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<山本敦のAV進化論 第64回>

上陸間近「Netflix」ロングインタビュー。日本でも “巨人” になるための戦略とは?

2015/07/30 山本 敦
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アメリカを拠点とするオンラインDVDレンタルサービスから起業して、今では全世界50カ国に6,500万人の会員を集めるNetflixの動画配信サービスが間もなく日本に上陸する。今回はNetflix 副社長 執行役員である大崎貴之氏に、サービス開始に向けた意気込み、4KやHDRに対する考え方などを訊ねた。まだ明らかにされていない料金形態などについても筆者なりの考察をお届けしたい。

NETFLIX 大崎氏

■Netflixが巨人に成長した理由

オンラインDVDレンタルサービスを成功させたNetflixは、2007年にインターネット経由のSVOD(定額制動画配信)を開始した。今日まで規模を拡大できた理由はどこにあるのだろうか。大崎氏は「テクノロジー」と「コンテンツ」を2つの重要な成長要素に挙げる。

「“テクノロジー”の中にはスムーズに動画を楽しめるようにするデータのバッファリング、使いやすいユーザーインターフェースのデザインに加えて、一人ひとりのユーザーに見たくなるコンテンツをレコメンドするパーソナライゼーションのアルゴリズムがあります。Netflixの技術は常に進化しています。ユーザーの声を受けてインターフェースなども常時改善されています」。

Netflixが強みに掲げているのが「パーソナライズされたレコメンド機能」だ。約5万件のアーカイブから、ユーザーが見たい動画を検索せずに見つけられるのが売りだ。裏側では作品1件ごとにタグを付けて、視聴者の再生履歴を学習するアルゴリズムに組み合わせることで、ホーム画面にタイトル、あるいはジャンルでソートされた作品を並べて、ユーザーにおすすめのコンテンツをプッシュする。

NetflixのUIイメージ

作品の種類は76,897通りに分類され、ユーザーの視聴傾向などのビッグデータも活用しながら、精度の高いレコメンドが行える。Netflixが既存会員を対象に行った調査によれば、ユーザーの約75%がレコメンド機能を頼りに面白そうな作品を見つけているという傾向があるという。

日本での公式サイトではまもなくサービス開始であることをアナウンス

インターフェースも、ユーザーが映像コンテンツをスムーズに視聴できるように設計されている。例えばあるシリーズもののドラマを見ていたら、続きのタイトルを次々に「いっき見(Netflixでは“Binge-Watching”と呼んでいる)」できるよう、タイトルの終了間際に自動で続きの作品を検索して、画面上にサムネイルを表示する。Netflixではこれを大きな特長としてうたっている。

だが、同様に連続再生を楽しみやすくするための機能やサービスは、ライバルのHuluやdTVも実装済みだ。特に無料放送をザッピングしながら「何気なくテレビをみる」ことに慣れている日本人にとっては、dTVが発売した「dターミナル」に搭載されている「ザッピングUI」のコンセプトがよく馴染むと筆者は考えている。

例えばdTVが映画「新宿スワン」で展開している例では、映画1本を6話に分け、細切れに見ることもできる。限られた可処分時間の中で暮らす都市生活者のライフスタイルにフィットしそうだ。Netflixに限らず、これから日本で定額制“見放題”の動画配信サービスを成功させるためには、いかに動画コンテンツを気軽に“流し見”できる環境を提供できるかも重要なポイントになるだろう。


■1ヶ月あたりの利用料金はどうなる

今回のインタビューを実施した7月中旬時点でも、Netflixの日本上陸に関連する大崎氏からのアナウンスは「今秋。価格は検討中」という回答で、これまでと変わらなかった。特に価格は受容度にも大きくかかわるので、大変興味深いところだ。

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