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「FALCONBRID」搭載がもたらしたものは?

2D/3D変換だけじゃない − 動画・静止画撮影の「基本」が大きく進化したビクター「GZ-HM990」をレビュー

公開日 2011/02/10 12:00 レビュー/川村容一
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ビクターのデジタルビデオカメラ“Everio”のハイクラスモデルに、2D/3Dリアルタイム変換機能を搭載した「GZ-HM990」が登場した。新世代のハイスピード・プロセッサー「FALCONBRID」を備え、先進的な機能をいくつも搭載しながら、同時に動画・静止画撮影の基本性能を大きく進化させた本機の実力を、プロカメラマンの川村容一氏がテストする。

充実した多機能だけでなく、動画・静止画撮影の基本性能が大幅に進化した


2D/3Dリアルタイム変換機能を搭載した“Everio”「GZ-HM990」
ビクターの“Everio”「GZ-HM990」は、コンパクトで美しい外観にパワフルな動画・静止画の撮影性能を兼備させたビデオカメラ。本機に採用された高感度な裏面照射型のB.S.I. CMOSセンサーは、これまで他のEverioのラインナップにも搭載され、夜景や室内を高画質に撮影できる性能を実証してきた。レンズは新設計の高品質「GTレンズ」を搭載し、F1.2という明るさを備え、望遠側でもF2.8を実現した光学10倍対応のズームレンズだ。光学10倍と聞くとやや心許ない気がするかもしれないが、広角側は35mm換算で29.5mmとワイドにカバーしており、狭い室内から遠景まで快適に使える。動画撮影は望遠側でダイナミックズームを使用して撮った際にも画質劣化が少なく、アクティブモードOFF時では15倍ズームまでカバーしている。

記録媒体は内蔵メモリーが64GBで、SDXC/SDHC/SDメモリーカードにも対応している。先進的な機能も、Androidスマートフォンなどと連携してビデオカメラを操作できるBluetooth機能、GPS機能やBluetoothヘッドセットへの対応と盛りだくさんだ。バッテリーを含む本体が約370gと軽量なのも好ましい。


高速・高精度なリアルタイム2D/3D変換を実現

本機の最新のハイスピードプロセッサー「FALCONBRID」を搭載し、2D/3Dリアルタイム変換機能を実現している。ビクターの業務用3Dイメージプロセッサー「IF-2D3D1」に搭載されたリアルタイム2D/3D変換用ICチップを、本機用にアルゴリズムを最適化して乗せている。2D映像から擬似的に左右個別のフレームを生成し、フルハイビジョン3D映像に変換できる。

変換した3D映像は、本機が搭載する裸眼3D表示対応の3.5型・92万画素液晶モニターで楽しんだり、HDMIで3Dテレビに接続して楽しむことも可能。テレビと接続した際はHDMI接続機器間で通信を行い、基本的に自動処理によってテレビ側が表示できる3D映像の最大スペックを判別。1,920×1,080画素のフレームパッキングか720pのフレームパッキング、あるいはサイドバイサイドの方式から選び、自動表示する。なお、撮影した動画自体はAVCHDによる2Dの映像なので、素材の編集やディスク保存も従来どおりに行えて安心だ。

2D/3D表示は本体の上部に配置したボタンで切り替えられる

液晶モニターはタッチオペレーションに対応。撮影した素材はサムネール一覧から選択できる


視差バリア方式による裸眼3D表示に対応

3D表示の効果はメニューから調整できる
2D/3Dされた映像を視聴してみたが、自然な奥行き感が好印象だ。3D変換をしても画面がトリミングされず、もとの構図が保たれるのも嬉しい。3D表示の効果は「0/±1/±2」の5段階で調整できる。肝心の画質だが、高精細な3D変換処理を高速に、映像を破綻させることなく実現していることに驚かされた。本体の液晶モニターも画面が大きく見やすい。なお、裸眼3D表示はGS-TD1と同じ視差バリア方式を採用している。さらにタッチパネル操作にも対応しているので、ビデオカメラ初心者でも直感的に操作できると思う。パネルの外側もオーロラブラックが高品位D、フルフラットタイプのデザインが美しい。

HDMIから3Dテレビに出力して、2D/3D変換した動画・写真を楽しむこともできる


静止画撮影も高画質、シャッターレスポンスが機敏なのもポイントが高い

静止画の実写テストでは、暗い場所での画像が滑らかでノイズが少なく、手ぶれ補正は大きくゆっくりとした揺れにもしっかりと対応してくれる。静止画の画素数は最大で1,180万画素相当だが、超解像技術を搭載したこともあり、実際に撮影してみるとハイクラスのデジタルカメラで撮影した静止画に迫る高いクオリティを実感できた。

車のハイビームがレンズに直接当たっている。虹彩絞りを採用しているので、光芒が美しい。強い逆光を受けていても画面全体はクリアに撮れている。(※以下作例写真についてはWeb掲載のためリサイズしています)

夜の不思議で非現実的な雰囲気の一枚。周辺光量がやや落ちているが、これを利用してレトロな雰囲気となった。カラーネガプリントの写真を思わせる面白い色調に仕上がった。


夜の駅のホーム。このような照明で照らされていれば、十分すぎる明るさで写す事ができる。望遠側でも手ぶれ補正がよく働いている。

下町から見た夕焼けは建物だらけではあるが、やはりドラマチックだ。ほどよい露出と色合いで雰囲気よく写ったと思う。ゴーストやフレアーが少なく好ましいコントラストだ。


レンズの画角が広角側で29.5mm相当となったため、スカイツリーもワンカットで写す事ができた。

10倍ズームだが、動画撮影ではダイナミックズームで画質を損なわず15倍まで伸ばす事ができる。作例は静止画で10倍ズームの時。
広角レンズは狭い場所で撮る時も、雄大な景色を広々と撮りたい時にも非常に役に立った。画質は歪みと滲みが少なく、逆光の環境下でも安心して撮影することができる。また静止画撮影ではシャッターのレスポンスが良いことにも驚かされた。ストレスを感じることなく、シャッターを連続して小気味よく切れる。撮影者に向かって動いてくる被写体に対する、オートフォーカスの追随精度が高いのも好印象。静止画撮影も心地よく行えるビデオカメラである。

顔検出を応用した諸機能も充実。自動で被写体の笑顔を検出して静止画撮影時にシャッターを切る「スマイルショット」も搭載

高音質再生を可能にするK2テクノロジーも搭載


【SPEC】●動画記録方式:AVCHD規格準拠 MPEG-4 AVC/H.264 ●音声:Dolby Digital 2ch ●撮像素子:1/2.3型 高感度B.S.I. CMOSセンサー 1082万画素 ●レンズ:光学10倍 JVC HDレンズ GT ●最低被写体照度:2ルクス ●液晶モニター:3.5型(92万ドット) クリアブライトIII ●記録メディア:64GB 内蔵メモリー、SDXC/SDHC/SDカード ●消費電力:約4.6W(3D表示時)、4.1W(2D表示時) ●外形寸法:54W×62H×121Dmm(バッテリー含む) ●質量:約370(バッテリー含む) ●問い合わせ先:ビクターお客様ご相談センター TEL/0120-2828-17


◆プロフィール 川村容一
写真家。広告代理店写真部、編集プロダクション写真部を経て独立。デジタルカメラでの取材ものから大判フィルムを使った商品撮影が主な仕事。モノクロの処理は自宅暗室で行っている。JPS展実行委員会など事業の運営に参加する。写真添削講座講師も務める。25年以上経験の現場のプロ。社団法人日本写真家協会会員。

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