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ベトナム難民としての渡航から発売までを振り返る

数年の捜索で発見、史上初「女性主人公」家庭用ゲームを作った女性開発者【Gadget Gate】

公開日 2022/05/15 14:58 Kiyoshi Tane
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現実社会と同じく、ビデオゲームの世界でも「主人公は男性が当たり前」という時代は長らく続いていた。まして、その開発を手がけたのが本当の女性という例は極めて稀なことになる。

そうした状況のなか「家庭用ゲームとして初の女性主人公」として認定されたゲームの女性開発者が数年にわたり捜索され、ようやく見つかったと報じられている。

ビデオゲーム史研究者のケイト・ウィラート氏と ケビン・バンチ氏は、何年も前から家庭用ゲーム機で初の「人間の女性が主人公」のビデオゲーム『Wabbit』に関わっていたとして、「ヴァン・トラン(Van Tran)」なるベトナム出身の女性プログラマーを探していたという。



Wabbitは1982年にAtari 2600向けに発売されたゲームで、主人公は「ビリー・スー(Billie Sue)」という少女だ。ゲーム内容はBillie Sueを操作して、飢えたウサギから畑のニンジンを守るシューティングである。昔ながらの『スペースインベーダー』などのスタイルを踏襲しているが、主人公は人間らしく、畑やニンジンも記号的ではなく地に足の付いた描写がされている。

「Atari 2600」

ウィラート氏とバンチ氏は、ゲームのクレジットにあった名前を手がかりに、Wabbitの開発会社Apolloのあった米テキサス州全域に手紙を送り、インターネットやあらゆる類の記録を探していたとのことだ。そして、ようやく突き止めたのである。

実はヴァン・トランという人物は、すでに存在しておらず、結婚して「ヴァン・マイ」に改名していたことが判明。ビデオゲームの歴史を保存する非営利団体「The Video Game History Foundation(VGHF)」のコミュニティが設けていた、専用Discordチャンネルの報告にて明らかになった。1983年後半にApolloが倒産したとき、元従業員が印税をもらうために裁判所に申請した記録が残っており、そこから判明したそうだ。

ベトナム戦争末期に難民として米国に渡航したマイ氏は、地元の新聞に掲載された求人広告を見て、Apolloに採用されたという。それまでゲームを作ったことはなかったが、小さな女の子を客層としたコンセプトを売り込み、企画が通ったそうだ。制作期間は4 - 6カ月で、プログラムからアニメーションまで手がけたそうだが、ゲームの発売後すぐに会社が倒産してしまったと振り返っている。

Apolloの倒産後、マイ氏はマイクロ・グラフィック・イメージ(『スペランカー』の開発元)の元同僚と仕事をするようになったとのこと。そしてアーケードゲーム『Solar Fox』のAtari 5200への移植に数ヶ月関わった後、ビデオゲーム業界を去り、短いながらもインパクトのある足跡を残した。



上述のウィラート氏は「ゲームの歴史から消された女性について書くこと」は、「一般的に歴史から消された女性について書くことが重要なのと同じ」だと語っている。特にマイ氏の場合は、単にプログラミングだけでなく着想からアニメーションまで手がけて「女の子向け」を明確に意識した史上初の例として、ビデオゲーム史における意義は大きそうだ。

Source: VGHF
via: Polygon



※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」を近日中にローンチ予定です。本稿は、そのプレバージョンの記事として掲載しています。

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