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PRオーディオアクセサリー銘機賞2026受賞モデル

“スイング式”インシュレーターに薄型モデルが登場!セレニティ 静寂-Shijima-の「SWI-10」使いこなしレポート

公開日 2025/12/12 06:35 井上千岳/炭山アキラ
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新潟の新進アクセサリーブランドSerenityの静寂(Shijima)シリーズより、秀逸な免振機構を採用したスイング式インシュレーターの薄型モデル「SWI-10」が、「オーディオアクセサリー銘機賞2026」を受賞した。

ここでは、オーディオアクセサリー銘機賞の審査員である井上千岳氏と炭山アキラ氏による使いこなし実験をお届けしよう。

Serenity -静寂(Shjima)- インシュレーター「SWI-10」(33,000円税込、1個・付属スパイクなし)Photo by 田代法生

 

水平方向にだけスイングし、振動を受け流す原理を使用 (井上)

セレニティの静寂シリーズに「SWI-1」というインシュレーターがある。独自の免振機構で水平方向にだけスライドするスイング式で非常に高い効果を備えているが、やや厚みがあるためラックによっては頭がつかえてしまうこともあるようだ。

SWI-10は、その機構を踏襲しながら内製化によってコストダウンを図り、高さを10mmにまで抑えて適用範囲を広げた製品である。

SWI-10は口径69mm×厚み10mm。質量224g、耐荷重20kg

1個当たりの適正荷重(正味耐荷重というようだ)は20kg。これ以上では十分な性能を発揮させるのが難しいという意味だという。今回は同ブランドを主宰する(株)ワンロードの井上正栄代表にも同席いただいたので、紹介かたがた実験的なことも行ってみたい。

試聴機材はアナログプレーヤーと管球式アンプを用意した。まずアナログプレーヤーの脚をSWI–10に乗せる。ごく一般的なセッティングである。

まず、アナログプレーヤー(ラックスマン「PD-171A」)に試すと、楽器の周辺ノイズが収まり、瞬発力が増して力が強くなった

バロックは中域辺りにもやもやとかかっていた霞のようなものが消え、エネルギーが全体に行き渡るようになった。エッジの切れが向上して線が明瞭。伸びも良くなっている。ピアノはもっと効果的でタッチの切れがシャープになり、低音部でも頭が丸くならず輪郭がくっきりしている。

しかも強弱の幅が広がり、微小なニュアンスまでよく分かる。オーケストラは周辺ノイズが収まり、瞬発力が増して力が強くなる。切れが深く鋭く、一音一音の彫りが深い。フォルテでの表現の大きさが変わるのである。

管球アンプにも試してみた。トライオードの「TRZ-P300W」である。ディテールの情報量が増す。ことに弦楽アンサンブルの中低域が複雑になり、音楽の多彩さが厚みを増す。ピントもより明確になり、独奏フルートも弦楽アンサンブルも存在感がはっきりと分かるようになる。焦点が揃うのである。

真空管アンプ(トライオード「TRZ–P300W」)にも試す。音楽の多彩さが厚みを増し、ピントもより明確になった

ピアノは奥行きや遠近が精度を増し、実体感が現れてくる。ステージ上にはっきりと見えるのが違いである。タッチも明快でにじみがなく、エッジの細かな揺れも見えてくる。再現がよりきめ細かくなっているのである。

オーケストラもやはり楽器の位置感が明らかになり、音場が立体的に浮かんでくる。空間の中にいるような感触が強まり、ライブ感が高まるのである。楽器同士の分離も向上し、アンサンブルが伸びやかで起伏に富んだ鳴り方だ。 

 

小径インシュレーターを乗せると低域がさらに明瞭に

今回井上代表が持参してくれた試作品がある。マグネシウムのほか真鍮、アルミ、ステンレスの4種類による小口径のインシュレーターで、相互に積み重ねることができる。組み合わせは自由。

これらをSWI-10に乗せ、ユーザー自身がいろいろと試行錯誤して楽しんでもらいたいという。こちらはまだ試作段階で発売は先だが一足先に試してみることにした。

SWI-10の上に試作品の小径インシュレーター、マグネシウム+真鍮を重ねた様子。アルミ、ステンレスも開発中。井上代表によると、手持ちのインシュレーターを乗せてもよく、いろいろと楽しんで欲しいという

井上代表の推奨はマグネシウム+真鍮。これをSWI-10に積んで、アナログプレーヤーの脚を避けて底部を直接乗せる。面白いことにさらに低域がはっきりする。ぼやけた響きが消え、音程が明瞭になり深く沈む。弦楽アンサンブルもフルートも音が太くまた切れがよく、実際の楽器の感触により近づいている。またピアノもタッチの肉質感と張りが現れ、弱音部の表現が雄弁になる。一音一音のエネルギーが増して、ストレートになった印象である。

オーケストラはエネルギーが隅々まで行き渡り、弱音でも表情がよく分かる。フォルテでは音が伸びやかに広がり、響きが開放的でスケールが大きい。音数も増して、音楽的な密度がずっと濃密なものになっている。

 

プリアンプの下にも敷くと位相が揃う

その状態でさらにプリアンプ「C-3900」にもSWI-10を敷いてみた。こちらはラックとの関係で直接乗せられないので、機材の脚を乗せる一般的な形である。

アナログプレーヤーの底面3箇所に直接、SWI-10と小径の試作インシュレーター(マグネシウム+真鍮)を重ねて置いた状態で、プリアンプ(アキュフェーズ「C-3900」)の脚部にもSWI-10を設置。振動に関するモードが全て一致し、すこぶる心地好い鳴り方が実現した

これは完成形という印象で、全てがぴったり揃った感覚がある。何が揃ったのかというと位相で、このため全体の焦点が合って非常に明快な再現性が得られるのである。どこかにゆがんだ部分があるとこうはならないもので、振動に関するモードが全て一致したためこうした心地好い鳴り方ができ上がるわけだ。

バロックなど本当によく揃った鳴り方だし、ピアノもピントがぴったり揃っている。システム全体がひとつのモードの中に入った印象である。オーケストラもリアリティが違う。こういうのをいい音というのである。

 

設置して数日後さらに濃密さがアップ(炭山)

薄く軽く、そして廉価になったセレニティの新しいインシュレーターは、高さに限度のあるラックへも機器を収めやすくなったのが嬉しい。我が家ではアクセサリーのテストベンチとして活躍を願っているネットワークプレーヤーの下へ据えて音を聴いたが、一聴してノイズフロアが大幅に下がり、音の粒が細かく磨き上げられたような音に変わる。

これは大きな違いだが、敷いたまま数日置いた後の音にはたまげた。音場の濃密さが劇的に向上し、地に足の着いた安定感から低域方向の爆発的なパワーが生み出される。摺動機構を内蔵したインシュレーターは落ち着くのにある程度時間がかかるものだと認識してはいたが、この向上ぶりには驚愕である。

「オーディオアクセサリー銘機賞2024」を受賞した上位モデル「SWI-1」。厚みが34mm(66,000円/1個・税込)

(提供:ワンロード)


本記事は『季刊・オーディオアクセサリー197号』からの転載です

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