新製品批評
Phile-web >> 製品批評 >>伝統と革新−マランツ「SA-11S1」「PM-11S1」徹底レポート

両機を組み合わせて聴くCDの再生音は、スケール感のある鳴りっぷりの良さに特徴がある。オーケストラの強奏やオルガンのフォルテシモを余裕でこなし、頭を押さえられる印象がまったくない。まるでセパレートアンプを聴いているような安心感がある。

 

ジャズボーカルは、声だけでなくベースやドラムスのイメージがぼやけず、輪郭がはっきりしている。実在感、生々しさが際立つのはそのためだ。ベースは立ち上がりがはやく、前に進む推進力が強い。ボーカルは抑えた表情がうまく、微妙な表情を逃さない。力強さと繊細さを兼ね備えた音は、どんなジャンルの音楽を聴いても説得力がある。

 

SACDは、音が広がる空間の大きさと響きの立体感がずば抜けている。オーケストラは遠くまで見通せる奥行きの深さ、そしてステージの上に抜ける残響の自然さに感心した。ボーカルはCDと同様に実在感を引き出す一方、声そのもののなめらかさと質感の高さが強い印象を残す。ギター、ピアノなどアコースティック楽器のサウンドが瑞々しく、ボーカルときれいに溶け合う。強弱の大きさの幅が広く、特に、聴こえるか聴こえないかの弱音が生命力を失わないのは、ノイズを徹底して抑えた成果だろう。

 

音楽の躍動感と力強さを引き出しながら、同時に深みと落ち着きのあるサウンドを聴かせる。マランツの新しいコンポーネントには、そうした懐の深さを感じることができた。大人のサウンドを求める音楽ファンにお薦めしたい。