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【スペシャルインタビュー】TDK Life on Recordに聞く − 「ダビング10」開始後の賢いメディア・アーカイブ

2008/03/24
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デジタル放送に課せられていた“一回だけ録画できる”コピーワンスの制限が「ダビング10」へと緩和され、2008年6月2日午前4時より運用が開始される(関連ニュース)。ひとりのレコーダーユーザーとしてダビング10に至るまでの経緯を取材してきた筆者も、今回のダビング10の運用開始をデジタル録画の利便性向上にとっての第一歩として捉えている。

今回はTDK Life on Recordブランドのメディアを展開するイメーション(株)にご協力をいただき、メディアメーカーの見解を交えながら、「ダビング10」の開始後にメディアの活用方法がどのように変わって行くのかについて考えてみたいと思う。

(レポート/折原一也)

■実際にディスクの消費量は拡大するのか?

ダビング10の導入は、ディスクメディアの利便性向上にどのような影響を与えるのだろうか。まず最初に思い浮かぶのは、「ダビング中に停電などのトラブルが生じるとデータが永久に失われてしまう」という、事故の心配から解放される点だ。

イメーション(株)にて、コンシューマ商品のマーケティング業務に携わる渡邉氏も、ダビング10によるメリットの一つとして、このような録画の失敗が少しでも軽減されることを歓迎したいと語る。


イメーション(株)コンシューマ商品 マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション部 光商品技術担当 リーダー 渡邉学氏
「ダビング中の事故によってデータが失われてしまうことはメディアメーカーとしても絶対に避けたい事態です。瞬間停電のように、何が原因かよく分からずに録画が失敗してしまった際にも、メディアメーカー側にクレームが寄せられることもあります。」(渡邉氏)

ダビング10がもたらす恩恵の一つが、ディスク使用時の安心感や信頼感の確保につながる点は、メディアメーカーにとっても大きなメリットとなることだろう。

では、ダビング10によりディスクの使い勝手が高まることで、実際にディスク消費量は拡大するのだろうか。筆者としては「さほど変わらないのではないか?」と考えていたのだが、メディアメーカーの見解はどうなのだろうか。

「ダビング10の施行はメディアの販売量拡大に“すぐに”大きな影響を与えるとは考えておりません。ただ、一方で利便性が向上することで、徐々に数量拡大にもプラスになればと期待もしております。」(渡邉氏)

ダビング10が施行されたところで、すぐさま多くのユーザーがアーカイブの枚数を増やすようになる訳ではないだろう。普通に保存する目的で使用するのであれば、多くは普段の再生用と長期保存用の2枚程度で十分だろうが、それでも、デジタル放送の録画を10個までコピーできることにより、もたらされる期待感は大きなものになると予想される。

現行のコピーワンス。デジタル放送の録画済みコンテンツは、DVDや他機器へムーブ(移動)のみ可能。アナログ接続でのコピーも不可となる


ダビング10の導入後は、DVDや他機器へ9回までコピー(+1回のムーブ)が可能になる。アナログ接続でのコピーも制限付きながら可能

■デジタル録画のライフスタイルが広がるのは確かだ

それでは、ダビング10が開始されることによって、私たちのデジタル録画のライフスタイルはどのように変化していくのだろうか。イメーションの渡邉氏とともに、具体的なケースについて意見を交換して行くうちに、ダビング10のスタートにより、これまでにはできなかった様々なディスクの使い方が広がっていくことが見えてきた。そのいくつかを例に挙げてみよう。

例えばVHSビデオの時代に、学校や職場などで録画したテープを仲間内で貸し借りしていた頃のように、今後はデジタル放送をディスクに録画して、テープ感覚で使うことができるようになる。


ダビング10で記録した番組の代表的な出力先とその制御方法を示した図
出張先に携行するポータブルDVDや寝室のDVDプレーヤー、カーナビのDVDプレーヤーで楽しむためのディスクをつくることもできるようになる。車内でディスクを取り扱う際にはキズやヨゴレの心配も大きく、これまでは気軽に使いづらかったが、複数のコピーを持てることによりその心配も軽減されるだろう。小さな子供がいる家庭でも、気軽にDVDなどが使えるようになるという利便性もここで生まれてくる。

あるいは、例えば北京五輪のようなスポーツ中継のイベントを録画する際にも録画の楽しみ方が広がるのではないだろうか。例えばマラソン競技の録画には、画質を落として全編を収録する「完全収録版」と、10分程度に収めた「ダイジェスト版」を、別々にまとめてアーカイブする楽しみ方も復活する。

また、ヘビーな録画ファンである筆者としては、保存用メディアはハイビジョンで残せるBDが中心であるため、最近ではDVDプレーヤーが活躍する場面はほとんどなかったが、ダビング10により、デジタル放送をBDにダビングしても元データが残るのであれば、DVD対応機器も再び活用できると期待している。またDVD-RWやDVD-RAMなど書換型のDVDが活躍する機会も増えるだろう。

このようにダビング10によるデジタル録画の活躍シーンを具体的に考えてみると、単純に10枚のコピーが残せるという以外にも、様々なかたちでデジタルレコーダーの使い方が広がりをみせる。こうして見てみると、利便性の向上によりディスクでアーカイブする頻度も高まるだろうとする、渡邉氏の見解にも納得させられる。


■ダビング10開始後も「CPRM対応メディア」を使えば安心してデジタル録画が楽しめる

ダビング10を使いこなすためには、実際にどのような録画機やメディアを使えば良いのだろうか。メディアの場合は、従来からのデジタル放送の録画と同様にCPRM対応が必須となるが、ダビング10のために新たな規格が必要になることはない。ちなみにCPRM(Content Protection for Recordable Media)とはDVDなどに採用されている、記録メディア向けの著作権保護技術であり“1回だけ録画可能”な番組を録画した後に、メディアから他の機器やメディアへのコピーを防ぐための著作権保護技術である。イメーションの渡邉氏も「ダビング10ではハード側でのアップデート対応は求められますが、メディアは今までのCPRM対応の製品がそのままダビング10開始後もお使いいただけます」と説明する。

この春に発売されるTDK Life on Recordの新しい録画用DVD製品のラインアップは、全アイテムがCPRM対応となっている(関連ニュース)。


TDK Life on Recordの録画用DVD-R新製品

録画用DVD-RW

録画用DVD-RAM
パッケージのデザインに注目していくと、従来記載されていた「一回だけ録画可能な放送対応」という表記が削除されている。渡邉氏によれば、これはダビング10開始後に予想されるユーザーの混乱を防ぐため、敢えて文言を削ったのだという。また録画用のメディアとしても一目で分かるよう、薄型大画面ディスプレイを配したパッケージデザインも前モデルから受け継いでいる。

この他、「デジタル放送録画対応」の表記を、敢えて目立ちすぎないように配慮した。これは、「デジタル放送録画対応」を強くアピールすることで、製品がアナログ放送には対応していないと誤解されないようにするためだ。

TDK Life on Recordでは今回の新製品を発表するにあたって“CPRM対応”を強く宣言している。ダビング10の開始後もCPRM対応がデジタル録画を楽しむ際の必須条件となることから、TDK Life on Recordのメッセージは、今後ユーザーが安心して使うことのできるディスクを選ぶ際の大きなヒントとなるに違いない。

ハード側については昨年秋あたりから「ダビング10対応予定」を謳ったモデルが登場しており、ファームウェアのアップデートなどによるダビング10対応が行われる見込みだ。パナソニック、ソニーなどは現行機種以外の一部モデルについても、デジタル放送を通じたダウンロードなどによるファームアップ対応を行っている。

ダビング10の登場は、単純にディスクの使用枚数の増加以外にも、様々なかたちでディスクの可能性を今以上に広げてくれるものと期待している。特に筆者の場合は高画質なBDへのアーカイブと、ポータブルで用途の多いDVDプレーヤーなど、外出先にも手軽に持ち運べるDVDの魅力を再認識することができ、今から両方を活用する方向での“BD+DVD体制”を整えていきたいと考えている。ダビング10がもたらすメリットをいかに味わい尽くすことができるか、録画ファンにとっては挑戦しがいのあるテーマになるだろう。


(折原一也)


執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。

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