレス再生についてはSnapdragon 8 Gen 2と、S5/S3 Gen 2 Sound Platformの組み合わせが必要だ。
LE Audioによるロスレス再生もまた、aptX Losslessコーデックと同様に無線通信環境が十分なスループットを得られない場合、音楽リスニングを途切れさせないことを優先して、転送ビットレートを落としながらロッシー(非可逆圧縮)なストリーミング再生に切り換える。