有機ELテレビについても言及

「もはやテレビも白物家電」 − パナソニック津賀新社長が就任会見

ファイル・ウェブ編集部
2012年06月28日

パナソニック(株)の新社長、津賀一宏氏
本日、パナソニック(株)の新社長、津賀一宏氏が就任挨拶を行った。

津賀氏は冒頭、「昨日取締役会で承認され、社長に就任した」と正式に報告。社長に就任したことについては「社長就任を発表した2月にも語ったことだが、まさに青天の霹靂。全く十分な準備ができておらず、その意味では素人だ」と率直な言葉を続け、「この時期に社長に就くというのは非常に大きなチャレンジ。苦しみにあえいでいるパナソニックグループを復活させたい」と抱負を述べた。

■収益を上げて「まずは普通の会社に戻す」

津賀氏は2月以降、まずは現状認識をしっかりと行おうと、自身があまり知識を持たない部門を中心に、多くのドメインやBUを訪問したという。そこで痛感したのは「非常に大きな、闘うためのポテンシャルを備えている」ということ。一方で、「高い能力の人材や、技術があるのに、生み出している利益が少ない」、津賀氏流に言い換えると「インプットが多いのにアウトプットが少ない」ことも強く印象に残ったという。

これらの現状を踏まえ、津賀氏は「収益にこだわり、一刻も早く普通の会社に戻ることが大事。結果的に財務面でも極めて厳しい状況にあるのはご承知の通りで、これを改善しないと、世界における地位もどんどん下がるという強い危機意識がある」と強調する。

■「お客様へのお役立ち」という原点に帰る

津賀氏は収益を生み出すための大原則として「原点に帰り、お客様にフォーカスすること」を掲げる。「パナソニックはこれまで、『人』をキーワードに活動してきた。ここにもう一度立ち返り、ライバルよりもお客様のお役に立てているのかという反省を真摯に行い、お客様価値の提案を徹底的に行うことが必要だ」と言葉を継ぎ、一方でコストを削減するため「お客様価値につながらない無駄を徹底的に省くことも重要」とも述べた。

「お客様価値を徹底追求する」との方針を掲げる

さらに津賀氏は収益強化策について「メーカーの中心である、90に及ぶビジネスユニットの一つ一つを活性化させることに尽きる」とも説明。「グローバルにお客様が見えているBUもたくさんある。レッツノートやタフブックを作っているPC分野や、マニュファクチャリングソリューションズ社などは大変高収益だ。全社がこうなれば、間違いなく生まれ変われる」とした。

組織にも手を入れ、本社機能を改革する。「資本市場に向き合いながら、グループ全体の戦略立案を行い、投資を行う専門集団にする予定」という。詳細は今後正式に発表する見込みだが、新本社組織は今年10月1日にスタートさせる予定だ。

新本社のイメージ。スリム化し機能を絞る

津賀氏はさらに、ユーザー目線を強化するための考え方として「お客様価値の提案、いわゆる『お役立ち』をどうやって発揮していくのかが重要」と強調。そのために津賀氏は、ユーザーが活動する際の「空間」という概念を披露。「住宅空間、非住宅空間、モビリティ、パーソナルという4つの空間があり、その中心がお客様。シンプルだが、これが我々が抱いているイメージだ。そのほか、クラウドをベースにしたBtoBやBtoBのソリューション提案も行っていく」とする。

「お客様価値提案」の方向性として、ユーザーが行動する空間を住宅空間、非住宅空間、モビリティ、パーソナルという4つに分けて説明

津賀氏はさらに、「我々が目指すのは高収益企業。だが、現状ではこういうことを口に出せる状況ではない。まずはその前に普通の会社になりたい」と目標を設定。「1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月というようなスピード感で勝負していきたい」とした。具体的には、まずは最初の3年間の中期計画をまとめようと、既に動き始めているところだという。

社員との関わり方については、「33万人も及ぶ社員とどう向き合っていくか。もちろん私一人では、社員と接する時間には限りがある。たとえば本社を改革する意味は何か、それを分かりやすく伝え、経営幹部と共有する。こういったことを通して、みなさんに分かっていただくしかないかな、と思っている」とした。

■「もはやテレビも白物家電。住宅の中の一要素」

会見後の質疑応答では、記者から数多くの質問が出た。

テレビ事業について津賀氏は、「テレビは売上は大きくても利益は出ないから、ビジネス的に見るとコア事業ではない。一方でお客様への「お役立ち」という観点から見ると、家の中で様々な情報を表示するデバイスとして必要だ」と説明。

さらに津賀氏は言葉を続け、「もはやテレビも白物家電で、住宅の中の一要素であると考えている。一方でディスプレイは、先ほど申し上げた『住宅空間』『非住宅空間』『モビリティ』『パーソナル』のすべての空間で必要になる。この意味で、テレビとディスプレイは分けて考えるべきだ」とした。

また、今後のテレビ事業を縮小均衡という方針で進めるのかとたずねられた津賀氏は、「収益優先で行くかという意味ならイエスだ。まずは収益を白字化、黒字化する必要がある。今後はテレビを使って、お客様にとってどんな『お役立ち』を提案できるかを考えなければならない」と述べた。

■有機ELテレビは「まずは量産にこぎつけたい」

先日パナソニックは、ソニーとテレビや大型ディスプレイ用有機ELパネルの共同開発を行うと発表した。これについても津賀氏は自身の言葉で説明した。

「有機ELの中でも、印刷技術でディスプレイを作ることに大きな関心を寄せている。小さなサイズで可能性が見えてきたので、これを大型のものに応用していく。現在は量産化をにらんだ検証を行っている段階だ」と現状を語り、「ディスプレイデバイスにとっての重要な要件は、一つは映像がキレイであること。もう一つは大きかったり曲げられたりするなどの付加価値。こういった進化に対応できる技術をすべて自前で揃えることはできないので、今回共同でやらせていただくことになった」と経緯を説明した。

一方、有機ELテレビの市場性については、「テレビである限り、価格を抜きにしては考えられない。ただし、今のテレビの価格に近いところまで持っていくのは相当時間がかかるので、最初は『価格は合わないがまずは量産できる』というところにこぎ着けたい。それが2014年になるのか、2015年になるかは何とも言えない」と、価格がネックであることを強調した。

「いまの技術で有機ELテレビを生産すると、目の玉が飛び出るようなものになるだろう」とし、「これでは一部のマニア向けの需要はあるかも知れないが、採算ベースには乗らない。ただし副次効果もあるので、これは出来た暁にはやらせていただくだろう」と製品化についても一部言及した。

■「対韓国」では端末競争になった2006年頃から苦戦

韓国企業に負けた敗因について尋ねられた津賀氏は、「これまで我々は、デジタルの新しいインフラを立ち上げることを一生懸命やってきた。DVDやBDがその代表例だ。同時にデジタル放送もやってきた。新しいインフラごとに深く関わってきた。開発の先頭に立つためには、フォーマットの策定、デバイスの開発なども行わなければならない。これが最終製品にとって重要だった2004年から2005年までは、このフェーズでは決して負けていなかった」と振り返った。

その上で津賀氏は、「だが、そのあとは端末競争になり、端末単体の魅力や価格などが重要になった。こういう環境の中で、端末という商品をしっかり見られなかったのではないか。また、グローバルの価値とずれていた部分もあったと思う」と反省の弁を述べ、「こういった背景があって、2006年〜2011年くらいまで苦戦したのではないか。そこで我々もようやく、ふっと我に返った。今年はかなり状況も改善してきていると認識している」とした。

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