HOME > レビュー > 【速攻レビュー】新方式「MAドライバー」搭載イヤホン・TDK LoR「TH-ECMA600BK」

【速攻レビュー】新方式「MAドライバー」搭載イヤホン・TDK LoR「TH-ECMA600BK」

公開日 2012/11/19 11:00 取材・執筆/高橋 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
TDK Life on Recordから、新開発の一磁極型BAドライバー搭載イヤホン「TH-ECMA600BK」が登場する。新たな方式を採用した新製品の音質を、高橋 敦が早速検証した。

TH-ECMA600

イヤホンのドライバーの方式と言えば、主流のダイナミック型と、ハイエンドから始まってエントリーでの採用例も増えているバランスド・アーマチュア型だ。ところがここに来て新たな方式「マグネチック・アーマチュア(MA)」を採用した製品が登場。それがTDK Life on Recordの「TH-ECMA600BK」だ。

新たな方式とは言っても、本機が採用する「マグネチック・アーマチュア」方式の歴史は実は古く、オーディオとは別の分野で実績がある。その代表例は警察無線とのこと。マグネチック・アーマチュア方式の利点は、堅牢で音圧が強く音の輪郭が明確で、騒音下でも聞き取りやすいこと。たしかに警察無線に適している。そして音圧の強さや音の明確さと来れば、なるほどうまくチューニングすればオーディオ用としても魅力的なものになりそうだ。ちなみにオーディオ用チューニングには約1年を費やしたという。

マグネチック・アーマチュアドライバーの構造図

仕組みとしては、ニッケル合金製の振動板にアーマチュア=振動子を取り付け、入力された音声信号によってコイルから発生する磁界が振動子と振動板を駆動する。つまり基本原理はバランスド・アーマチュアと同じだ。

しかしアーマチュアと振動板がロッドで間接的に連結されているバランスド・アーマチュアに対して、こちらはアーマチュアと振動板が直結されているより単純な構造のため、前述の堅牢さなどの利点を備える。イヤホンでは珍しい金属製の振動板も、音に反映されるだろう。

本機のノズル部

左右判別用マークは右側のみに記されている

その他、可動式イヤーホルダーで装着の安定性を向上、ケーブル導体は銀合金、コードは布編み被服で絡みにくいなど、イヤホンとしての総合力も抜かりなし。さらに実売7000円程度というお手頃価格まで実現している。

ケーブルは銀合金導体を使用し、布編被覆で絡みにくいつくり。プラグは3.5mmのL型プラグ。

耳の形に合わせて微調整できる新開発のイヤーホルダー(赤い部分)が用意されている

その音の印象を一言にまとめるなら、「ガツンと来る音」だ。特に中域にアグレッシブさがある。一方で同時に「声の優しさ」も特筆できる。

上原ひろみ「MOVE」からのハードなピアノ・トリオ曲でのエレクトリックベースは、芯が強くて適度に硬質でゴリッとした音色が秀逸。ドラムスも確かに音圧感に優れている。重低音タイプではないが、迫力があって良質な中低音だ。ピアノもほどよく硬質で、曲の緊張感を高めている。一方でハイハットシンバルのほぐれた音色も再現できており、音色の幅は広い。

ボーカルは主にアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」エンディングテーマのカバー曲「secret base 〜君がくれたもの〜 (10 years after Ver.)」で確認。ややシャープに収録されている女性ボーカルが、このイヤホンで聴くとほどよく和らぎ、とても聴きやすい。かといって描写が甘くなることもなく、歌の表情も豊かに引き出してくれる。

新しいドライバー技術の初搭載モデルにして、音作りの完成度は高い。特に、迫力ある描写が好みの方やボーカルの感触にこだわりのある方は要注目だ。



■執筆者プロフィール
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE