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独自のハーフミラー方式を採用

JVCケンウッド、独自の“広視野角・高解像度”ヘッドマウントディスプレイを開発。試作機を体験してきた

2020/10/28 編集部:小野佳希
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JVCケンウッドは、同社初のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発中であることを明かした。独自のハーフミラー方式などによって一般的なHMDよりも高い解像感と広視野角を実現したという同機をいち早く体験することができたのでレポートしたい。

JVCケンウッドが開発中のヘッドマウントディスプレイ(同社社員に装着してもらったところ)

■「スペック値以上に広視野角」なハーフミラー式HMD

今回体験できたのはまだ試作機のため仕様やデザインが変更になる可能性もあるが、解像度が片目2,560×1,440、両眼で5,120×1,440という5K相当のもの。視野角は水平120度、垂直45度で、フレーム周波数は60Hz/72Hz。DisplayPort 1.2 ケーブル2本およびUSB 2.0 ケーブルでPCと接続して使用するスタイルだ。位置トラッキングシステムにはSteamVR Trackingを採用することで汎用性も確保している。

ヘッドマウントディスプレイ

DPケーブルでPCと接続

大きな特徴が、独自のハーフミラー方式を採用したこと。パネルからの映像を、レンズを通さずミラーを介して直接見るため、周辺ボケがなく、画素感のない自然な視野を実現したという。左右視野角は上記のように120度を確保。一般的なHMDでは必要以上に首を振る必要のあった横の映像等も実際に近い動きの範囲で確認可能だとしている。

一般的なレンズ方式に比べてハーフミラー方式はコーナー周辺解像度や色収差で原理上有利だと説明

HMDで一般的なレンズ方式では、レンズを介して映像をのぞき込むため、周辺の解像度が低下するとともに、双眼鏡をのぞいているような視野感になると同社は説明。加えて、低解像度パネルでは画素感が顕著で映像に没入しにくいともし、原理上、画面周辺部の色収差が発生しないミラー方式を採用した理由を語った。

レンズ周辺の解像感などで有利

なお、一般的なHMDでも過去に視野角120度を実現していたものがあるが、今回の開発機は「ハーフミラー方式を採用したことで、スペック値以上に視野角が広く感じられる」(同社スタッフ)と説明する。

また、ハーフミラー方式では前方がシースルーにできる点もメリット。例えば、ドライブシミュレーターなどに利用した場合に、実際のハンドルを握った上でそのハンドルや計器類をシミューレータの映像とともに認識することができる。

シースルーなためハンドルや計器類を認識しやすい。また、視覚の前方斜め下に敢えて隙間を設けることでも周囲を認識しやすいようにしている

■実際に体験してみた

今回の取材では、フライトシミュレーターでのヘリコプターの運転と、ドライブシミュレーターでの車の運転という2つのコンテンツを体験。なるほど、たしかに視野角はスペック値以上に広く感じられた。上下左右に視線を振っても映像の追従がスムーズで快適だ。

上から見たところ

ドライブシミュレーターでは、中央分離帯越しに対向車がすれ違っていく様子や、街の景色が周りを流れていく様子がよりリアルに感じられる。これも視野角の広さの恩恵だろう。

また、解像感の高さも特筆モノ。道路標識、街並みの看板やビルの文字なども思っている以上にクッキリとしっかり認識できる。

外形寸法は280×140×135mm、質量が595g(バンド/ケーブル部除く)。見た目はやや大ぶりだが、実際に装着してみるとそこまで重たさは感じなかった。

■業務用途を想定して開発中

同社では、プロジェクターを使ったドライブシミュレーターやフライトシミュレーターなどを展開しているが、「そうしたお客様から、『もっとコンパクトなシステムは構築できないか』と相談を受けたことからHMDの開発に着手した」とのこと。

そのため、今回の開発品もまずはそうした業務用途を想定。シミュレーター、インテリアや建築でのデザインレビュー、医療や重機操作の遠隔操作、建築や都市デザインにおける設計支援などといった用途を想定して開発を進めている。クリアな高解像と広視野角を両立させ、オプティカルシースルーによるリアルな操作感を実現することで、既存のレンズ式HMDの課題を克服するとした。

業務用途を想定して開発中

実際に体験してみて、アミューズメント施設に導入されても面白いのではないかとも記者は感じた。一般的なHMDでのコンテンツではハンドルや操縦桿を持った手がCGなどで表現されることもあるが、本機であれば現実世界の自分の手をそのまま認識できるので没入感も高まりそうだ。戦闘機や戦車、ロボットを操縦して戦うゲームなどで楽しめると最高そうなのだがどうだろうか。

現時点ではまだ開発中とのことで、商品化の時期や価格なども未定。「装着感なども改良を加えていきたい」(スタッフ)とのことで、とにかく今後が楽しみな製品だ。

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