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ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 −「SINGS -Bedtime Stories- 〜Selection〜 / 高岡早紀」

2015/07/31
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SINGS -Bedtime Stories- 〜Selection〜 / 高岡早紀

WAV/FLAC 96kHz/24bit ¥2,700(アルバム)
http://hd-music.info/album.cgi/1005


今回のビクタースタジオ・セレクトは、本作を手掛けたマスタリングエンジニア直々の推薦による「SINGS -Bedtime Stories- 〜Selection〜/高岡早紀」だ。2014年10月にデビュー25周年を記念して発売された、約23年ぶりとなる新作アルバムのハイレゾ版。ジャズ界の巨匠・山下洋輔さんのピアノ、鈴木禎久さんの奏でるアコースティックギターと、必要最小限のアレンジで、全曲デュオで構成されるジャズテイストの大人のラブソング集だ。

この作品は、96kHz/24bitでほぼ一発録音された非常にピュアな音源からハイレゾマスターが制作されている。そのクオリティーの高さは、音が出た瞬間に納得して頂けるだろう。1曲めの「君待てども 〜I'm waiting for you〜」はボーカルのアカペラからスタート。ハスキーで囁くような唄声にまず魅了されるが、唄っている口の微細な開き具合までもが感じられる「音」の表現力にも圧倒される。目の前にいる感じはもちろん、唄っている様子までもが目に浮かぶのだ。ハイレゾだからこその描写力だが、それにはハイレゾのスペックを十二分に生かせる高度な録音テクニックの裏打ちがあることも見逃せない。

アルバムに収められた全6曲は、2曲ずつ3箇所の別のスタジオで録音されているにも関わらず、質感がトータルとして揃えられているのが素晴らしい。どの曲を聴いても全く違和感なく、このアルバムの持つ同じ空間に包み込まれるのだ。レコーディングとは、単に演奏した「音」を録るのではなく、その場の雰囲気や臨場感やその時の緊張感までをも記録するものだ、という、まさにお手本と言える仕上がりである。

最近は、技術進化の恩恵である録音後の修正や編集等を多用し過ぎ、歌も含めて総てが機械的な「打ち込み」に聞こえてしまう楽曲も少なくは無い。その対極とも言えるこの作品には、音楽が本来持つ大切な魅力が見失われることなく詰め込まれており、その制作ポリシーも含めて感服させられる。

今までに幾つものハイレゾ作品を手掛けてきた手練れのマスタリングエンジニアが、本作をお勧めするのにも頷ける必聴の一枚だ。





小島 康太郎 氏
ビクタースタジオFLAIR所属マスタリングエンジニア

高校卒業後、イギリス留学。その後録音技術修得の為6年間の渡米。LAのオーシャンウエイ・スタジオに従事し、アメリカのレコーディング事情に精通する。

帰国後、直に体感した“生音"を指針に、メモリーテックにて6年間のマスタリングエンジニアとしてのキャリアを積む。

独特の音創りのスタイルと日本人離れした卓越したセンスを見出され、2000年5月にビクタースタジオへ移籍、同年12月のFLAIR設立の超目玉となる。新規加入に伴い、機器や機材の選定は勿論、部屋自体の設計レイアウトまで自らが担当。部屋にある小物にいたるまで徹底してそのこだわりぶりを発揮。

音楽の原点は本場、当然英語ペラペラ。ジャンルを問わず多くを経験、どこでも高いクオリティーをキープするが、実績が物語るように、特にロック、クラブ・ハウス系では特筆すべき本領を発揮。と思えば、本人曰く、フュージョン・L.Aサウンド系にも造詣が深いとのこと。

ベーシックは体が覚えている、本物の“音"。長期の渡英・米経験に裏打ちされた感覚とサウンドが高い評価を受ける。常に最高の基準を持ってセッションに臨む。
また、クライアントの立場を意識、気配りにも配慮。少なめのバジェットのインディーズ系にも多くの実績とノウハウあり。FLAIRマスタリングの異才。一度はまると抜けられない「魔力」あり。




<小島氏からのコメント>
「SINGS -Bedtime Stories-」はCDも発売されていますが、今回ハイレゾではセレクトされた6曲を聴くことが出来ます。その中でもトラック3「アゲイン」、トラック5「エヴリタイム・ウィ・セイ・グッバイ」はビクタースタジオで録音・ミックスされていて、私自身、たまたまマスタリングの前に現場でこれらの曲を聴く機会がありました。ハイレゾではそのときのイメージをもとに音を仕上げています。高岡早紀さんの歌声、ピアノの山下洋輔さんの繊細さと躍動感が良い意味で生々しく再現できたかとおもいます。

やはり、CD(44.1KHz/16bit)とは違い、録音・ミックスした同じスペック(96KHz/24bit)でマスタリングするとこうも違うのか、という実感がありました。(勿論CDも最適に仕上げてはいますが)昨今、音楽も多様化し、なにをもって『良い音』か、という定義がむずかしいですが、この作品は『スタジオクオリティ』というものを感じていただきたい作品です。是非お聴きください。

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