HOME > レビュー > Apple WatchがiPhoneから操作可能に。アップルが今秋公開の「アクセシビリティ」新機能を発表

各OSのソフトウェアアップデートで

Apple WatchがiPhoneから操作可能に。アップルが今秋公開の「アクセシビリティ」新機能を発表

公開日 2022/05/18 13:52 山本 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
iOSにiPadOS、watchOSなどアップル製品のOSには「アクセシビリティ」と呼ばれる機能が搭載されている。障がいを持つ方々がデジタルデバイスをよりスムーズに使えるようにするため組み込まれた機能だが、デジタル機器の操作に不慣れな方など、一般ユーザーにも役立つものが多く揃っている。

今年の後半に、アップルが各OSのソフトウェアアップデートにより、アクセシビリティが一段と便利になる新機能を追加する。詳しい内容を解説しよう。

アップルデバイスのOSに搭載されている「アクセシビリティ」に、今秋のソフトウェアアップデート後から新しい機能が一斉に導入される

なお、iOS/iPadOSの場合「設定」アプリに入り、「アクセシビリティ」を選択すると現在利用可能な機能のリストが参照できる。

拡大鏡が「ドアの検出」に対応

最初はiPhone/iPadに搭載されている「拡大鏡」の機能拡充だ。

拡大鏡には、カメラをかざした対象を画面に拡大表示したり、目の前にいる人物を検知して、互いの距離を計測できる「人の検出」機能がある。拡大鏡はコントロールセンターから虫眼鏡のアイコンをタップして呼び出せる。

「人の検出」には、人が近くにいることが検出された場合に、音と読み上げで知らせてくれるオプションもある。視覚に障がいを持つ方のナビゲーションとしても好評だという。

この「人の検出」を応用した「Door Detection=扉の検出」機能が拡大鏡に追加される。

拡大鏡を立ち上げて人の検知、ドアの検知など各機能を選択する

例えば、訪れた店のドアにiPhone/iPadのカメラをかざすと、ドアの場所や開閉の状態を知らせてくれるだけでなく、ドアに掲げられている看板に書かれた営業時間などの文字を認識、音声で読み上げてフィードバックする。ドアの色や形、素材などを判別して「開け方」も教えてくれるという。

拡大鏡に追加される「扉の検出」機能。LiDARスキャナを搭載するiPhone/iPadのカメラをドアに向けると、ドアの状態、書かれている文字を音声により読み上げる

アップルは「人の検出」と同様、ドアの検出についても、アップルのハードウェアとオンデバイス機械学習などソフトウェアの深い技術統合、および障がいを持つ方々のコミュニティから寄せられた声に耳を傾けることによって実現する機能だとしている。ドアの検出にはLiDARスキャナを搭載するiPhone Pro、iPad Proのモデルが必要になる。

Apple Watchに触れることなくiPhoneから操作する

続いてApple Watchの新機能「Apple Watch Mirroring」だ。手足に障がいを持つ方も、Apple Watchを身に着けて心拍計測、血中酸素ウェルネス、マインドフルネスや睡眠などデバイスならではの機能をスムーズに活用できるよう、ペアリングしたiPhoneからこれを音声等で操作するというエミュレーターだ。

使い方のイメージとしては、Apple Watch Mirroringを立ち上げるとiPhoneの画面にApple Watchのイメージが表示され、Digital Crownやアイコンなどインターフェースになる箇所に「番号」がふられた状態でガイドが出てくる。ユーザーはこれを音声入力により選択してApple Watchの各機能にアクセスする。またはアクセシビリティに含まれる「スイッチコントロール」から、ヘッドトラッキングやサウンドなどをスイッチとして設定して操作することも可能になる。

iPhoneから音声や設定した「スイッチ」を使ってApple Watchをミラーリング操作する

アップルは昨年、watchOSにAssistiveTouchを投入し、片手のジェスチャー操作によりApple Watchを操作できる機能を加えた。Apple Watchの「設定」から「アクセシビリティ」を選び、「AssistiveTouch」から各設定が決められる。

このAssistiveTouchに新しくアクセスできるwatchOSの機能が加わる。例えばハンズフリー通話の受話・終話、ワークアウトの開始と停止、通知の解除、メディアの再生/一時停止、マップのナビゲーションなどがジェスチャー操作から行えるようになる。

Apple Watchを装着した腕によるジェスチャー操作「AssistiveTouch」の機能も拡充される

FaceTimeやメッセージの「音声文字自動起こし」に対応

次に「リアルタイム文字起こし」の機能だ。こちらはiPhoneにiPad、Apple Watch、Macに対応するもので、ベータ版機能として「英語」から、米国・英国・カナダの各地域に先行投入する。

対象となるアプリはFaceTime、メッセージのほか、サードパーティのアプリにも徐々に広がる予定だ。

例えばメッセージアプリに届いた「オーディオメッセージを文字おこし」して読むことができたり、FaceTimeのミーティングの音声がテキスト化できる。FaceTimeについては複数のスピーカーが参加していた場合、テキストを話者ごとに切り分けて表示する「スピーカーアトリビューション」の機能も加わる。オンデバイスの機械学習処理を使うため、会話の内容はデバイス内でセキュアに管理されるという。

FaceTimeの参加者ごとにテキストを切り分けながら起こす

FaceTimeの会話については、およそ2センテンス単位で発言を切り分けながら文字が起こされる使用イメージになりそうだ。

iOSにも自動文字起こし機能が加わるが、当初は英語のみ対応する

ゲーミングや電子書籍関連の新しい機能も追加される

ほかにもアクセシビリティに関連して、アプリ単体に適用されるものなど大小様々な機能が追加される。

ゲーム関連には複数のプレーヤーの操作を、あたかも一人のプレーヤーによる操作であるかのようにマージさせる「Buddy Controller」がある。障がいを持つ方のゲーミング体験をほかのプレーヤーがサポートできるように設けられる機能だ。Apple TV、Mac、iPhone、iPadに対応する。

Booksアプリには「Themes&Setting」が追加される。電子書籍のコンテンツがより読みやすくなるよう、画面のテーマを変えたり、文字間隔調整、アンダーラインによるマーキングなどが可能になる。

Booksアプリの表示をカスタマイズできる「Themes&Setting」

iPhone、iPadが「水が流れる音」「ドアベル」などを検知して、Apple Watchに通知を飛ばす機能も加わる。この機能には各家庭・オフィスに設置されているドアベルの固有の音を覚えさせて、通知をより正確に発信するようにカスタマイズできるオプションが用意される。

ドアベルの音をiOSに認識させてより正確に音声検知機能を動作させることも可能

Siriには発話障害のある方が、自分のペースで話しかけられるように「ポーズタイム」の設定が加わる。またiPhoneなどの画面の表示を音声で読み上げる「Voice Over」は、新たにウクライナ語、カタルーニャ語、ベトナム語など20の地域の言語に対応を広げる。

これらの新しい機能は今年後半から、アップルデバイスの各OSで利用可能になる。

アップルはiPhoneやiPad、Macのように、世界中で多くのユーザーが利用するデバイスの利便性を万人に向けて高めるため「アクセシビリティ(近づきやすさ、親しみやすさ)」の機能改善を日々図っている。

毎年5月の第3木曜日は「Global Accessibility Awareness Day」(GAAD)という、アクセシビリティの普及について全世界の人々が一緒に考えるための記念日として定められている。今年は明日5月19日からの1週間に渡り、アップルはアクセシビリティの紹介に力を入れるという。

例えばApp Storeには設備のユニバーサルデザイン対応状況が調べられる「Bmaps」アプリの開発者インタビューが掲載される。またApple Books、Apple TVにもバリアフリーをテーマにしたコンテンツの特集が公開される予定だ。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: