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オープン型の魅力をすべて備える

オープン型の超定番モデル、ゼンハイザー「HD 650」の実力を探る

公開日 2013/02/19 17:55 高橋敦
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国内での発売以来、ロングセールスを続けるヘッドホンの名機といえばゼンハイザー「HD 650」だ。「HD 600」の後継機として2003年に登場し、以後長らくゼンハイザーのヘッドホンのトップエンドを担った。“高音質・オープン型ヘッドホン”のジャンルを代表する、象徴的なモデルでもある。

SENNHEISER「HD 650」

■丹念に作り込まれた逸品

その特徴をアピールする上で、ゼンハイザーではむやみに技術的な「新開発」「世界初」を主張することなく、オーソドックスに、丹念に作り込まれた製品であることを飾らずに紹介している。それが逆に本機の凄みとして伝わってくる。

ヘッドバンドにはブランドロゴを配置

ヒンジの長さ調節によって快適な装着感が得られる

外観もオープン型ヘッドホンの原型を感じさせるシンプルさを備えながら、独特の魅力的を放っている。一見すると無骨な作りに見えるかもしれないが、実際の本体はとても軽量で、側圧のバランスや装着感も上々だ。

クッション性の高いイヤーパッドを採用

6.3mm標準プラグが基本仕様。3.5mm変換アダプターが付属する


ケーブルは左右イヤーカップからの両出し、長さは3.0m。着脱式を採用する

ヘッドホンケーブルの端子形状。プラグ部にL/Rが表記されている

ケーブルは着脱式が採用されている。現在のハイエンドヘッドホンが軒並み着脱式ケーブルを採用する中、本機はいち早く高音質ヘッドホンにおけるユーザーニーズを先取りしたモデルであると言えよう。着脱式ケーブルを採用していることで、断線時に簡単に交換できる点や、サードパーティの高音質ケーブルとの付け替えが楽しめる点など、ヘッドホンにこだわる方々にとって多くのメリットがあることは言うまでもない。

■これぞオープン型と言える澄み切った音色

「HD 650」の音場は、まさにオープン型ヘッドホンの魅力を全て備えたものであると感じた。閉塞感がなく、すっと広がる音場がヘッドホンで楽しめる。


「HD 650」を試聴する高橋氏
中低音の柔軟な肉厚さも特徴的である。ジャズのウッドベースはアタックのゴリッとした感じを保ちながら、立ち上がりの瞬発力も備えており、音を詰め込んだフレーズの粒立ちも良い。ドラムスもやはり豊かな太さを見せるが、パシッとキレが鋭い。ベースは音程を下げていく場面でも、その最低音まで音色を薄れさせることなく、低音側の伸びが実感できる。シンバルの音色の解像感、チャイム系の音色の輝きとヌケなど、高域側の伸びも見事だ。高域の表現力が高いことによって、豊かな空間性も生み出されている。

ポップスのエレクトリックベースもやはり柔らかだが、芯が太くしっかりとしていて、スタッカートもナチュラルに決まる。やくしまるえつこのボーカルはそのささくれた手触りを十分に表現しつつ、しかも柔らかさも備えていることから、ザラついた印象は皆無。実に心地よく声の質感を楽しませてくれる。

(高橋敦)

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