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コペック/トップウイングも新モデル発表

<ヘッドフォン祭>STAXの新フラグシップ「SR-X9000」は固定電極のブレークスルーが要に

公開日 2021/09/19 19:21 ファイルウェブ編集部
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本日9月19日、「秋のヘッドフォン祭2021 ONLINE」がファイルウェブYouTubeチャンネルにて生配信。さまざまなメーカーの新製品が発表された。本項ではSTAX、コペックジャパン、TOP WING Cybersound Groupのコーナーで紹介された内容をレポートする。

STAX

STAXは新フラグシップとなる静電型イヤースピーカー「SR-X9000」を紹介した。発売は10月8日、価格は693,000円(税込)。

「SR-X9000」

商品企画の段階から「新しいフラグシップを」という考えのもと開発が進められたというモデルで、「SR-009S」をどう超えるかを検討した末、固定電極に金属メッシュを採用するに至ったという。金属メッシュは空気の抵抗が少なく、音の反射の影響を受けにくいという特性があり、イヤースピーカーの電極として理想的であり、「SR-X」に初めて搭載された。1993年には金属メッシュを大型化することで、よりハイエンドな音を狙った「SR-Ω」も登場している。

しかし、金属メッシュを大きくすると強度が不足し、そのままでは再生音に悪い影響が出るため、メッシュ表面に補強を施す必要があったが、これがすべて手作業になる。熟練の技術者でも時間がかかってしまうこともあり、製造を諦めるしかなかった。

現代になり、「SR-009」「SR-009S」という新しい世代のフラグシップを開発するなかで、固定電極に熱拡散結合の技術を用いた。この技術がブレークスルーとなり、大型の金属メッシュを用いた「SR-X9000」の開発に取り組めたという。

固定電極は金属メッシュを組み合わせた4層構造

外観は「SR-Ω」に着想を得たもの。ガードメッシュは支柱により浮かせるようなデザインだが、これを平行にとりつけると再生音が濁ってしまうため、前後の高さを変えて傾きをつけることでアコースティックな特性を上げる「チルト・ガードメッシュ構造」にするなど、改良が加えられている。また、前モデルは一部にプラスチックが使用されていたが、今回パーツはすべてアルミないしステンレスで制作されている。

ガードメッシュは角度をつけた構造に

野村ケンジ氏は「また買わなければいけない、聴かなければよかった」とそのサウンドを高く評価。「歪がゼロといいたくなるほどなく、電気信号がそのまま音になっている感覚。ニュートラルという表現がこれほど合うものはない」と、同社の技術力に感嘆した様子を見せた。

また、「アンプはT8000との組み合わせが想定されているかと思うが、真空管ドライバーや、下位グレードのアンプとの組み合わせも楽しいのではないか」とコメントした。

コペックジャパン

コペックジャパンは、新しく国内代理店業務をスタートしたFIDUE(フィドゥー)ブランドのイヤホン「GEM4」を紹介した。価格は59,900円。

「GEM4」

同社が扱うCayinブランドとFidueの代表が親しく、その関係で取り扱いを開始したという。Fidueのブランド名はそれぞれ英単語の頭文字で構成されており、FはFidelity、IがInspire、DがDurable、UがUnique、EがEnjoyableから取られたものだとしている。

独自のBAドライバー4基を搭載。同社は「BAのみでは低域が出ないという印象があるかもしれないが、ダンパーレス設計と、完全密閉型だが独自の空気の流れを作るデザインで、余計な共振を抑え、パワフルな低音を実現している」と説明する。

筐体素材には樹脂を採用。イヤーピースはノーマルタイプのほか、低域を強めたい際に推奨するタイプの2種類を用意している。

野村ケンジ氏はその場で試聴を行い、「わざとBAらしい音を出すようなチューニングではなく、ナチュラルなサウンドキャラクター。男性・女性ボーカルがはっきり伝わってくる。特に中域のニュートラルな音色とバランスが保たれていて、いろんなジャンルの音楽が楽しく聴ける汎用性が高い音ではないか」とコメントした。

Cayinブランドからは今後発売予定の製品として、ポータブルジャンルから「RU6」「N8ii」、据え置き機として「MT35MK2 PLUS Bluetooth」「HA-3A」がアナウンスされた。

「MT35MK2 PLUS Bluetooth」

RU6はディスクリートR-2R DACを搭載。入力はUSB-Cに対応、出力は4.4mmバランスと3.5mmを搭載した、小型ながら音質に特化したモデルだという。発売は2022年を予定。価格は「できる限りお買い求めやすいお値段」を目指すとしている。

「MT35MK2 PLUS Bluetooth」は2021年11月〜12月の発売を予定する真空管式プリメインアンプ。その名の通りBluetooth入力に対応しており、コーデックはLDAC、UAT、AAC、SBCをサポート。DACチップにはES9018K2M SABRE32を搭載する。価格については既存モデルでラインナップ9万〜40万の間を予定しているとのこと。

TOP WING Cybersound Group

iFi audioブランドから発表されたばかりの、新シリーズとして展開する“GOシリーズ”のBluetoothレシーバー「GO blu」が登場。チップセットにQualcomm「QCC5100シリーズ」を搭載し、現在の主要コーデックすべてに対応すること、そしてマッチ箱やZIPPOライター相当のサイズ感を特徴としている。

iFi audio「GO blu」

4.4mmバランス接続に対応。充電兼用のUSB-C接続によって96kHz/24bitのDACとしても機能する。ワンチップに機能をすべて任せるのではなく、シーラスロジック製DACチップを採用した設計など、Bluetooth再生でも音質を追求したという。aptX Losslessについては現状で対応は不明だが、アップデートでの対応の可能性はあるとのこと。10月下旬頃発売予定で、価格は3万円を切れるか、という設定になるという。

また新フラグシップとして「Pro iDSD Signature」および「Pro iCAN Signature」を発表。それぞれ「Pro iDSD」「Pro iCAN」のモデルチェンジという位置づけとなる。発売は10月下旬〜11月を予定。価格はPro iDSD Signatureが462,000円、Pro iCAN Signatureが308,000円。

「Pro iDSD Signature」と「Pro iCAN Signature」

機能面ではともに従来機を踏襲しながら、内部のコンデンサー類を新たにし、電源周りを強化、音質面でのブラッシュアップが図られている。追加機能として、Pro iCAN Signatureには4.4mm出力を搭載。また電源にはiPower+に代わり、iPower Eliteが付属する。リモコンもアップデートされた。

野村ケンジ氏はその音質について、「贅沢品、という音。Pro iDSD Signatureはスピード感が半端ではなく、にじみが一切ない。Pro iCAN Signatureは正確な描写、かつ音楽性を感じさせる。絶妙なバランス」とコメントしている。

Lotooブランドではスティック型USB-DAC「PAW S2」を紹介。USB-DAC「PAW S1」の後継機種として、アナログ/デジタル回路で基板を分けたデザイン、リモートコントロール機能の新搭載など、基板設計と利便性において大きく進化させている。価格は標準パッケージが49,500円、Lightning-USB Cケーブルバンドルパッケージが57,200円。10月下旬の発売を予定する。

Lotoo「PAW S2」

M2TECHブランドからはDACプリ「Young MkIV」が発表された。DACチップは現在入手困難な「AK4497」を採用。旧モデルMkIIIからスペックは踏襲しつつ、I2SのHDMI入力を新搭載している。価格は385,000円。

M2TECH「Young MkIV」

本モデルのサウンドについて野村ケンジ氏は「クリア系のサウンドで、ハイファイシステムを構築するのに使いやすいのではないか」と評価した。

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