井上千岳がテスト

PC-Triple Cを採用、SAECの高品位ラインケーブル「SL-5000」をレビュー

井上千岳
2014年12月04日
古河電工が供給してきたPCOCCが生産終了となり、これに代わるべき新しい線材としてPC-TripleCが話題になっている。SL-5000はこれをいち早く採用したラインケーブルである。

SAEC「SL-5000」¥65,000 (0.7m/税抜)

PCOCCに代わる線材、PC-Triple C

PCOCCはよく知られているように、銅を単一結晶のまま連続的に引き出す極めて特殊な鋳造法による導体で、千葉工業大学名誉教授大野篤実博士の発明による。本来はオーディオ用に開発されたわけではなく、博士の金属凝固学に関する理論の傍証となるものであった。結晶のでき方が従来の鋳造法によるものとは全く異なるため、同じ金属でもそれまでとは違った性質を示す。ことに電気信号に対しては、結晶境界付近に存在する不純物の影響を受けることがなく、非常に純度の高い伝送が可能とされてきた。この点が重要なポイントとなる。

PC-TripleCはFCM株式会社が開発した線材で、PCOCCとは別の方法で製造される。高純度な銅を一定の条件下で細かく叩きながら引き伸ばし、結晶を長手方向へ延伸させるものである。つまり鋳造ではなく鍛造で、結晶が非常に長いため結晶境界が少なく不純物が減少する。この点でPCOCCと似た構造を持つことになる。

ただし鍛造といっても単に叩けばいいというものではない。強すぎれば結晶が壊れてしまうし、弱ければ役に立たない。FCM社では力の強さと叩く回数に工夫を重ね、定角連続移送鍛造法という独自の方法を開発している。

このようにPCOCCとは製造法も開発意図も異なるが、長結晶という特徴を持つことによってPCOCCに代わる線材として期待されているわけである。

ケーブル構造にも独自の工夫を施した

SL-5000はこの線材を単純に使用するのではなく、構造上にも周到な配慮を行っている。

まず導体はPC-TripleCの単線を中心として、その周囲に極細線をはいちした2層構造としている。これは周波数の高い信号は導体の外周部に偏る傾向があるといういわゆる表皮効果を考慮した構造と考えられる。

絶縁体には発泡ポリエチレンだが、制振材を加えることで振動の影響を排除する。また空間を含有した絶縁材によって、比誘電率を下げ伝送ロスを低減する仕組みである。

全体の構成は2芯タイプで、シールドには銅箔と編組の2種類が採用されている。二重シールド構造で、外来ノイズの遮断を図るものである。また外被はポリエチレンシースの外側にカーボンを含浸させたポリウレタンの編組シースを被せ、静電気やノイズを排除する構成だ。

外被はポリエチレンシースの外側にカーボンを含浸させたポリウレタンの編組シース

プラグはオリジナルのコレクトチャック式で、ボディは高剛性リン青銅の削り出しに特殊金メッキを施している。またプラグカバーはジュラルミンである。さらに送り出し側には振動防止装置も装着している。

プラグはオリジナルのコレクトチャック式

品質にも非常にこだわっている

一定以上のシステムなら確実に効果が得られる

くせや誇張がなく、また音色にもカラレーションがない。それだけでなく、全帯域にわたって密度の高いエネルギーを感じる音調である。細かな一音々々に、濃密な力がぎゅっと詰まっている印象だ。

ピアノでは低音部の底から高域の端までクリアなタッチが貫かれているが、骨格が豊かなだけでなく弱音部でも余韻が鮮明に聴こえてくる。ディテールに力があるということだ。

バロックは艶と張りのある古楽器の質感が濁りなく描かれている。ヴァイオリンやチェロの立ち上がりが大変シャープで切れがよく、その後に厚手の余韻が続くという具合である。またオーケストラでもどっしりと落ち着いた低音弦やティンパニー、芯の詰まった金管などが強靭に再現される。ジャズでもトロンボーンやドラムが輝かしい。音数とその密度が、一次元高まった感触である。

決して低価格な製品ではないのでおいそれと誰にでも勧めることはしないが、一定以上のレベルのシステムなら確実に効果は得られるはず。正攻法の音質改善を目指すときに、特に好適である。

(井上千岳)