画面の「色」は"ホンモノ"ではない?

【海上忍のAV注目キーワード辞典】色域と「TRILUMINOS」 − NTSC/sRGB/BT.709…何が違う?

海上 忍
2013年04月17日

【第21回:色域と「TRILUMINOS」】

■画面の「色」はホンモノ?

今回のテーマである「色域」の説明に入る前に、表示装置で見る色は"ホンモノ"ではない、という前提について触れておきたい。

デジタルで再現される「色」は、肉眼で見る色と多少の差がある。単板方式などのデジタルカメラ/カムコーダーの場合、CCDやCMOSといった撮像素子が感知した光に、後から信号処理を行うことで色を導き出す(デジタル撮像素子は光の強弱しか検出できない)。その時点で本来の「色」は失われ、メーカーや開発者が意図した「画」が生まれる。

そうして得た「画」は、表示装置(テレビやパソコンの画面)で再生されることになるが、記録した時点そのままの「色」は再現できない。今度は、表示装置側のメーカーや開発者が見せようとした「色」になるのだ。

ただし、先に挙げたデジタルカメラ/カムコーダーの「色」は、写真や映像の制作者が選択した色であり、さらに(制作者が)独自の加工を施すこともあるから、それをもとにBlu-rayや配信データが創られるという意味で「オリジナル」といえる。その「オリジナル」を忠実に再現することが、表示装置側に求められる基本的なスタンスといえる。

■なぜ製品により「色」の印象が異なるか

表示装置側が「オリジナル」を忠実に再現するためには、一定のルールなり基準が必要となる。可視光線には、数百万ともいわれる色が含まれているが、一般的な表示装置ではそのうちの特定範囲しか表示できない。この特定範囲が「色域(カラースペース)」だ。

ソニーによるトリルミナスディスプレイと従来品との色域比較図

色を扱うデバイスは表示装置だけではなく、プリンターやスキャナなど多様な製品が含まれる。機器によって再現できる色の範囲や傾向が異なるため、色域について共通の取り決めがなければ、使用するデバイス次第で色がまちまちになってしまう。

現在、表示装置の色域について言及するときには、「NTSC」と「sRGB」、「Adobe RGB」が利用されることが多い。NTSCは、米国テレビ標準化委員会が定めた色域で、長くアナログテレビやDVカメラで利用されてきた。sRGBは、標準化団体のIECが制定した国際規格で、表示装置のほかデジタルカメラやプリンタなどPC用周辺機器を中心に採用されている、現在もっとも一般的な色域だ。Adobe RGBは、代表的なインクの色域を含むことから、出版印刷業界で利用されることが多い。

放送業界やBlu-rayなどハイビジョン映像では、色域の標準規格として「BT.709」が使用される。このBT.709は独自の色域を設定する必然性もなかったことから、そのままsRGBが採用された。だから色域だけでいえば、sRGBとBT.709はイコールの関係だ。

では、同じ色域規格を基準とした製品であればまったく同じ色になるかというと、決してそうはならない。デジタルカメラ/カムコーダーは、可視光線すべてを記録するわけではなく、基準とする色域(sRGBやAdobe RGB)に色表現範囲を圧縮する。どの色をどのように圧縮加工するかは、撮像素子の性能やカメラメーカー独自のノウハウであり、それが製品の個性となるのだ。

■「TRILUMINOS」と色域の関係

最近のソニー製品に掲げられている「TRILUMINOS(トリルミナス)」は、広色域表示を可能にする技術ブランド。2004年に発売されたハイエンドクラス液晶テレビ「QUALIA」のRGB-LEDバックライトシステムにも同名の技術が採用されていたが、現在のTRILUMINOSと直接の関係はない。

これまでの広色域技術は、sRGB/BT.709という従来の色域範囲で制作された映像コンテンツを、表示装置メーカーのノウハウにより拡大したもの。しかしソニーが提供する「TRILUMINOS」の場合、TRILUMINOS対応製品で撮影したコンテンツを、同じTRILUMINOS準拠の表示装置で再生すれば、海の深い青色や鮮烈な赤といった従来規格ではカバーしきれない広色域表示が可能になる。4月11日に発表された4Kテレビ「BRAVIA X9200Aシリーズ」(関連ニュース)のほか、デジタルカメラやカムコーダー、パソコン(VAIO)、Blu-rayタイトル(mastered in 4K)がTRILUMINOSに対応する予定だ。

トリルミナスディスプレイの解説

ちなみに、フォーマットとしてのTRILUMINOSは、業界標準の広色域規格「x.v.Color(xvYCC)」のこと。元々はソニーが提唱した規格で、一時期他社製品にも採用されていたが、ここのところ停滞傾向が指摘されていた。ソニーはTRILUMINOSというブランドを用意し、一気通貫した製品ラインナップを提供することで、再び広色域への挑戦を開始したことになる。

x.v.Color(xvYC)に対応する他社製品に関してのコメントは得ていないが、正式にx.v.Color準拠の製品であるかぎり、制作者が意図したとおりの広色域を再現できると考えられる。たとえば、PS3にはTRILUMINOSロゴは付されていないが、BRAVIA X9200Aシリーズの発表会ではPS3を利用した広色域画像のデモを披露していた。製品が発売されれば、対応するかどうかの検証も進むことだろう。