HOME > インタビュー > 目指したのは3D時代のサラウンドヘッドホン ー ソニー「MDR-DS7500」開発者インタビュー

最新モデルが遂げた「3つの進化」のポイント

目指したのは3D時代のサラウンドヘッドホン ー ソニー「MDR-DS7500」開発者インタビュー

2011/11/25 レビュー/鈴木桂水
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ソニーから7.1ch対応のワイヤレスサラウンドヘッドホン「MDR-DS7500」が発売された。本機が目指したサウンド、新たに進化した各ポイントを、ソニーの開発担当者である角田直隆氏を訪ね、インタビューした。

リビングのテレビは高画質化・大画面化したが、サウンドに不満を感じるユーザーは増えているのではないだろうか。けれども、ホームシアターのサウンド周りの環境を向上させるには、ご近所への騒音の問題や、サラウンドスピーカーの置き場所を考えなければならなかったりと、誰もが気軽にグレードアップできるものではない。そこで注目したいのがサラウンド再生機能を備えたヘッドホンだ。


ソニーのワイヤレスサラウンドヘッドホン「MDR-DS7500」はヘッドホンとプロセッサー部のセットによる構成
サラウンドヘッドホンなら、深夜でも騒音を気にせずに迫力のあるサウンドを心ゆくまで楽しめる。そのサラウンドヘッドホンに、ソニーから注目のワイヤレス対応モデル「MDR-DS7500」が登場した。本機は2009年に発売した7.1ch対応の「MDR-DS7100」の上位機に当たるモデルだが、デジタル音声入力にはHDMI端子が装備されて、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master Audioなどの音声データの再生が可能になった。
 

「MDR-DS7500」の開発を担当したソニー(株)角田直隆氏
今回がこのワイヤレスサラウンドヘッドホン「MDR-DS7500」がどのようにして開発されたのか、ソニー(株)コンスーマープロダクツ&サービスグループ パーソナル イメージング&サウンド事業本部 パーソナルエンタテインメント事業部 1部 主任技師の角田直隆氏にインタビューを試みた。合わせて製品の試聴レビューもお届けしようと思う。

ワイヤレスサラウンドヘッドホンとして「MDR-DS7500」が大きく進化した“3つのポイント”

━ 「MDR-DS7500」はソニーにとって久しぶりとなるワイヤレスサラウンドヘッドホン(以下サラウンドヘッドホン)の新製品ですね。これまでラインナップしていた「MDR-DS7100」から進化したポイントを教えてください。
角田氏:ソニーのサラウンドヘッドホンは、これまで2〜3年おきに中核となるモデルをリニューアルしてきました。2009年にデジタルワイヤレス対応のサラウンドヘッドホン「MDR-DS7100」を発売しましたが、このモデルでは高性能のDSPを搭載することで、臨場感溢れる7.1chサラウンド対応を実現できました。

またこの頃から映画だけでなく、ゲームのサラウンドの高音質化にも取り組みはじめて、ソニー・コンピュータエンタテインメントのサウンドデザイナーと音づくりの試みをスタートしました。このあたりから飛躍的にサウンドのクオリティがアップしたと自負しています。そして今回発売しました「MDR-DS7500」は、「MDR-DS7100」の基本スペックを踏襲しつつ、さらに音質に磨きをかけました。

「MDR-DS7500」では大きく分けて以下の、3つの特長的な機能が採用されました。

■7.1ch音場だけでなく、高さやさらなる奥行き方向の音場再現に成功

3D対応テレビとBD再生機の普及により、家庭でも3D映像が手軽に楽しめるようになりましたが、音も3Dサラウンドであるべきという声も高まりつつあります。本機では、映像の3D時代にふさわしい、新たな3Dサラウンドの実現がテーマとなりました。新開発のバーチャルサラウンド技術「3D VPT(Virtualphones Technology)」を搭載したことにより、従来の水平配置の7.1ch音場だけでなく、高さやさらなる奥行き方向の音場再現にも成功したことが一つ目の特長です。


フロントハイト対応など3D時代のサラウンドをテーマに開発されたという「MDR-DS7500」
映画を鑑賞する上で最も重要視されている「3D音響」は、スクリーンから見て奥行き方向の表現力です。3D映像の表現にも共通するのですが、スクリーンから手前にくる映像や音声は一般的に「疲れやすい」と言われています。これは人間の知覚上、映像がスクリーン上の位置に固定されているのに対して、音声が手前に張り出してくることに矛盾を感じることで疲れを感じてしまうというメカニズムに起因しています。そこで本製品では、音の奥行き方向の表現を高めることを重視して設計しました。

ただ、残念ながらフロントハイトの音声をディスクリート収録したソフトは今のところ数少ないので、バーチャライザーコーデックのDolby Prologic IIzに対応することで、擬似的に高さ方向の音の表現を体験できるようにしました。Dolby Prologic IIzは2chのソフトでもハイト音声付きサラウンドで再現できるので、これまでにない臨場感が味わえます。

「MDR-DS7500」のヘッドホン部

■ソニーグループの技術を集め「理想的な映画館の音場」を再現

ソニーでは3年前から、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)と一緒にハリウッドのレコーディングエンジニアと協業しながら、高品位な音場づくりに取り組んできました。今回のモデルではSPEの協力のもと、アカデミー賞を受賞したサウンドエンジニアと一緒に音づくりを行っています。二つ目の特長として、本機では音質に定評のある映画製作用ダビングシアターの測定データを解析し、ソニー独自のVPTとの組み合わせによる“理想的な映画館の音場”を再現しました。


彼らとのコラボレーションを通じて、サラウンドヘッドホンにおける「低音のインパクト」の重要性を再認識しました。例えばものがぶつかる時に発生する「ドン」という音は、映画館のサブウーファーで聴くとすごいインパクトがありますが、これまでの一般的な家庭での視聴環境の音では必ずしも満足の行く再現が得られていなかったのではないでしょうか。「MDR-DS7500」では、SPEのエンジニアたちのアドバイスを取り入れることで、低音部分の再現が著しく向上し、アクション映画やホラー映画などをこれまで以上に迫力のあるサウンドで再現できるようになっています。これはぜひ多くの方々に体感して欲しいと思っています。

■HDMI搭載を実現し、多彩な入力ソースに対応

いまやテレビとBDレコーダー、ゲーム機の接続にはHDMIを使用するのがスタンダードになっています。画質や音質の良さだけでなく、映像と音声を1本のケーブルで接続できる手軽さが支持を集めてきた理由だと考えています。しかしながら一方で、これまでのサラウンドヘッドホンではHDMI接続が利用できませんでした。その背景には著作権保護技術への対応など、様々な課題がありましたが、本機ではこれを全て解決し、HDMI対応を実現した点が第三の特長です。


プロセッサー部の背面。HDMI端子は入力3系統、出力1系統を装備
単にHDMI接続に対応しただけでなく、BDレコーダーやゲーム機など、同時に複数のHDMI機器を接続できるように3つのポートを設けて、切り替えが可能なセレクター機能も搭載しました。HDMI1.4に対応していますので、3D信号のパススルー出力もサポートして使い勝手は良いと思います。デコーダーもドルビーTrueHD、DTS-HD Master Audio、リニアPCM7.1chも搭載してます。ステレオの音声信号は192kHz/24bitのデータも受けられるようになっています(サラウンドは48kHzまで対応)。高音質のBDソフトのサウンドを余すことなく楽しめるロスレスオーディオ対応を実現した点は多くの方々に魅力と感じていただけるものと期待しています。

━ ヘッドホンとしての使い心地やデザインの面で特長となる点を教えてください。

次ページ「MDR-DS7500」のサラウンド視聴レビュー

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: