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米Shure開発担当者に聞く、新カナル型イヤホン「SE210/SE310」の秘密

公開日 2007/03/12 12:27
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ヒビノ(株)から、米Shure(シュア)社のカナル型イヤホン「SE210」が3月15日に、「SE310」が4月下旬に発売される(関連ニュース)。高いブランド力を持つ同社が投入する新製品だけに、エンドユーザーから高い注目を浴びている。

今回、オーディオビジュアルライターの高橋敦氏が、Shureのグローバル・プロダクト・マネジメント担当 プロダクト・スペシャリストであるSean Sullivan(ショーン・サリバン)氏にメールインタビューを敢行。新製品の特徴が明らかになった。

●Shureというブランドについて


Sean Sullivan(ショーン・サリバン)氏
ーーまずはShureというブランドについて、その歴史や現在の業務展開などを簡単に紹介していただけますか? プロフェッショナル機器分野では高い認知度を持つブランドですが、オーディオファンの中には最近知ったという方も多いかもしれませんので。

サリバン氏:Shureには80年以上にわたる音響技術革新の歴史があり、より優れたマイクロホンや音響電子機器を作ろうとする情熱によって、世界標準となる製品を生み出し続けています。Shureは、1925年にラジオ部品の卸売業者としてスタートしました。それ以来事業を拡大し、音響電子機器の世界的なリーディング・カンパニーとなるまでに成長しました。現在Shureでは、マイクロホンやワイヤレス・システムをはじめ、イヤホンやレコード用カートリッジまで、幅広い製品を生産しています。

ーーShureというブランドがオーディオファンに広く知られるきっかけとなったのはEシリーズのイヤホンだったと思います。そのEシリーズのイヤホンは、本来はステージモニター用の製品ですよね。Eシリーズがポータブルプレイヤーユーザーに「発見」され、いまやコンシューマー分野でも高音質イヤホンの代表的な製品として知られています。このような展開を予想・期待していましたか?

サリバン氏:Eシリーズは、当社のパーソナル・モニタ・システムに使用されているイヤホンから誕生しました。パーソナル・モニタ・システムとは、ステージ上のミュージシャンがイヤホンから演奏音を聴くためのシステムです。当社の製品をステージで使用しているミュージシャンの多くが、ステージの外でも、当社のイヤホンをポータブルプレイヤに接続して使っていることがわかりました。このことが発端となり、Eシリーズを一般のお客様にも提供しようと考えました。

当社にとって、Eシリーズを一般のお客様に提供することは、ビジネスの拡大としては自然な流れだったのです。Eシリーズの登場によって、これまでミュージシャンだけが享受していた優れた音質や快適な装着感といったものを、一般のお客様も楽しめるようになりました。

●「SE210/310」はコンシューマー向け?

ーーいよいよ新製品SE210/SE310についてです。まず確認したいのですが、新製品はEシリーズとは異なり、コンシューマーオーディオに向けた製品と考えてよいのでしょうか。例えばケーブルが短めにされていたりすることからそう感じたのですが。ルックスもEシリーズよりスタイリッシュのように思えます。

SE210「ホワイト×グレー」

SE210「ブラック」

SE310「パールホワイト×ブラック」

SE310「ブラック」

サリバン氏:その通りです。当社の高遮音性イヤホンの新しいラインアップは、一般のお客様が使用することを前提に開発されました。多くのお客様から高い評価を得ているEシリーズで培った技術や経験を元に設計されていますが、一般のお客様がより快適に音楽を楽しめるよう新しい特長も備えています。

●「SE210/310」開発の理由と開発におけるポイント

ーー前の質問とも関係するかもしれませんが、Eシリーズへのモデル追加やEシリーズのアップデートではなく、SE210/SE310という新製品を立ち上げることにしたのはなぜですか? 言い換えれば、Shureが新製品で実現しようとしたことは何だったのか、ということです。

サリバン氏:先程の質問でも申し上げましたように、高遮音性イヤホンの新しいラインアップは、Eシリーズにはない新しい特長を備えています。例えば、イヤホン本体は人間工学に基づいて設計され、快適なフィット感を実現しています。本体のデザインも、より洗練されたものになりました。さらに、イヤホン本体のケーブルの長さを短くし、延長ケーブルを付属することで、お好みの長さで使用することができます。音質の面でも、Eシリーズとは異なる音の傾向を持たせています。このように、Eシリーズとの相違点が多いため、Eシリーズとは別の製品ラインとして発表することが理にかなっていると考えました。

●「SE210/310」に搭載されたテクノロジー

ーーでは、今回日本で販売開始されるSE210/SE310を中心に、新製品の詳細についてお伺いしていきたいと思います。新製品おいてもバランスド・アーマチュア方式のドライバを採用していますが、Shureが同方式を選ぶ理由、ダイナミック方式と比較しての利点を改めて教えていただけますか?

サリバン氏:バランスド・アーマチュア型ドライバは、ダイアフラムを小さなピンで振動させる構造になっています。これによって可動部分の質量が非常に軽くなり、音声信号の変化に俊敏に反応することが可能になります。ダイナミック型ドライバと比較したときのバランスド・アーマチュア型の利点としては、小型化が可能なことや、より高い出力が得られること、高域の再現力が高いことなどが挙げられます。

ーーSE310には「チューンド・ベースポート」という技術も採用されています。これはどのような仕組みで、どのような音を実現する技術なのですか?

サリバン氏:『チューンド・ベースポート』とは、ドライバ周辺の空気の流れを改善するためにドライバに開けた穴のことです。空気の流れを良くすることで、ダイアフラムの振動がよりスムーズになります。これによって、ドライバやイヤホン本体のサイズを大きくすることなく、低音を豊かにすることができます。

ーー「チューンド・ベースポート」以外に、SE210とSE310ではここが異なるという点は何かあるでしょうか?

サリバン氏:音の再現力という点ではSE310の方がワンランク上だと言えます。再生周波数帯域も広くなっており、特に低音の再生能力が向上しています。デザインに関しては、SE210はシンプルでスポーティなデザインに、SE310は曲線的な美しいフォルムに仕上がっています。

ーーソフト・フォームという新しいタイプのイヤパッドが付属しますが、僕はこれに大変期待しています。このソフト・フォーム・イヤパッドは単品でも販売される予定で、Eシリーズでも使えるとのことですから、Eシリーズユーザーの方も気になるところだと思います。カナル型イヤホンが本来の音を発揮するには耳にしっかりと装着することが必要ですが、従来はそれに苦労させられていました。ソフト・フォームのイヤパッドではその点が改善されているのでしょうか?

サリバン氏:今回新たに開発したソフト・フォーム・イヤパッドには、当社も自信を持っています。ソフト・フォーム・イヤパッドは、従来の黄色いフォーム・イヤパッドから多くの点で改良が加えられています。まず、イヤパッドの着脱が容易になるように、先端に向かって細くなる形状を採用しました。また、表面にラテックス・コーティングを施すことによって、耐久性が向上しています。ソフト・フォーム・イヤパッドは水洗いすることもできるので、長期間にわたってお使いいただけます。さらに、耳に快適にフィットするよう、S、M、Lの3サイズを用意しました。

ソフト・フォーム・イヤパッドは、SE210とSE310には標準で付属しています。Eシリーズでは、E2cを除くすべてのモデルで使用できます。

イヤパッド「ソフト・フレックス」

「ソフト・フォーム」

「トリプルフランジ」

●ケーブルの長さが変わった理由

ーー実物を見ていないので、写真からの印象ですが、Eシリーズよりケーブルが細身になっているように思えました。前述したケーブルの長さのこともそうですが、ケーブルの取り回しのよさへの配慮でしょうか?

サリバン氏:実際のところ、ケーブルの太さについてはそれほど大きな違いはありません。ケーブルに関する最も大きな違いは、イヤホン本体のケーブルの長さを短くし、延長ケーブルを付属したことです。これにより、イヤホンを使用するシチュエーションに合わせて、ケーブルを好みの長さにすることができます。

●Shure自身が解説する新製品のサウンド

ーーさて、いよいよ音質についてです。SE210/SE310に共通する方向性というのはありますか?

サリバン氏:高遮音性イヤホンの新しいラインアップは、多くのお客様から高い評価を得ているEシリーズで培った技術を元に設計されていますが、その一方で、各モデルが独自の音の傾向を持つように、モデル毎に別々のチューニングが施されています。このことによって、お客様はご自身の音の好みにあったモデルを選択することができます。

ーーSE210/SE310の音質について、それぞれ簡単に紹介していただけますか?

サリバン氏:SE210は、高域特性と感度に優れたバランスド・アーマチュア型ドライバを採用しており、繊細な音までクリアに再生します。SE310はバランスド・アーマチュア型ドライバを使用していることに加えて、チューンド・ベースポートを搭載しています。これにより、再生帯域が広がるとともに、低音の豊かさが向上しています。

ーーEシリーズのユーザーたちもこの新製品には注目しているはずです。価格帯の近い、E2c/E3cとSE210、E4cとSE310という組み合わせで、サウンドの違いをを比較説明していただくことはできますか?

サリバン氏:高遮音性イヤホンの新しいラインアップと既存のEシリーズとの比較で注目していただきたい重要な点は、まったく同じ音の傾向を持つモデルは存在しないということです。とは言うものの、SE210に最も近い音の傾向を持つモデルと言えば、E3cになります。ただし、SE210はE3cに比べて低音が豊かで、“暖かみのある音”になっています。SE310も同様に、最も近い音の傾向を持つモデルはE4cになりますが、SE310の方が低音が豊かになっています。

ーーPhile-webを読んでくれているオーディオファンに何かメッセージをお願いします。

サリバン氏:当社では、音楽の嗜好が人によって異なることと同じくらい、リスニングにおける好みが千差万別であり、高遮音性イヤホンの新しいラインアップが究極のリスニング体験を実現する手助けになると確信しています。このたび、高遮音性イヤホンの新しいラインアップが加わることで、音楽を楽しむための選択肢を今まで以上に幅広くお客様にご提供できることになります。ぜひとも各モデルをご自身で聴き比べていただき、自分の好みにぴったりのモデルを見つけてください。

(インタビュアー:高橋敦)

高橋敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

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