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“どこでもテレビ”日米対決! − Slingboxをロケフリと徹底比較

2006/07/07
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“Slingbox”「SB100-120」¥OPEN(予想実売価格29,800円前後)

本体背面の端子はシンプル。AV入力はビデオ端子・ステレオをまとめた専用ケーブルとS端子を搭載。スルー出力もある
アイ・オー・データ機器から発売された米Sling Media社の“Slingbox”は、外出先から自宅のテレビチューナーやデジタルレコーダーなどの映像を視聴できるAV機器だ(関連ニュース)。同様のコンセプトを持った製品としては、ソニーが既に“ロケーションフリー”を発売しており、どちらも映像のリモート視聴を実現した製品である。今回はSlingboxの特徴を、ライバルのロケーションフリーと比較しながら紹介していこう。
 
接続とセットアップは非常にかんたん

本体のデザインは、シルバーにレッドという色遣いといい、巨大なチョコレートのような形といい、いかにもアメリカの製品といった印象を受ける。機器の配線は、LANケーブルに加えて、テレビを使って視聴する場合にはアンテナケーブル、デジタルレコーダーを中心とした外部機器を組み合わせる場合は外部入力を接続する。まずは、アンテナ接続で使って基本機能をチェックしていこう。初出時に「本製品ではアンテナと外部入力を手軽に切り替えられないので、チューナーと外部機器の併用には注意が必要だ」と表記しましたが、これは誤りでした。実際にはSlingplayerを使って簡単に切り替えが可能です。お詫びして訂正いたします。

今回検証に使った機器。Slingbox(中央)、ロケーションフリー(左)、RD-XS53(下)、AVeL LinkPlyaer(上)

Slingboxのセットアップは、PCにインストールするSlingPlayerを使用する

PCを使った視聴のセットアップは、半自動化されており簡単だ。大まかな流れとしては、同じ家庭内LANに接続してあるPCに視聴ソフト「Sling Player」をインストールして画面を進めるだけ。一般的なuPnP対応ルータを使っていれば自動で設定できる。ソニーのロケーションフリーはDNS設定が必要、本製品は設定不要であると強調されているが、どちらも自動で使えるようになるので、実際の設定手順は大差ない。Slingboxでは「Finder ID」というパスワードのようなもので機器を管理しているため複数台のセットアップをする際の手間が省けるのが強みだ。

自宅も外出先もモバイルでは十分な画質をクリア

Sling Playerを使った視聴は実に簡単だ。初回は家庭内LANを使って起動してみたところ、画面の映りを見ながらチェックできる画質調整を行ったあと、ボタン一つでSlingboxに繋がり、すぐにテレビ画面を視聴できた。配信はWMV形式で、独自のストリーミング技術「SlingStream」により、常時接続速度の監視が行われる。家庭内LANでは、画面の表示を見る限り、500kbps〜2000kbps程度で接続できた(メーカー公称値は50kbps〜3Mbps)。チャンネル変更などの操作は1秒強程度遅れるが、これはロケーションフリーも同様で、製品の仕様上仕方のないものだろう。

セットアップで内蔵チューナーと外部入力かを選択する。切り替えて使えないのは残念

面倒に思われがちな外出先からのアクセス設定だが、一般的なUPnPルータを使えば全自動で検証、設定が完了する

気になる画質だが、モバイル視聴向けの映像となるため、ある程度は細部に圧縮による潰れがあることを覚悟しておいてほしい。スポーツでは観客席など暗めの部分の圧縮が弱い。とは言え、テレビ番組の字幕などは十分見える。同じPCでロケーションフリープレイヤーも使いテストしたが、画質差は、最大レートの出る環境でSlingboxの方が僅かに破綻が少ない程度。Sling BoxはWMV、ロケーションフリーはMPEG-4と形式こそ違うものの画質はほぼ互角だ。

外出先からのアクセスについてはどうだろうか。今回はIEEE 802.11b(約10Mbps)の公衆無線LANスポットを使って、自宅に設置したSlingboxへの接続を行った。接続までの流れは、Slingboxを起動してから選ぶアイコンが異なる程度で自宅視聴とほとんど変わらない。初めての外出先アクセスとなったが、拍子抜けするほどあっさり繋がりテレビを視聴できた。これはロケーションフリーについても同様だが、外出先でも同じように使えることを売りにしている製品だけに、違いを調べるまでもないというのが正直なところだろう。

SlingPlayerを起動して左下の再生ボタンをすぐに映像の受信を開始する。家庭内でも外出先でも同じように使用できる

視聴に使う機器については、ロケーションフリーではPCのほかにPSP(プレイステーション・ポータブル)を使うこともできる。これに大きな魅力を感じる人も多いだろう。一方Slingboxは、メーカーのサイトを確認したところ「SlingPlayer Mobile for Pocket PC」が$29.99ドルで発売されているのを発見した。これを使えばウィルコムのW-ZERO3を始めとするポータブル機器による視聴の道も開けるはずだ。また、Mac OS用のプレーヤーも米国では既に発売しているようだ。

デジタルレコーダーとの連携機能にも使いやすい

Slingboxのマニュアルには、内蔵チューナーを使ったテレビ視聴と同じくらい大きくSTBなどを組み合わせた視聴方法が紹介されている。これはケーブルTVを中心とした米国のお国柄を感じるが、国内ではデジタルレコーダーとの組み合わせで使うのにもちょうど良い。今度は外部入力の設定で使ってみるとしよう。

本製品にはリモコン信号を送出する赤外線出力端子が付属しており、本製品を通してデジタルレコーダーの操作を行える。対応する機種は、東芝のRD-XD91、ソニーRDZ-D977A、日立のDV-DH160Wをはじめとして各メーカーの新しい機種が過不足なく揃う。ちなみに補足しておくと、デジタルレコーダーのリモコン信号は、同じメーカーの製品であれば、リモコンデザインが大きく変わらない限り、新機種・旧機種で互換性がある。このため、主要製品はすべてサポートしていると言って良い。

今回はプリセットにあったRD-XD71(東芝のデジタルレコーダー)の設定を使ってみたところ、同じ東芝の旧機種RD-XS53も無事使うことができた。PCの画面上に表示するリモコンのボタンは英語表記で最初は割り当てに迷ったが、すぐに慣れるだろう。あとは番組表を使った録画予約、録画リストからの再生、早送りや巻き戻しまで問題なく使用できた。

外部のデジタルレコーダーと組み合わせた場合はリモコンでメニュー操作も行える。コントロールモードに切り替えると操作も快適

ちなみに同様の機能はソニーのロケーションフリーにも搭載されており、リモコン信号の対応機種も同じくらい充実している。加えて内蔵チューナーと入力を切り替えて使えるため、こちらの使い方はテレビをイメージすれば分かりやすい。

一方Slingboxは、リモコン操作をする際の「コントロールモード」の存在が面白い。画質は落ちるがリモコン操作時のレスポンスが改善されるのは便利で、外部入力で接続したレコーダー一台ですべてをまかなうという目的がハッキリしている。


アイ・オー・データのAVeL LinkPlayerはフル操作対応のリモコンを使える。これを上手く使えば家庭内LANの動画の再生にも使える
もう一つSlingboxのユニークな点が、販売元であるアイ・オー・データのネットワークメディアプレーヤー“AVeL LinkPlayer”「AV-LS300DW」「AV-LS300D」「AVLP2/DVDシリーズ」を完全にコントロールできる点。もちろんDLNAネットワークに外出先からアクセスできる実用性も十分だ。AVeL LinkPlayerの詳細はこちらに譲るが、この製品だけリモコンデザインがあまりにリアルで笑ってしまった。調べてみたら、AVeL LinkPlayer以外にも、上記に例を挙げたDVDレコーダーの公式対応機種については、実際のリモコンと同じものを画面に表示できるようだ。それぞれのボタンを押すと、本物のリモコンを操作するのとまったく同じように動作する。

モバイルTV+αの面白い選択肢

外出先でテレビを見る、というのは急速に盛り上がりを見せている製品ジャンルの一つ。直接受信するワンセグに対して、本製品やロケーションフリーはネットで再送信する方式を取ることで自宅の機器との連携を行えることが強みである。本製品は完成度を十分に高めてから日本市場に投入されており、ロケーションフリーの好敵手が現れたと言って良いだろう。

(折原一也)

折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。

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