HOME > ニュース > 日テレの最新テレビ技術展「デジテク2016」。4K/HDR映像のPQ/HLG比較も

VRピアノ演奏やドローンの360度リアルタイム視聴も

日テレの最新テレビ技術展「デジテク2016」。4K/HDR映像のPQ/HLG比較も

2016/03/09 編集部:杉浦 みな子
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
日本テレビ放送網(株)は、東京・汐留の日本テレビタワーで技術展示会「デジテク2016」を9日まで開催している。HDR映像におけるHLG方式とPQ方式の比較デモや、8K収録された番組「笑点」の映像など、日テレが手掛ける最新のデジタル放送サービス・技術展示を行っている。本記事では、4K/HDR関連展示やハイブリッドキャスト情報、VR、ドローン等の展示についてレポートする。

■4K/HDR関連展示も盛ん。PQ方式とHLG方式の比較も

会場内での目玉は、日テレ初の8K収録番組「8K笑点」(詳細はこちら)だったが、それと同じくらい大々的に行われていたのが、HDR(ハイダイナミックレンジ)に関連する展示だった。「HDRってなに?」という基本的な部分の紹介から、HDRライブ映像の制作デモ、さらにHDR映像における2種類の映像信号特性「PQ(Perceptual Quantizer)」と「HLG(Hybrid Log Gamma)」を比較できるデモも行われていた。

HDR展示コーナーの様子

HDRについての紹介

会場では、キヤノン「EOS C500」を使ってRAWまたはS-Log3方式で収録した各種映像を、グレーディング処理でPQ方式とHLG方式それぞれに変換したものを再生。「4K/SDR映像/γ=2.4」「HLG形式の4K/HDR映像/1,000nits」「PQ形式の4K/HDR映像/1,000nits」「PQ形式の4K/HDR映像/200nits」「PQ形式の2K/HDR映像/5,000nits」という5種類の映像表示が行われており、それぞれを見比べることができた。

左がHLG(1,000nits)で、右がPQ(1,000nits)

左が4K映像のHDR/200nitsで、一番右は2K映像のHDR/5,000nits映像

なお、PQとHLGの違いは、簡単に言うと、HDR映像における輝度値のガンマカーブの扱い方が異なることだ。

PQは人間の視覚特性に基づき、最大10,000cd/m2までの輝度を絶対値で規定するガンマカーブ(PQカーブ)を用いる。もともとドルビーが検証し、人間が映像を自然で好ましいと感じるという0.005Nits〜10,000Nitsのレンジを、PQカーブを適用して10bitや12bitの諧調に収める。映像をグレーディングする際に、このPQカーブ適用作業を行う形となる。映画など作り込んだ映像コンテンツにおける活用が見込まれており、これがベースの一つになっている標準方式が、既にUltra HD Blu-rayにおける標準HDR収録方式(HDR10)として制定されている。

PQの特性。最大10,000nitsまで表示している

一方のHLGは、従来のSDRと同じように輝度値を相対的に扱う考え方。このHLG方式による輝度をガンマカーブで表すと、従来のRec.709まではSDRと同じカーブを描き、その延長領域にHDRの輝度領域のカーブが加わるような形になる。結果HLG方式では、SDRを下位互換とするようなHDR映像を配信できるようになる。例えば1つのHDR映像ソースから、HDR対応機ではHDR表示、HDR非対応機ではSDR表示するといったように視聴環境にあわせた表示が可能となる。これらの特徴から、放送用途での活用が期待されている。

HLGの特性。最大1,000nitsまで表示している

なお今回の展示会場では、ディスプレイ側のガンマ特性もそれぞれの方式にあわせて調整するなど、映像の差がほとんどなくるように限界まで画質調整を工夫したデモを行っていた。

そのほか、HDRライブ制作では、会場に設けられたステージで行われるモデルのミニファッションショーを、ソニーのHDR対応カメラ「HDC-4300」でS-Log2/3方式にてライブ撮影し、それをリアルタイムでPQ方式処理して会場内のモニターに映し出すというデモを行っていた。

HDRライブ制作のようす

ソニーのHDR対応カメラ「HDC-4300」で撮影


HDRライブ制作について概要


4K画像評価装置「VP4000」の展示も。

左が基準画像で、右が評価画像


4K映像から、直感的な操作でHD切り出しが行えるシステムも
■ハイブリッドキャスト最新情報

ハイブリッドキャスト関連では、最新のハイブリッドキャスト2.0によって、MPEG-DASH方式による4K動画を放送と連動して視聴できる技術展示も実施していた。通常の放送を視聴している際に、ハイブリッドキャストの画面から4K動画再生メニューを選択することで、同時配信しているMPEG-DASH方式の4K動画視聴画面にスムーズに移動できる。

ハイブリッドキャスト2.0による4K動画視聴のデモ


リモコンの赤ボタンを押すと、4K配信動画にスムーズに移行する
通常放送と配信映像をシームレスに行き来することで、通常放送から4K視聴への手軽な入り口を作るイメージだ。回線状況に応じた動的なビットレート制御が可能で、番組の切り替わりや切替制御信号を検知し、4K動画と放送映像を自動的に切り替えることもできる。日テレではハイブリッドキャストの新しい活用方法として、実用化を検討中とのことだ。


ハイブリッドキャスト関連では、日テレのハイブリッドキャスト機能もアピールされていた。ハイブリッドキャストの画面で提示される番組関連情報を、スマホアプリからシームレスに確認できるようになっている
■VRピアノ演奏、ドローンを使ったTHETA Sの360度映像リアルタイム視聴なども

テレビ関連以外でも、会場内ではVR、ドローンなどの展示が盛んに行われていた。なお、記者が会場に訪れた際は残念ながらちょうどドローンのラストランが終わるところで、写真撮影の機会を逃してしまったのだが、リコー「THETA S」を搭載したDJIのドローン「Phantom 3」を会場内に飛行させ、THETA Sで撮影している360度全天球映像を、スマホのChromeブラウザからリアルタイム視聴するというデモを行っていた。

残念ながらデモの様子は撮影できなかったが…こんな感じでドローンとTHETA Sによる360度映像のリアルタイム視聴デモを実施していた


この網の中でドローンを飛ばしていた模様
また、ヤマハとの共同企画として披露されていたのは、VR映像と立体音響によるピアノ演奏視聴システム「テオルミン」。360度映像のVR表示に対応するヘッドマウントディスプレイ「Oculus」を使用した技術で、ピアニストの目線からピアノ演奏をバーチャル体験できるというものだ。ピアノのレッスンツール等としての展開を想定している。

このようにOculusとヘッドホンを装着してピアノの前に座ると、

このように手が出てきて目の前のピアノを弾いてくれる


「テオルミン」の概要
ピアノの前に座ってOculusとヘッドホンを装着すると、目の前にピアニストの手が出てきて、そこにあるピアノを弾いているかのように動き、あわせてヘッドホンからピアノ音が再生される仕組み。Oculusの映像は日テレの技術で、音声はヤマハによる独自技術。この音もただ映像にあわせて鳴っているだけではなく、バイノーラル音声のような360度収録の音声になっている。ピアノの位置と体験者の位置を自動検出して、適正な位置から連動して音声が聴こえるようになっている。

その他、IoTでリビングの家電をシームレスに連携するデモも

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク