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高音質を実現するための「二つのテスト」とは

Ultimate Earsに聞く、話題のフラグシップイヤホン「UE900」誕生の背景

インタビュー/ファイル・ウェブ編集部

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2013年04月30日
Ultimate Ears(アルティメット・イヤーズ)ブランドから、フラグシップイヤホンのニューモデル「UE900」が発売された。新製品の日本市場投入に合わせて来日した、Logitech International社のローリー・ドーリー氏にインタビューする機会を得た。

ドーリー氏はLogitech International社でUltimate Earsブランドを中心としたミュージックビジネス・グループのマネージメントを担当するキーパーソンだ。ドーリー氏には「UE900」を中心に、ロジクールとのコラボレーションにより完成したというワイヤレスヘッドホン「UE9000」、ワイヤレススピーカー「WS800」など新製品のコンセプトや、同社でのオーディオ製品の開発背景など尋ねた。


Logitech International社 ミュージックビジネスグループ シニア・ヴァイスプレジデント Rory Dooley氏
なお、Phile-webではフラグシップイヤホン「UE900」の詳細な試聴・ハンドリングレポートも掲載している。本項インタビューと合わせて参考にして欲しい。

Ultimate Earsでは音質決定に2つの評価テストを導入している

ーーはじめにUltimate Earsブランドの歴史を振り返って下さい。他のブランドには無い独自性はどんな部分にあると考えていますか。
ドーリー氏:Ultimate Earsは音楽のスペシャリストです。ロジクール(海外ではLogitech)の製品部門の一つで、ミュージシャンが望むサウンドを忠実に再生するリスニングデバイスを製造しています。ブランドの設立は1995年、当時の人気ロックバンドの「ヴァン・ヘイレン(Van Halen)」のドラマーであるアレックス・ヴァン・ヘイレン(Alex Van Halen)が、コンサート中に聞こえる雑音と音楽とを、聞き分ける技術を切望していました。当時ミュージシャンたちはステージ上で、自分たちの演奏を確認するため、フィードバック用としてモニタースピーカーを一般的には使っていました。やがてショウ自体の規模が大きくなってくると、バンドのメンバー各自も十分なフィードバックが得られるように、モニタースピーカーで大きな音を出さざるを得なくなると、次第に耳を痛めてしまうミュージシャンが出てきました。そこで、Ultimate Earsは耳の中に入れて使うイヤーモニターというアプローチから、ミュージシャンたちが抱える問題を解決し、彼らに正確なフィードバックの提供と、ステージ上でのパフォーマンス向上をもたらしました。またそれまでは十分なフィードバックの音声を得るため、ミュージシャンはモニタースピーカーの前からあまり離れることができなかったのですが、イヤーモニターの登場によりステージ上で比較的自由に移動できるようになりました。ミュージシャンと観客との一体感が増し、ステージの質全体が高まる結果にも結びつきました。


「音楽への愛」を基本理念に掲げるUltimate Earsのブランドポリシー

音楽をパーソナルリスニングで、あるいはシェアリスニングで楽しむ際にもUltimate Earsは「高音質」の魅力を提案する
こうしたプロ用製品の開発から得たノウハウを、続いてコンシューマー向けのイヤホン開発につないできた歴史がUltimate Earsにはあります。その後、2008年にLogitechと一体になり、高級イヤホンのプロバイダーとして、多くの方々に精巧な技術を持った高品位なイヤホンを提供し続けています。Ultimate Earsでは、どんな製品を作るときにも”音楽への愛”を基本理念に掲げながら開発しています。音楽を中心に、高品質を追求し続けているブランドであることがUltimate Ears最大の強みです。小さなモニターイヤホンからスピーカーまで、あらゆる製品に最高のサウンドを提供できるブランドであることを誇りに感じています。

ーーUltimate Earsがイヤホンの開発を始めたのは、いつ頃からですか。
ドーリー氏:Ultimate Earsのインイヤリファレンスモニターは、キャピタルレコードスタジオとの提携により、オリジナルの音楽コンテンツのレコーディング、ミキシング、マスタリングを行うプロのスタジオエンジニアやプロデューサー向けに設計されました。プロ向けのイヤーモニターのフラグシップは「Ultimate Ears 18 Pro Custom In-Ear Monitors」です。個別にチューニングされた6個のアーマチュア型ドライバーがそれぞれの耳にフィットする独自の6スピーカーデザインを採用し、ライブステージで求められる、歪みの無いハイクオリティなサウンドを実現しています。

コンシューマー向けイヤホンの最初のフラグシップである「Ultimate Ears TripleFi 10」(以下:TripleFi 10)は2006年に発売され、バランスド・アーマチュアを3基搭載した2ウェイ3ドライバー構成のイヤホンによる、ハイクオリティなサウンドが多くの方々の支持を集めました。

6基のアーマチュアドライバーを搭載した「Ultimate Ears 18 Pro Custom Monitors」

2006年に発売された「Ultimate Ears TripleFi 10」

ーーUltimate Earsではどのような環境で、製品の開発・製造を行っていますか。
ドーリー氏:オーディオ製品の開発の中心を担うのがアコースティック・エンジニアリング部門です。当部門には12人ほどのスタッフがいます。アコースティック・エンジニアリング部門は、大別してウェアラブル(イヤホン・ヘッドホン)と、シェアラブル(スピーカー)に担当者を分けています。カテゴリーごとにケアすべきポイントや、狙うべきサウンドが変わってくるためです。その周りに設計部門、販売部門のスタッフが集まってチームをつくっています。


Ultimate Ears本社

ラボラトリーの様子
音質評価は2種類のテストを採り入れています。一つは「Objective(客観)テスト」と呼んでいるもので、周波数特性や音圧など、測定データを基に製品のスペック面を構築するものです。もう一つが「Subjective(主観)テスト」として、テスターのグループが集まって、プロトタイプの音を聴き込みながら、Ultimate Earsのサウンドに磨き上げていく試聴評価です。ウォーム系、クール系など製品ごとに音質のキャラクターを決定したり、そもそもユーザーに感動をもたらす音に到達しているかなどを考慮しながら、大勢で評価します。オーディオ製品の音は、測定データだけを頼りにつくるべきものではないと考えています。人間の主観的な聴感、感性の部分で満足できる音であることが重要なのではないでしょうか。

ーー今回、日本のマーケットにイヤホン、ヘッドホン、ワイヤレススピーカーの新製品が登場することになりましたが、それぞれどんなユーザーをイメージして開発された製品なのでしょうか。
ドーリー氏:二つのユーザーセグメントを対象にしました。一つにはハイエンド製品を嗜好するオーディオファイルです。オーディオ製品や音楽に深い関心と知識があり、色々な音楽を高品位に楽しみたいという方々に、今まで何千回も聴いてきた音楽を、Ultimate Earsの「UE900」「UE9000」をはじめとするハイエンドモデルで聴いて、新たな発見を得て欲しいと考えました。

Bluetoothワイヤレススピーカー「WS800」

もう一つは、18歳から30歳ぐらいまでの、音楽を新しいスタイルで聴きたいと考える方たちです。こちらのユーザー層には、音楽を聴く際にはCDを買わずにYouTubeで聴いたり、PandoraやSpotifyなどストリーミングサービスを中心に利用している方も多いと思います。また音楽との出会い方も、FacebookなどSNS経由で友人に勧められて聴くというパターンなのかもしれません。インターネットをベースに、スマートフォンやモバイルをプレーヤーとして音楽を聴くスタイルにマッチした製品を提案したいと考えて、Ultimate Earsとして初めてのBluetooth対応ワイヤレススピーカーを発表しました。新しい世代の方々の、音楽リスニングスタイルにも寄り添いながら、良い音で音楽を楽しむ魅力を幅広く提案したいと考えています。

ーーUltimate Earsの新しいハイエンド・イヤホン「UE900」の開発背景や、「TripleFi 10」から進化させた点について色々と伺いたいと思います。

「UE900」ではプロ用カスタムイヤーモニターと同等のクオリティを追求した

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