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夢やイメージの映像化も可能に?

ATR、“脳カメラ"技術を開発 − 見ている映像を脳活動から再構成

公開日 2008/12/11 17:36 Phile-web編集部
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(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報研究所・神経情報学研究室の神谷之康室長らのグループは、情報通信研究機構と共同で、人間が見ている映像を、その人間の脳活動から再構成することに成功した。

Neuron誌の表紙にも採用される

このような試みは以前から存在したが、従来の方法では、MRI装置を用い、脳のどの部位が活動しているかを計測していた。また、あらかじめ画像の種類や運動タイプなどを脳活動と紐づける必要があり、すべての画像や運動タイプを学習することは原理的に不可能。

これに対し今回の方法では、画像全体をそのまま扱うのではなく、細かい単位画像要素の組み合わせとして表現し、その個々の単位要素がとる状態を脳活動から予測する。このため、画像全体のパターンを学習させるのに比べ、はるかに少ないデータ数で識別プログラムを学習させることができる。

実際の再構成では、1m離れた距離で1.7cm程度の大きさを持つピクセルを解像度の基本単位とし、縦横に1×2、2×1、2×2ピクセルを組み合わせた異なる解像度の画像要素を用いた。それぞれの解像度での予測値を多重に組み合わせることで誤差を抑えた。

実験では、脳活動パターンの学習に用いていない幾何学図形やアルファベットの形の再構成に成功したほか、1億通り以上の候補の中から正しい画像を同定できることが分かった。また、2秒に1枚の動画として再構成することにも成功したという。

ATRでは、同じ手法を用いて、イメージした映像や夢で見ている映像なども、画像として客観的に取り出すことができる可能性がある、としている。

本技術の応用範囲は広そうだ。たとえば小型のストレージを組み合わせ、外出先や旅行先の体験を記録したり、夢日記を記録して自身の精神状況を客観的に把握したりすることもできるかもしれない。また、思い浮かべた文字で会話ができるようになれば、「思念チャット」のような使い方もできそうだ。発話機能を失った方のコミュニケーション手段としても有益だろう。

今回の研究成果は、Neuron誌(2008年12月11日発行)で紹介され、表紙デザインにも採用されるという。

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