製品批評

Vol.341
毎週水曜更新 2009年3月18日号(3/11発行)

独自のメカニズムを搭載して内部の非対称デザインも踏襲

文/井上千岳プロフィール

製品名

フラグシップ機の構成を継承した弟モデルが登場

ラックスマンのフラグシップ機D-08の弟モデルとなるのがこのD-06だ。フロントパネルのデザインはほぼ同じ、操作に関しては同一だしデジタル出力のオン/オフやDSD/PCMの切替など機能にも違いはない。唯一D-08では光デジタル入力が2系統であったのに対し、本機では1系統となっていることくらいだ。

高度なS/Nと解像度をベースに、丁寧で緻密な再現性を獲得している。本機は音楽をただ慣らすのではなく、機械を通して音楽を練りだしてくるというか、表現力の強さを感じるのである。かといってそれは、ソースに入っていない音を付け加えてしまうのでもなければ、バランスを崩して個性を強調することでもない。おそらく、精度を追求することによってソースに込められた音楽的なエネルギーを解放することにより、この表現力が生まれているのだ。

アカペラの充実しきった質感とリアリティの高さはどうだろう。ひとりひとりの声をぎりぎりまで引き出しながら、決して荒れたりうるさく感じさせたりすることはない。逆に棘を抑えて穏やかに丸めたというのでもなく、入っている音はいっぱいまで押し出し、歪みや濁りを取り去ることによって煩くなるのを回避している。だからどんなに大音量になっても、あるいは鋭いパッセージであっても、暴れたり耳障りになったりすることがないのである。

オーケストラでは空間の奥行きと広がりによって、楽器の存在感が一層明瞭になっている。ずっしりとした低音源と鮮烈な金管、鋭い打楽器などそれぞれの特質を多彩に描き出しながら、強弱のコントラストと色彩感を高い密度で再現する。

ここまで聴いてくると、もうD-08と比較する気にはならない。これはこれで、極めて高度な再現性を備えた独自の存在なのである。この音の前では、どんな比較をしても無駄なように思う。素晴らしい製品が誕生したものである。

<この製品の情報は「オーディオアクセサリー」132号にも掲載されています>

スペック

●対応ディスク:2チャンネルSACD、CD ●アナログ出力:アンバランス 1系統、バランス 1系統 ●デジタル出力 (44.1KHz、CD/CDレイヤーのみ) :同軸1系統、光1系統 ●デジタル入力 (32, 44.1, 48, 88.2, 96KHz対応):同軸 1系統、光1系統 ●周波数特性:CD:5Hz〜20KHz(-0.4dB)、SACD:5Hz〜50KHz(-3dB) ●全高調波歪率:0.0014%(CD時)、0.0017%(SACD/DSD時)、0.0007%(SACD/PCM時) ●S/N比:124dB(CD時)、104dB(SACD/DSD時)、120dB(SACD/PCM時) ●消費電力:24W(電気用品安全法)、1W(スタンバイ時) ●外形寸法:440W×133H×410Dmm ●質量:15.5Kg ●問い合わせ:ラックスマン(株) TEL/045-470-6991

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