スーパーハイエンドヘッドホンの先駆け

ゼンハイザーのフラグシップ「HD 800」の実力を改めて知る

高橋敦
2013年02月19日
ゼンハイザーのフラッグシップモデルとして、2009年に発売されたヘッドホンが「HD 800」である。本機は、現在ではカテゴリーとして確立した“スーパー・ハイエンド・ヘッドホン”の先駆けとなった製品であり、ハイクラスモデルの「HD 650」をさらに上回る高音質を実現した、挑戦的な内容のヘッドホンである。

SENNHEISER「HD 800」

■56mmの超大型振動板を搭載

最大の特長は「56mm口径」という超大型・振動板を搭載したことだ。中央部をくり抜いたリング形状と、精密な表面加工によって、超大口径でありながら余計な歪みを抑え込むことに成功している。フレームやハウジングには、振動の収まりが良い特殊な樹脂素材も導入。その成型の自由度を活かしたのであろう、未来的なデザインも強いインパクトがある。

ヘッドホンでは最大級のφ56mm大口径振動板はリング形状を採用。これにより、大口径振動板のメリットである低域の再現性を維持しながら、高域再生時に発生する歪みを抑えることに成功している

フレーム材の中心となる部分にはチタンと同等の硬さを持ち、振動抑制能力に優れる超軽量の特殊プラスチック「レオナ」を採用。イヤーカップとヘッドバンドは後方一箇所でつながっており、これにより快適な装着感を実現した

本機もサイズが大型でありながら、手に取ってみると非常に軽量なことに驚く。また、大口径振動板を包み込むイヤーカップも大型で、イヤーパッドはユーザーの耳全体を、余裕を持ってすっぽりと覆う。そのため装着時の圧迫感は非常に少なく、長時間のリスニングでも快適さが失われることはない。もちろん、「HD 800」も着脱式のケーブルを採用している。

ユーザーの耳全体を包む柔らかな着け心地を持たせたイヤーパッド

ハイテクプラスチックとメタルの組み合わせで、減衰特性に優れる特性を持たせたヘッドバンド。シリアルナンバーは頭頂部に刻印される


ケーブルは左右両出し3.0m、着脱式を採用

本体側のコネクター形状


ケーブルは銀メッキOFC線を採用。コネクター部には金メッキ処理が施される

6.3mm標準プラグが基本仕様となる。プラグ部にもブランドロゴが配置されている

■音楽のあるべきかたちを自然に再現する

「HD 800」は空間の広さと見通しの良さが、さらに一段と優れている。音と音の間の“余白”の残し方と、静音部分の澄み切った美しさは、他のヘッドホンでは到達できないレベルにある。


HD 800を聴く高橋敦氏
帯域のバランスは見事にフラット。ジャズのウッドベースは余計な重量感を出さず、素直な音色を軽やかな厚みを持たせつつ描き出す。量感を強調し過ぎずに、しかも強い存在感を備えながら、音楽としてあるべき場所にすっと収まってくれる。

スネアドラムのスナッピー(共鳴弦)のディテール感、シンバルのキレなど、高域が自然な解像感を備えていることも魅力的だ。ピアノの音色の角を、絶妙に落とした滑らかさも好ましい。

ポップスのエレクトリックベースの音色には、むやみに派手な迫力とは異なった、内包する力強さが込められている。低音の立ち上がり・立ち下がりは、本機でもやはり素晴らしく、スタッカートは「HD 650」よりもさらにスパッと爽快に決まる印象だ。ボーカルは「HD 650」に比べるとシャープだが、それは全く気に障らない類のシャープさであり、とことんまでに心地よい。

(高橋敦)