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【特別企画】フラグシップと比較される中級機

「入魂の中級機」がデノンの矜恃。110周年記念SACD/プリメイン/カートリッジ開発者に聞いたこだわり

公開日 2020/11/24 06:30 大橋伸太郎
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●PMA-A110

プリメインアンプ「PMA-A110」:¥330,000

ミドルクラス帯をベースにしつつ、フラグシップの技術を投入

――プリメインアンプ「PMA-A110」も、ベースになるのはミドルクラスの「PMA-2500NE」ですね。

Product Engneering Core Business 3 新井 孝氏(以下、新井):フラグシップの「PMA-SX1 LIMITED」をベースにしなかった理由は、DCD-A110でも挙がっていた価格やユーザーの数に加え、フルバランス構成であることや、大きな筐体をもちながら50W+50W(8Ω)と小出力であることなど、特殊なモデルであるためです。

また、機能上はトーンコントロールもバランス調整もヘッドホン端子もなく、バランス入力でのCD再生やフォノ再生に特化した孤高のアンプです。なので110周年記念には、もっとメジャーで多機能な2500NEをべースにする道を選びました。

――その一方で、PMA-SX1 LIMITEDのパーツをふんだんに盛り込んでいます。

新井:はい。SX1 LIMITEDが先行していましたので、それが出来たのです。電解コンデンサー、フィルムコンデンサー等々、投入した量は違いますが、SX1 LIMITEDと同じ部品を同じ個所に使用しています。

PMA-A110の開発メインメンバー新井 孝氏

――「UHC-MOS(Ultra High Current MOS)FET」はデノンのアンプ技術の顔です。大電流素子であるこれをシングルプッシュプルというシンプルイズベストな形で用いるもので、PMA-A110でも新世代のAdvanced UHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路を採用していますね。

新井:はい。1990年のデノン80周年のS1プロジェクト「POA-S1」で初めてUHC-MOSを採用して以来、型式の違いはあれど大電流が流せるこの回路方式を一貫して使用してきました。一つの回路で大電流を制御できることがメリットです。

他社がやっているように素子を沢山並べる手法もありますが、各素子間に距離があると、たとえ短い距離でも信号間の時間差が生じます。一つの素子の小面積で増幅が出来れば、それがベストであるというのがわれわれの考え方です。

――ベースの2500NEは差動3段でしたが、今回は2段です。どういう音質上の利点がありますか?

新井:回路が3段だとその分、位相回転が発生する個所も増え、それを安定させるための位相補償の量も増えます。可聴帯域内では位相補償の影響はないのですが、可聴帯域外でも位相回転量が大きいとピーク、ディップ(周波数特性の凹凸)が生まれ、人間の耳はそれを歪みや不協和音として感知します。素直な音にするためには位相回転を減らして補償も少なくしたほうがよいので、今回は2段としました。

デノンのアンプ技術の顔ともいえるUHC-MOSを用いた増幅回路は本機でも健在

――2500NEの増幅段は固定利得でしたが、A110では可変ゲイン型プリアンプとパワーアンプの2段構成となっています。

新井:デノンでは「シンプル化が高音質の道」と考え、PMA-2500ではハイゲインのパワーアンプにボリュームやセレクターの回路を連結していました。今回のA110ではプリアンプ段を追加して、可変ゲイン型プリアンプ+パワーアンプの構成になっています。

実使用時にはボリュームを絞ることになりますが、その時にゲインも下がることになります。アンプの主なノイズは初段の抵抗で発生する熱雑音ですが、ゲインを下げることで増幅率が下がり、ノイズが出力に乗る量を減らせます。

――DCD-A110の大きな特徴が、ノブの角度を感知してA/D値を送り込む電子ボリュームの採用です。デノンのオーディオアンプは今まで一貫してアナログボリュームでしたよね。

新井:「シンプル化が高音質の道」というデノンの持論から、今回は信号経路の短縮化をシンプル化と考え、入力から出力端子に至る経路の直線上に、その都度必要な回路機能を設ける形で単純化を図りました。

機械式のアナログボリュームは操作部分と音量を変える回路とが一体となっているので、フロントパネルのボリュームノブ付近まで信号を運んで戻す分、信号経路が長くなります。ですが電子ボリュームと電子トーン回路方式では操作部と回路部分を分離できるので、それが解消されるわけです。

――デノンとしても納得が行くレベルの精度が確保できたから、今回電子ボリュームを採用した、ということですね。Hi-Fi系では過去初めてでは?

新井:過去、コンパクトモデルの“SXシリーズ”に搭載しました。AVサラウンドアンプではかなり早い時期に採用しています。数多くのチャンネル数を一度に操作するには電子ボリュームが不可欠ですので。なのでおっしゃる通り、フルサイズのHi-Fiモデルでは今回が初めてになります。

デノンのフルサイズHi-Fiモデルとしては初めて電子ボリュームを採用

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