VGP2013SUMMER 金賞受賞メーカー特別インタビュー
提案はそのすべてに向け無限に広がる パナソニック(株)
日本地域コンシューマー マーケティング部門
コンシューマーマーケティングジャパン本部
本部長
原昭一郎氏
リビングテレビをネットに 大画面の価値を訴求
−− 今回VGPの総合金賞を受賞されたプラズマテレビ「ビエラ」VT60シリーズは、テレビの新たな提案性に満ちています。
原 このたびのVT60シリーズは、家族が集まるリビングでテレビを使った新しい体験を提案するもの。「マイホーム画面」は、家族それぞれの嗜好に合わせたコンテンツやアプリをカスタマイズし、簡単にアクセスできます。特に音声を使った検索が想像した以上に好評であり、高齢者向け商品を企画する上でも、重要なヒントになりました。
−− 国内テレビ市場は厳しい状況が続いていますが、大型サイズが拡大するなど期待感が広がっています。
原 商品開発には大きく3つの方向性があると思います。1つは「先端技術」を使った新次元のテレビということで、2Kから4K、8Kへ、プラズマや液晶から有機ELといった新しいデバイスを使った次世代テレビの商品化です。もう1つは、私どもで「スマート」と呼んでいるアプローチです。今ある技術をチューニングし、テレビを使った新しい体験をリーズナブルなコストでご提案していくことです。そしてもう1つは使い方の「視聴スタイル」に関するもの。テレビの使い方はリビングだけでなく、個室や移動空間も含むパーソナルな部分にも広げていくというものです。
「先端技術」ではたとえば私どもも4Kの開発を進めています。今年のCEショーでも4Kの有機ELを参考出品しましたが、規格やコンテンツの整備状況を見ながら、発売タイミングやラインナップづくりを検討しています。が現状は十分でなく、生産技術やコストについても課題が残されており、引き続き開発を進める必要があります。
スマート化や視聴スタイルを含めて、3つをいかにバランスさせてラインナップをつくっていくかがテレビの商品企画のポイントと思います。その中で現段階においては、「スマートビエラ」が、多くのお客様にご支持いただけるご提案と自負しています。
テレビの需要は2010年から11年で3、4年分を一気に先取りしたと言われますが、現在でも年間600万台というのは、むしろ底堅く推移していると言えます。特に50V型以上の大画面サイズは前年を大きく超える勢いで動いており、2003年頃の早い段階で37型や42型のデジタルテレビを購入された方に対する最適な買い替え商材として、「スマートビエラ」を大きく訴求していきたいと考えます。
さまざまな生活スタイルへ 提案は無数に存在する
−− スマート家電グランプリでも、数多くの優れた商品が受賞されています。
原 シーズンを迎えているエアコンでは、Xシリーズ、Tシリーズが受賞しました。スマートフォンにより外出先からの操作が可能になって、新たな便利さをご提案しています。また炊飯器では、パナソニック史上最高と自負するSR-SPX103/183。スチームと可変圧力IHで大変美味しい炊き上がりを実現しました。電子オーブンレンジNE-BS1000は、蒸しものも約10分の時短で調理できるようになり、調理の幅が広がりました。これらはいずれもスマートフォンとの連携がひとつの特徴ですが、単に便利、早い、カンタンだけでなく、調理の楽しさや購入後の広がりなどをご提案して訴求していきたいと思います。
−− 今年度御社では、家電販売のご提案として、「3億×1億」(サンオクイチオク)の考え方を掲げています。
原 昨年社長に就任した津賀が、お客様を中心として「住宅空間」「非住宅空間」「モビリティ」「パーソナル」と4つの戦略象限を掲げました。B to Cビジネスで特に重要な「住宅空間」「パーソナル」のカテゴリーを、日本市場では「3億×1億」(サンオクイチオク)のコンセプトのもとで推し進めて参ります。
3億は、日本の住宅空間の数。リビングや寝室、子ども部屋や書斎などの部屋と、キッチンやバス、トイレなどで3億4000万ほどの空間が存在します。そこに1億1000万ほどの人々が、年配の方や若者、子ども、単身の方やご家族、ご夫婦、そしてペットと一緒などさまざまなスタイルで暮らしておられます。どれ一つとして同じ空間はなく、それぞれの空間ごとに、お客様ごとに、よりよい暮らしに向けた無限のご提案がある、という考え方です。
お客様の暮らしをいかに上質なものにするかという観点では、単品バラバラでの商品企画では、限界があります。たとえばどんな空間にもあるあかり。これまでは主に空間の広さに応じた明るさの程度を基本としてカテゴライズされ、売り場もつくられてきました。しかし実際あかりを買われるお客様は、今まで、寝室、リビングなどで使っていた照明機具の買い替えという意識で来店されます。リビングと言っても、今では、そこでお化粧したり、子供たちが勉強したりと、空間自体の使われ方も変わってきているのです。
このように目的や部屋の性質に応じたあかりの提案もできるはずです。朝すっきりと目覚める、また夜入眠しやすくなる寝室のあかり。ビエラの画がもっともきれいに見えるシアターモードをもつリビングのあかり。書斎には文字がくっきりはっきり読める色温度6200K(ケルビン)のあかりが欲しいですね。提案の幅は広がります。
私どもはまた、エコソリューションズ社という旧松下電工グループの豊富な住宅設備機器を取り扱っています。住空間は多くの住宅設備機器と家電によって構成されており、そのバランスや組み合わせ、あるいはネットワーク化など、お客様の暮らしごとに提案していく。それが本年度、私どもが大切だと考えている方向性です。
まず老若男女のお客様に深く向き合い、それぞれの暮らしぶりをしっかりと把握することが第一歩。そこに将来関わってくるのが「スマート家電」だと思います。AV家電が次々にネットにつながりさまざまなコンテンツにアクセスできるようになり、それは今後、白物家電にも広がっていくでしょう。ネット接続率が上がると、お客様の毎日のご使用状況がサーバーに蓄積され、今後の商品企画やサービス、万が一機器が故障した際のCS対応など、さまざまな分野で活用できるようになります。
お客様の身近でお役に立つこと それが「スマート」の目指す姿 |
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もっと身近に使いやすく それこそが「スマート」
−− 「スマート」の考え方が少しずつお客様に身近になっています。
原 「スマート」というと現状ではスマートフォンとの連携がクローズアップされますが、それはまだ第一歩にすぎません。スマートフォン自体、お一人一人のお客様にとっては決して低いハードルとは限りませんし、家電がサーバーにつながる技術手段は必ずしもそれだけではありません。将来的な無線化などさまざまな技術が生まれることによって、お客様が何も意識することなく「スマート家電」を使いこなせるようになるでしょう。年配の方もストレスフリーで使えるようなものを目指しているのです。
お客様に寄り添うような家電、それがパナソニックの目指している「スマート」です。難しいIT技術を駆使して飛躍的に便利にすることではなく、お客様にとって必要なときに必要なことをしてさしあげるやさしい家電、ということ。
スマート=難しいと思われるうちは完成形ではありません。私どもが技術開発していく余地はまだたくさんあります。電機業界にはまだネタが山ほどあり、それを進めていくのはとても大きな仕事です。白物家電とITは結びつかないという考え方ではなく、ITを意識せず家電がもっと身近になるような考え方が必ずできるはずです。
「高付加価値化」とは響きのいい言葉ですが、その積み重ねがお客様のやることをどんどん増やして、使いこなせなていないということでは本末転倒です。今は、省機能という考え方も大切ですし、仮に多機能であっても、誰もがかんたんに使いこなせるようにすることが大切。今回のスマートビエラの音声認識などは、それを意識した提案です。
−− VGP、スマート家電グランプリの受賞商品は、夏商戦、そして秋以降も大きく期待できます。
原 電機業界が大変だと言われて今年は3年目です。過去2年間、非常に厳しかったこともありますが、AVは間もなく底を打ち、落ち着いてくるでしょう。白物は過去3年間、業界全体でもかなり高水準で推移しておりますが、今なお根強い節電需要があります。さらにここ数年間で伸びているのが住宅関連。省エネ関連やバリアフリー、耐震補強などに関連するリフォームが、新政権が掲げる経済活性化の柱となっており、中古住宅の買い替えも含め、中期的な視点では、今年はリフォーム市場は倍近くの成長が見込まれています。
そして空間が新しく変わると、家電も買い替えの可能性が高まります。この秋から来春にかけては消費税増税の影響による駆け込みも見込まれ、需要はぐっと盛り上がると思われます。夏はまずエアコンや冷蔵庫をしっかりおすすめしながら、秋から年末、年明けに向けて新製品をしっかりご用意して参ります。
さらに私どもでは、住宅設備機器にもここ数年注力しています。新型システムキッチンやバス、トイレ、リビングの壁面収納「キュビオス」などなど、新しい空間や設備と、そこにふさわしい数々の家電、新しいサービスなどいろいろなご提案ができます。このような取り組みを通して、家電販売の回復の兆しを、しっかり掴んでいきたいと思います。