メタリック・レッドのアクセントがクール。AKGの銘ヘッドホン「K240」の日本限定版、プロ機の高性能健在!
録音スタジオの定番として愛されてきた「K240」
AKGのロングセラーモデル「K240」の限定版「K240 STUDIO Limited Edition」が2025年12月29日より発売開始される。価格はオープンだが、市場想定価格は税込8,900円前後。これはAKG と日本国内代理店ヒビノの共同コンセプトを反映した、日本だけの特別なモデルだ。
「K240 STUDIO Limited Edition」は長年プロの現場で愛されている人気モデル「K240 STUDIO-Y3」をベースに、スペシャルカラー「Deep Red」を施したものである。
1947年にオーストリア・ウィーンで創業したAKG。創業当初から放送局や録音スタジオ向けのヘッドホンやマイクロホンの製品開発に携わり、音楽制作に関わるプロフェッショナルから評価を高めてきた。現在はハーマン・インターナショナルの傘下に加わり、世界的な販売戦略のもとで製品開発を続けている。
スタジオユースにおける信頼性は、そのまま音にこだわるオーディオファンからの高い信頼につながる。2005年に発売された「K701」、2014年に発売されたフラグシップモデル「K812」などのKシリーズはいずれもロングセラーを記録。プロ/コンシューマーの垣根を超えて愛されてきた。
K240シリーズはレコーディングやミキシングの定番として、数多くの名盤制作に貢献してきた。クインシー・ジョーンズがプロデュースした「We Are the World」で使われたことでも知られている。一方で脚色の少ない音と求めやすい価格から音楽リスニング用にもよく使われている。「K240 STUDIO-Y3」は、2019年にヒビノによる保証体系が刷新されて再発売された時取り上げたことがある。
ベースとなる「K240 STUDIO-Y3」はセミオープン型のダイナミック型ヘッドホンである。ドライバーの直径は30mmで、周波数特性は15Hzから25kHzまでの帯域をカバーしている。インピーダンスは55Ω、音圧感度は91dB/mWと、一般的なスマホでも自然な音を楽しめるが、別途ヘッドホンアンプがあればより高音質を引き出すことが可能だ。
ドライバーはプロ用モデルのために開発された独自の「XXLトランスデューサー」を採用している。これは振動板に異なる2種類の素材を組み合わせた「TWO-LAYERダイヤフラム」構造に加えて、中心部と外縁部で厚みを変えた特許技術「バリモーションテクノロジー」が採用されたものだ。
ケーブル長は左側の片出し3m長のストレートケーブルで、プロ用によく使われるカールケーブルではないので一般ユーザーにも使いやすい。再生機器側のプラグは3.5mmステレオミニで、据え置き機等で使える6.3mm標準プラグへの変換アダプターも付属する。ケーブルとヘッドホンを接続する端子がミニXLRなのもプロモデルらしさを感じさせる点だ。
ヘッドバンド部分は自動で可動するセルフアジャスト機構を採用しているため、装着するだけでサイズに合わせた長さ調整ができる。本体の重さは240gと軽量であり、長時間の使用にも適していそうだ。
「K240 STUDIO Limited Edition」は外箱まで赤をあしらったデザインがなされている点にまず目を引かれる。従来の黒ベースの実用重視の配色に、レッドメタリックのアクセントが施されていて、業務用的なイメージから抜け出して格好良い。これだけでもなかなか物欲を刺激されてしまうだろう。
AKGの「K701」がホワイト基調のデザインで鮮烈なデビューを飾ったことをふと思い出した。もともとAKGというのは格好良いヘッドホンなのだ。

AKGブランドヒストリー − 思想と技術の源を探る
2014/05/23
スティックDACでは疾走感あるサウンドを再現
さて、見た目で気分が高まったところで早速音を聴いていこう。今回はロングセラーモデルを今風に使うために、最近流行りのスティックDACと最新の楽曲のストリーミング音源で試してみた。使用したのはDITA Audio「Navigator」で、こうした本格的なスティックDACの使用は、K240の実力を十分引き出すためにも向いている。
曲は最近アニメでも活躍をしているジャズロックバンド「fox capture plan」の12月に出たばかりの最新アルバム「RESONANCE」をApple Musicで聴いてみた。
音の全体的な印象としては、前に出てくるボーカルとバックの複雑なバンドサウンドのバランスが良く、疾走感あふれる音楽が魅力のfox capture planのサウンドがスピード感あふれる演奏で楽しめる。音調は優しく感じられる一方で、楽器音は明瞭に聴き取ることができる。
低域はベースギターが気持ちよく感じられるほどに十分な量感が確保されているが、過剰な低音ではなく、プロ機らしい全体に整った周波数バランスを感じさせる。中音域のボーカルは優しさを感じる一方で、歌詞が良く聴きとれる。なによりバンドの売りでもあるピアノの音が良い。高域では刺激感が少なくキツさはほとんどない。
ドラムスのアタックはメタルではやや軽めではあるが、こうしたジャズ系の軽やかで疾走感あるサウンドにはちょうど良い。ピアノの軽やかで美しい響きとボーカルのしっかりとした表情がどちらも伝わりとても魅力的な音楽にしてくれている。
据え置き機材でボーカルや音色の美しさが堪能できる
次にコスパの良さで知られる最新のヘッドホンアンプ、TOPPING「DX5II」でも試してみた。USBでMacBook Airに接続し、ヘッドホンは6.3mmアダプターを使用してDX5IIに接続する。
DX5IIの高いSN比を誇るNFCA技術とディスクリートの出力段により、音像はグッと引き締まりグレードの高い音が楽しめる。ボーカルはさらに表情を豊かにして、情感豊かに歌詞を届けてくる。ピアノの音は弾むように軽快に鳴り、ドラムスはタイトでグルーブ感あふれるサウンドを堪能できた。
DX5IIは価格の割に測定性能が高いことでも知られているが、こうした高性能な据え置き機材でも十分楽しめるポテンシャルをK240は秘めていると言えるだろう。AKGの持つボーカルの良さと音色の美しさが低価格で堪能できるモデルだと思う。
本来スタジオのモニター用途ではあるが、家で音楽を楽しく気持ちよく聴く用途にも適している。より駆動力の高いヘッドホンアンプを用いるなど、工夫次第でさらに魅力的な音を引き出せるのも楽しみのひとつではないだろうか。
「K240 STUDIO Limited Edition」は赤をアクセントにしたデザインが美しく、スタジオモニターらしい音の正確さと音の美しさのバランスがとても良いヘッドホンだと言える。古いワインを新しいグラスで飲むと、香りはより芳醇になると言われるが、K240は今のオーディオでも十分に通用する魅力を有していると感じた。
初めてのモニターヘッドホンとしても、かつてK240を使っていた人の買い直しとしても、このLimited Editionは魅力的な選択肢になるだろう。
(協力:ヒビノ)
