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画質・機能の両方で前モデルから大きく前進

最上位機のDNAを受け継いだ、ソニーの意欲機「VPL-HW50ES」

公開日 2013/01/29 11:06 取材・執筆/鴻池賢三
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上位モデルのエッセンスを取り入れた意欲的なモデル

ハイスペックモデルとして発売された本機VPL-HW50ESは、VPL-VW1000ESのエッセンスをふんだんに取り入れつつ、価格をミドルクラスに抑えた意欲的なモデルである。特筆すべきは、ソニーが独自に成熟を重ね、VPL-VW1000ESの評価の源泉ともなった超解像技術である「リアリティークリエーション」の搭載である。これは前モデルのVPL-HW30ESはもちろん、上位でハイエンドのVPL-VW95ESにも迫る機能が奢られた事になる。光出力の大幅な引き上げもトピックで、本機の1700lmというスペックは、200W高圧水銀ランプを持つ既存製品の1000〜1300lmよりも断然パワフルで、格上であるVPL-VW1000ESの2000lmに迫る水準である。ここからも、本機がフラグシップであるVPL-VW1000ESを意識して製品化された意図が窺い知れる。


高輝度に加え、新しく最適化された「アドバンストアイリス3」や、シーン毎の信号を分析してコントラストを引き出す「コントラストエンハンサー」などとの相乗効果によるダイナミックレンジの拡大も注目すべきポイントだ。そのほか、明室での視聴に適した映像モードである「ブライトモード」の新設および、3Dシンクロトランスミッターの内蔵など、視聴環境の制約を低減し、使い勝手の向上に繋がる配慮も随所に見られるモデルだ。




絶対的なコントラスト感と自然な奥行き感を実現

投写しての第一印象は画の痛快とも言える元気さだ。絶対的なコントラスト感に加えてスカッと抜けが良い。その要素を分析してみよう。まず「リアリティークリエーション」による精細感の向上だ。SD画質やDVDの映像では、解像感が圧倒的に向上し、ピントの合った被写体が背景のボケから浮き上がる。BDなどのフルHDの映像でも、他の超解像技術ではシュートや硬さにより奥行きを損ないやすい部分をしっかりカバーし、ディテールや輪郭の精細感を引き出しながらも、自然な奥行き感のある画を実現している。夜景の明かりやメタル素材の質感の向上などにも効果があり、艶やかな映像はVPL-VW1000ESを彷彿させる。

次に注目したいのが色の純度だ。一般的に明るさを稼ぎたい下位モデルの場合、RGBフィルタの透過帯域を広げるため、色の純度が犠牲になりがちである。しかし、本機は光学パーツの見直しも図っているため、暗部での色乗りも向上している。明部では赤のピュアな発色が印象的で、結果として官能的とも言える肌色の透明感に繋がっている。「ブライトモード」も、明るさの為にホワイトバランスを犠牲にする事なく、緑色被りが無くて快適だ。スペック値だけでなく、実力の伴った明るさを実現した真摯な取り組みは評価に値する。

総じて解像度が高く収差の少ないレンズ性能の高さが、精細感、明るさ、コントラスト性能、色純度を余す所無く引き出しており、バランスの良さが光る好モデルである。輝度とレンジ感を高めたダイナミックな映像は、観る者の魂を揺さぶる域に達し、VPL-VW1000ESの映像を初めて観た時の衝撃が蘇ったほどだ。

実質本機はVPL-HW30ESの後継機であるが、画質面では上位モデルであるVPL-VW95ESにも劣らない部分をいくつも持つ。洗練された総合性能を持つVPL-VW95ESに対し、映像面で尖った面を持つ元気な弟分と捉えると関係性を理解し易いだろう。映像をよりダイナミックかつ積極的に楽しみたいユーザーにお薦めしたいモデルである。

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