新製品批評
Phile-web >> 製品批評 >> TDK 光ディスクの先進技術

 

数々のディスクメディアを発売してきたTDKから、Blu-rayディスクがいち早く発売された。このことから伺える同社に蓄積された圧倒的な技術力。今後対応が期待される新規格用のディスクの開発も既に進められている。

ここではTDKのその圧倒的な先進技術に迫ってみる。

 


TDKでは、記録層および保護層等を4層重ねた〜4重層とした形態の追記型ディスクの開発に成功している。その記録容量は100GBとなっており、ハイビジョン録画が8時間以上余裕を持ってできることになる。

この4層化の開発に成功した背景のひとつに、金属素材の採用が上げられる。金属素材は、信号記録でも形状が変化せず、金属の状態が変化する。そのため色素素材に比べて多層化が比較的容易であることにTDKは着目した。

こうしたTDKの素材研究と高い光ディスク開発技術力がいち早い多層化を実現したいえよう。


TDK開発の追記型Blu-rayディスクの構造

▲図はクリックで拡大
新組成、新開発の記録層により高速かつ大容量の記録が可能となった。Cu合金とSiの2層構造を持つ記録層は、光を照射することで新たな合金となり、反射率が変化する。

 


高速記録は、あらかじめデジタル情報がHDDやメモリーに納められていて、記録ディスク間で高速で書き込む処理法である。

現在、120GB程度のHDDが汎用として普及しているが、HDDと組み合わせたHDD/Blu-rayハイブリット・レコーダーも登場しよう。また、パソコン部門へのBlu-rayディスクの導入も計画されているようで、当然書き換え型のBD-REディスク、現在規格が検討されている追記型のディスクでの高速記録が実現されよう。

ディスク側において、高速記録を実現する条件に記録膜素材の高速応答化がある。TDKでは、すでに、新開発の技術〜記録膜組織や独自の熱処理により高速記録を実現している。その速度は記録転送レート144Mbps、つまり現行Blu-rayディスクの4倍速、さらに書き換え型では6倍速の216Mbpsでの記録・再生にも成功している。

BD-REディスクの高速記録では、オーバーライト特性も重要なポイント。デジタル記録・再生方式では、アナログ方式のように消去機能を持たず、既記録情報の上に新情報を重ねて記録するオーバーライト方式を採用しているが、繰り返し使用によりジッター成分が増加することがある。TDKでは、このジッターの増加を抑えることに成功している。

規格化の進捗や市場動向などもあり、現段階では高速記録の製品化に関する予測は難しいが、HDDにエアチェックしたBSデジタル・ハイビジョン番組を、まずは2倍速程度でダビングできるHDD/Blu-rayハイブリット・レコーダーも登場するであろう。


新開発 高速記録膜採用ディスクのダイレクトオーバーライト特性
TDKは、記録転送レート144Mbpsでもダイレクトオーバーライトが十分に可能な記録膜の開発に成功

←図はクリックで拡大

 


すでに、DVD-RAMではカートリッジ・タイプとカートリッジレス・タイプを併用している。メーカー側では、特にカートリッジ・タイプを強要せず、カートリッジの着脱も可能としている。

このようにDVDディスクでもディスクの汚れや傷に対して配慮されているが、一段と高密度なBlu-rayのBD-REはカートリッジ・タイプで、DVD-RAMのカートリッジとの違いは、長方形でなく一辺が円状の完全密閉型である。ユーザーがディスクに直接触れることのないBD-REのカートリッジは、確かに信頼性を高める効果はあるが、コスト、使い勝手、管理、などの点でカートリッジレス・タイプにも魅力を感じるユーザーは多いことだろう。

カートリッジレス・タイプへの一つのアプローチが読み取り面のハードコート処理にある。TDKでは、すでに、DVD-RやDVD-RWディスクで採用され好評のスーパーハードコート処理がある。従来の約100倍の硬度を持つ超硬スーパーハードコートは、本来、Blu-rayディスクのために開発されたもの。Blu-rayディスク用には現行DVD-Rや-RWに採用されているものに改良を加え、汚れ付着の対策がさらに強化されたものが用意されている。

構成は100μmのカバー層を2μm新規ハードコート層と98μmのカバー層で構成している。カートリッジレス・タイプの汚れの主原因、指紋付着テストでも圧倒的な成果をあげている。まずは、カートリッジレス・タイプの追記型BD実現に向けて準備は万全である。


スーパーハードコートディスクの構造

▲図はクリックで拡大
従来のスーパーハードコートをBlu-rayディスク用に開発。カートリッジレス・ディスクの商品化のためには重要な技術である。

スーパーハードコートの指紋付着テスト

▲図はクリックで拡大
Blu-rayディスク用に開発されたスーパーハードコートはポリカーボネートに比べ、指紋によるエラー劣化がきわめて少なくなっている