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輸入元のキーマン2名にインタビュー

日本に再登場する“歴史ある新鋭”スピーカーブランド「Mission」に迫る

公開日 2014/09/22 11:00 構成:ファイル・ウェブ編集部 小澤貴信
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ラックスマン(株)が、英国のスピーカーブランド「Mission」の日本国内における取り扱いを10月1日より開始することは、すでにお伝えした(関連ニュース)。

10月1日より日本に導入されるMissionのSXシリーズとRXシリーズ

このMissionというスピーカーブランド、ここ10数年ほど日本での展開が止まっていたものの、80年代から90年代にかけて国内でも高い評価を得ていたことから、ある年齢以上のオーディオファイルの方々には聞き馴染みのある名前かもしれない。

9月23日より開催される東京インターナショナルオーディオショウでは、このMissionのスピーカーシステムが、ラックスマンのブースで初披露される。それに先立って、Missionというブランドについて、そして今回導入されるSXシリーズ/MXシリーズについて、本記事で改めてその詳細を紹介したいと思う。

Missionのブランド背景、そして今回導入されるスピーカーシステムの全貌を知るために、記者は新横浜のラックスマン本社に向かった。そして、同社にてMissionブランドを担当する特機事業部 部長の川上晃義氏、同じく特機事業部のセールスマネージャーの後藤毅彦氏の両名に、その詳細について伺うことができた。

ラックスマンの試聴室に設置されたSX-2(右)、SX-3(中央)、MX-3(左)

■先進的なスピーカーメーカーとして40年近い歴史を誇る

Missionは1975年、英国ケンブリッジでその歴史の幕を開けた。創業者であるイラン系イギリス人のファラット・アジマ氏は、著名な大学で工学を専攻した技術者であった。75年当時のイギリスはロジャースやKEFなどのBBCモニターが隆盛を誇った時代だったが、アジマ氏はこうしたスピーカー群と一線を画すスピーカー開発を自ら手がけ、英国内外で高い評価を得た。Missionにはその後もオーディオ業界で活躍する多くの技術者が集い、先進的な技術を導入したスピーカー開発が行われた。今でこそ一般的になったポリプロピレン振動板を、スピーカーシステムで最初に実用化したのもMissionだったという。

ラックスマン(株)特機事業部 部長 川上晃義氏

Missionは80年頃までにはスピーカーブランドとして確固たる評価を得た。この時期にはすでに、現在のラインナップにも採用されている位相技術「インバーテッド・ジオメトリック方式」を開発していた。80年代に入ると、ファラット・アジマ氏の弟であるヘンリー・アジマ氏が同社に合流したのを期に、アンプなどのオーディオ機器、コンピューター関連機器、さらにはNXT振動板を用いた航空機向け平面スピーカーなどを幅広く手がけ、拡大路線に進んだ。

なお、日本でも80年代後半から90年代にかけてMissionのスピーカーシステムが輸入されていた。特に90年代初頭までは、英国を代表するスピーカーブランドのひとつとしてその名が知られていた。しかし時代の流れの中で、Missionブランドが投資グループに売却されたことなどもあり、2000年前後から日本への導入も止まっていた。実際、この時期のMissionの製品は、80年代のような評価は得られていなかったようだ。

ラックスマン(株)特機事業部 セールスマネージャーの後藤毅彦氏

転機が訪れたのは2005年。様々なオーディオブランドを傘下に持つエレクトロニクスメーカーがMissionブランドを買収したことで流れが変わる。資本力に加えてオーディオに対する知見を持ち、そして技術力・生産力を備えたグループが親会社となったことで、Missionは再びその勢いを得た。さらには現在の主力ラインナップを手がけるピーター・コモー氏が主幹音響デザイナーに就任したことで、Missionは今一度、各国の評論家やオーディオファイルが注目するスピーカーを世に送り出すこととなる。その中核ラインナップが、今回日本に導入されるSXシリーズとMXシリーズだ。

ちなみにこのピーター・コモー氏の経歴が興味深い。もともとがオーディオファンであり、スピーカー開発を手がける前はオーディオ専門店でセールスを担当していた。この経験を背景に自らスピーカーブランドを立ち上げて実績を残した後、Missionへと活躍の場を移した。しかし、一度は同社を離脱し、今度はオーディオ評論家に転身。そして、体制の変わったMissionへと戻り、現在では主幹音響デザイナーとしてそのサウンドの中枢を担っている。

■Missionの技術の粋を集めた「SX」、高いC/Pとユーザビリティーが魅力の「MX」

今回日本に導入されるのは、前述のようにSXシリーズとMXシリーズの2ラインだ。どちらもピーター・コモー氏が自ら開発を手がけ、Missionの新世代シリーズに位置づけられるモデルだ。

SXシリーズ(公式サイトのラインナップ詳細)は現在のMissionの事実上の最上位ラインナップである。Missionは絶対的なフラグシップスピーカーで確立した技術を下位ラインに落とし込んでいくのではなく、中核となるラインナップに最大限の技術要素を盛り込むという手法をとっているのだ。SXシリーズには、ブックシェルフ型が2モデル、フロア型が3モデル、センタースピーカーが1モデル、ラインナップされている。

Mission「SXシリーズ」

トゥイーターをウーファーの下部に配置するなどして位相を最適化する独自技術「インバーテッドジオメトリー」方式が採用され、さらにはクロスオーバーネットワークにおいても位相を最適化している。また、各モデルでチタンドームトゥイーター、アルミコーンミッドレンジ/ウーファーが採用されている。

MXシリーズ(公式サイトのラインナップ詳細)はMissionのエントリーラインで、ブックシェルフ型3モデル、フロア型4モデル、センター2モデルを用意。シリーズ最小の「MX-2」はペア27,000円(税抜)、シリーズ最大のフロア型「MX-6」がペア155,000円と、非常に高いコストパフォーマンスを実現している。また、サランネットをエンクロージャーに一体化してデザインするなど、小さな子供のいるリビングでも使用できる手軽さも備えている。

Mission「MXシリーズ」

本機もインバーテッド・ドライバー・ジオメトリー方式を採用。また、高域再生の放射を均一化するウェーブガイドを備えている。ユニットはそれぞれ、シルクドームトゥイーターとパラミド・ミッドレンジ/ウーファーを搭載する。

■ハイレベルな生産技術に裏打ちされた高品位スピーカー

Missionのスピーカーにおいて驚くべき点のひとつは、スピーカーユニット、クロスオーバーネットワークからエンクロージャーに至るまで、全てを自社開発・自社生産しているという点だ。ユニットやクロスオーバーは専業メーカーから部品を購入するのが一般的であり、全ての構成部品を自社で手がけているスピーカーブランドというのは、世界を見回しても希であろう。

自社開発・自社生産できるということは、モデルごとに搭載する各部品を最適化できるということであり、かつコストを抑えて調達できるということだ。訊けばこのMissionというブランドは、エンジニアが集う英国ハンティンドンの開発拠点から、中国における自社の生産工場、さらにはマーケティングに至るまでを垂直統合することで、そのスピーカー製造・販売に関わる全てを一貫してコントロールしているという。

こうしたMissionの高い技術と厳しい品質管理は、エンクロージャーの作りや仕上げにも見て取れる。SXシリーズのピアノフィニッシュについては、同社は高度な技能を持つ専門技術者を多数擁することで、非常に完成度の高い仕上げとなっている。また、SXシリーズではエンクロージャーに使う突き板にもこだわり、スピーカーのL/Rで木目が揃うように作られている(よって、スピーカーはL/Rで同一の製造番号を持っている)。

SXシリーズでは木目の美しさを活かした突き板仕上げ3色と、丁寧に塗り重ねられたピアノ仕上げ2色が用意されている

スピーカーのサイズ展開やカラーバリエーションは、近年ではどちらかというと絞り込まれる傾向にあるが、MissionにおいてはSXシリーズで6機種×5色の合計30モデル、MXシリーズでは9機種×4色の36モデルを用意している。しかも、今回はその全てが日本で展開される。このあたりは、仕上げやデザインの完成度と共に「日常の生活空間で使うものだからこそ、環境や要望に合わせて多様なバリエーションを用意する」という同社の哲学が窺える気がする。

今回、このMissionについて川上氏、後藤氏にお話を伺ったのだが、両氏は最後にMissionを導入するにあたっての想いを語ってくれた。

「かつてはオーディオを楽しんでいたけれど今は離れてしまった、という方にこそMissionでもう一度、音楽を楽しんでいただきたいです。コストパフォーマンスの点でも、Missionは再入門に最適なのではないでしょうか」(川上氏)。

「Missionは歴史のあるブランドですが、若い方にも使っていただきたいという意味も含め、今回は誰も知らないところからのスタートだと考えています。だからこそ、Missionの音の魅力、製品としての良さを知っていただく努力を地道に続けたいと思います。そして、多くの方に実際にMissionの音を聴いていただければ幸いです」(後藤氏)。

Missionの日本導入への意気込みを語ってくれた川上氏と後藤氏

最後に川上氏は、ファラット・アジマ氏が自身のオーディオ哲学について語ったこんな言葉を教えてくれた。“「Music is Master、Technology is Slave(音楽は主人であり、技術は従者だ)」”。Missionという“歴史ある新鋭ブランド”には今後注目である。本誌では、追ってSX/MXシリーズの試聴レポートも行う予定だ。

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