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コンシェルジュ機能付き鏡やIoTドアも

JDI、BtoC参入。裸眼“2.5次元”ディスプレイやHUD内蔵スマートヘルメットなど発表

公開日 2018/08/01 14:11 編集部:小野佳希
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(株)ジャパンディスプレイ(JDI)は、戦略発表会を開催。BtoC事業への参入を表明し、3Dメガネを用いずに立体感のある次世代3D動画を視聴可能な5.5型ライトフィールドディスプレイを用いた「LF-MIC」などの新製品を発表した。


■初のコンシューマー向け製品開発を表明

発表された新製品は、裸眼3D視聴を実現する「5.5型ライトフィールドディスプレイ」、各種情報を確認しながらオートバイで走行できる「HUD搭載スマートヘルメット」、音声操作で鏡の一部が瞬時にディスプレイに変化する「コンシェルジュ機能付きミラー」、鏡がディスプレイに変化する世界初のIoTフルハイトドア「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」の4点。あわせて、カーレースチームDANDELION RACINGと連携し、「高透過透明カラーディスプレイ」をヘルメットに装着した走行実験を世界で始めて成功させたことも発表した。

DANDELION RACING協力の下で走行実験に使用したヘルメット

5.5型ライトフィールドディスプレイはNHKメディアテクノロジーとの、フルハイトミラオスは神谷コーポレーション湘南との共同開発となる。5.5型ライトフィールドディスプレイを用い、好きなキャラクターやアイドルをダウンロードして裸眼3D表示する「LF-MIC」を2019年に発売する予定だとした。

なお、各製品ともJDIブランドで直接販売するのか、他社ブランドでのBtoBtoC展開となるのかなどの詳細は未定。

ライトフィールドディスプレイはコンセプト名を「LF-MIC」としており、将来的に音声操作対応も検討。スマートスピーカーなどIoT機器に搭載した形での製品化を想定している。具体的な形は未定だが、上記のように2019年に発売を見込んでいる。

LF-MICの製品化イメージ

静止画だけでなく動画にも対応。発表会でプレゼンテーションを行った同社常務執行役員でチーフマーケティングオフィサーの伊藤嘉明氏は「美術品のバーチャル展示にも向いている。サザビーなどのオークションで欧州に出向かなくてもよくなる(笑)」とアピール。「3Dでも2Dでもない、新感覚の2.5次元とあえて言いたい」とした。

ジャパンディスプレイ 伊藤CMO

前述のようにアニメキャラクターやアイドルのデータを後からダウンロードして追加することも可能にし、そのデータ販売などによる、いわゆるリカーリングビジネスも視野に入れている。「2次元の絵を裸眼3D対応化させるなどの作業を請け負うといったこともできる」(同社スタッフ)という。

「HUD搭載スマートヘルメット」のコンセプト名は「スパルタ」。車載ヘッドアップディスプレイに採用されているユニットを小型化することで、オートバイで走行しながら視界の中に、速度メーターやGPS情報、着信・メールなどの情報を投影する。

HUD搭載スマートヘルメット。コンセプト名の「スパルタ」は300人で数百万人を相手に戦ったというスパルタ王レオニダスに由来しているという

モータースポーツではスピードメーターなどの確認時に視線を移す必要があるが、本製品によって走行時の視線を維持した状態で情報を確認することが可能になり、安全性の向上が期待できると同社は説明。

モータースポーツだけでなく、サバイバルゲーム、建設現場、警備など、さまざまな用途への展開も視野に入れている。また、視界にさまざまな情報を表示させることで、ウィンタースポーツやスカイダイビング、自転車などで、これまでにはない新しい楽しみ方や、新たな体験を生み出していくとした。

「コンシェルジュ機能付きミラー」には、内蔵カメラで撮影した映像を数秒遅れで鏡の一部に表示する「遅れ鏡」機能も搭載。確認しづらい後ろ姿のスタイリングをチェックすることができるようにした。このことからコンセプト名を「おくれ鏡」としている。内蔵カメラで撮影した画像はスマートフォンなどへ転送することも可能。

ふだんは全面を鏡の状態にしておき、必要に応じて一部に様々な情報を表示可能

鏡がディスプレイに切り替わる技術は、JDIのコア技術を適応した液晶スイッチをディスプレイに備えることで実現。一般のハーフミラーを備える鏡機能付きディスプレイと比較して、より明るく、コントラスト比の高い映像を、瞬時に表示することを可能にしたという。

同社では、遅れ鏡で身支度を整えやすくしたり、一緒に天気予報やニュースをチェックできるようにする本製品を「朝の忙しさにゆとりをもたらすミラー」だとアピールしている。



神谷コーポレーション湘南とのコラボレーションによるドア「フルハイトミラオス」は、上記コンシェルジュ機能付きミラーをより大型化させてドアに応用したもの。IoT家電との連携やAIの搭載といったこれまでのドアにはない機能を追加して、2019年度の一般販売を予定している。

フルハイトミラオス

■経営理念・体制を刷新。新生DJIでイノベーション創出を宣言

伊藤CMOは、「JDIは日本を代表する企業の集合体で、世界に誇る技術を持っている。しかし、本来の力を出し切れておらず、納得のいく利益を出せていない」と、同社が置かれている現在の状況にコメント。「第二の創業、新しいJDIのために経営理念を刷新する」とし、これまでのようにBtoBだけでなく、新たにBtoC分野にも打って出ることにしたと語った。

ソニーやパナソニック、東芝を始めとする国内メーカー各社から様々なコア技術を継承したが充分な利益につなげられていないと説明。新体制で様々な改革を行っていることを紹介した

また、「我々は中小型パネルメーカーとしては世界トップシェア。だが、これからは『見る』だけではなく、五感すべてにフォーカスしていくべきなのではないかと考えた。五感に訴えることで、ディスプレイはインターフェースに変わる」と、ディスプレイを中心にした “コト軸” もビジネスに取り入れていく考えを示した。

なお、BtoCおよびリカーリングビジネスに加え、同社が持つ技術によって社会的課題を解決することもビジネス領域にすると宣言。個人情報保護機能や通信インフラ連携機能を備えた “名札” で高齢者や子供の外出時の安全性を高めるなどのソリューション創出を視野に入れ活動していくという。

所有する技術をさらに広い領域で活用していく考えを示した

そして、「今回、発表会で展示したコンセプトモデルは、我々が3ヶ月ちょっとで用意したもの。これらを手がけていくのが新生JDIだ」とコメント。「イノベーションを起こすときには、『前例がない』『そんなことできるのか』と必ず言われる。だが、できるできないではない。やるかやらないかだ。私達は『やる』を選択する」と決意表明して発表会を締めくくった。

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