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4/25から配信スタート

【特別インタビュー】ゴージャスでごキゲンなエリントン・サウンド − 平賀マリカ最新アルバムがハイレゾ音源で登場 

公開日 2012/04/25 17:04 ファイル・ウェブ編集部
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4月25日からe-onkyo musicで配信がスタートした、ジャズ・ボーカリスト 平賀マリカさんの新アルバム「Sings With The Duke Ellington Orchestra」(96kHz/24bit)。現代最高峰のビッグバンドのひとつであるデューク・エリントン・オーケストラとタッグを組み、「A列車で行こう」などの名曲を、美しいボーカルとゴージャスなビッグバンド・サウンドで楽しめる一作だ。今回、平賀マリカさんと、A&Rを務めた淡中隆史さんにお話しをうかがった。

平賀マリカ(Vocal)、デューク・エリントン・オーケストラ
Sings With The Duke Ellington Orchestra

1. アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
2. ドロップ・ミー・オフ・イン・ハーレム
3. スウィングしなけりゃ意味ないね
4. ソリチュード
5. キャラバン
6. イン・ア・メロウ・トーン
7. アイ・ディドント・ノウ・アバウト・ユー
8. アイム・ゴナ・ゴー・フィッシン
9. イン・ナ・センティメンタル・ムード
10. ジャスト・ア・シッティン・アンド・ア・ロッキン
11. A列車で行こう
12. ダンス・イン・ハーレム


−− 今回の新アルバムを作ることになったきっかけを教えてください。

平賀さん:前回リリースした「MONA LISA 〜TRIBUTE TO NAT KING COLE〜」という作品がとてもシンプルな編成のアルバムだったので、次はゴージャスなビッグバンドと一緒にやるアルバムを作ってみたいなという思いがありました。以前から私はデューク・エリントン・オーケストラの大ファンで、ライブなどにもうかがっていたんです。リーダーのトミー・ジェイムスさんと「いつか一緒にできたらいいね」というお話しをしていたのが、ついに実現したという感じですね。

平賀マリカさん

−− デューク・エリントン・オーケストラと言えば現代最高峰のビッグ・バンドですが、一緒にやってみていかがでしたか?

平賀さん:イメージしていたとおり、とってもゴージャスな体験でした。ご存知のとおりデューク・エリントン・オーケストラは1920年代から続いている伝統あるオーケストラで、歴史を感じる独特のスイング感と重厚なサウンドを持っているんですよね。ジャズをやっていて楽しいなと思うのは、ミュージシャン同士のやりとりで音楽を作り上げていくところ。エリントンの楽曲の基本はダンスミュージックだと思うのですが、デューク・エリントン・オーケストラのメンバーと一緒に踊るように歌い、体が自然に動いてスイングしてくる感じを、ビッグバンド独特の音圧に包まれて楽しむことができました。

−− アルバムに収録された曲はどうやって決めたのですか?


平賀さん::私が何曲か候補を挙げて、トミーさんと相談して決めましたね。やっぱり「A列車で行こう」は絶対入れたかったです。それと「ソリチュード」も。ずっと歌いたいなと思っていましたし、ダンサブルで楽しい曲のなかに、こういうダークサイドを感じる曲が入るとまた魅力的かなと思ったので。スタンダードナンバーはもちろんのこと、「Drop Me Off In Harlem」とか、SUSHIさん作曲のオリジナル曲の「Dance In Harlem」なんかも混ぜ込んでいます。

今回のアルバムは、ニューヨークのハーレムのイメージが重要なキーのひとつなんです。ハーレムはすごく“土地の匂い”がする場所で、歴史を感じるライブハウスも沢山あります。ダウンタウンほど観光客も多くなく、地元の方達が近所からサンダル履きで聴きに来た…みたいなフランクなノリと、独特の猥雑さが感じられる場所なんです。

今はとてもクリーンなところになりましたけど、私はずっと怖い場所というイメージを持っていて。でもボイストレーニングをしにハーレムの教会に行ったりするうちに、私の忘れ物を届けに追いかけてきてくれたりとか、すごく温かい場所なんだなと思いました。ライブハウスでも、お客さんも楽器を持ってきていていつのまにか一緒にセッションが始まっていたりとか…演奏者と聴き手の間に、こなれた温かみみたいなものがあるんですね。私にとっては、ジャズの基本が沢山ある場所です。

ジャケットも、20〜30年代のレトロな感じをイメージしてみたんですよ。

−− 伝統あるビッグバンドと、伝統あるエリントンサウンドを現代に再構築するということで、録音やマスタリングの機材もこだわりあるものを使われたそうですね。

淡中さん:今回は、サウンド関係全体とプロデュースを、SUSHIさんことAtsushi Kosugiさんに依頼しました。レコーディングとミックスのエンジニアにはデイヴィッド・ダーリントンを迎え、Water Music Recording Studiosでレコーディングしました。マスタリングエンジニアはマスターディスクのスコット・ホールさんです。

今回は、“録り方はトラディショナル、取り込み方は超現代風”という感じでしたね。Water Music Recording Studiosには良い状態のオールド・ニーヴ(NEVE)の8088というコンソールがあって、これが、今回のようにトラディショナルな音楽の録音にマッチするんです。マイクも、SUSHIさんが所有しているヴィンテージマイクを使用しました。


レコーディングのようす
SUSHIさん曰く「コンピューター内でミックスすると、ステレオ感がないというか、広がりのない感動しない音になってしまう。これは特に生音で録音されたトラディショナルな音楽で顕著」なんだそうです。なので、Pro Toolsに録音された信号を、一度パラでアナログ・コンソールに立ち上げ、それをTascamのDV-RA1000に取り込む、という工程を採用したそうです。

マスタリングは、DV-RA1000で再生したアナログ信号を発表されたばかりのLupart Neve Designの“Portico II”と、昔ながらのSontecのマスタリングEQを使って行いました。

平賀さん:古いものをそのまま持ってくるのではなく、現代にリリースする意味を考えて、それに合った手法を使った、ということですよね。古さと新しさのいいとこ取りって感じですね。

スコットさんが送ってくれたサウンドサンプルを聴いたときは、驚きました。マスタリングでこんなに音って変わるんだ!と思いましたね。音がすごくボトムアップしたというか、ひとつひとつの楽器の良い部分が花開いた感じがして、ますますゴージャスになったな、と。


いつも思っているのですが、ただ古いものを掘り起こすだけなら、いまやる意味がない。時代を常にキャッチして取り入れていかないと、クリエイトする意味がないと感じています。

高音質配信も、現代ならではの広げ方だと思います。いまはCDショップで音楽を買う方だけではないですものね。96kHz/24bitで配信した前作も、聴いた方から「臨場感があって、すぐそばで歌ってもらっているみたい」と喜びのメッセージをいただいたりして。そういう空気感や臨場感までも伝えられるというのは、アーティストにとってとても光栄なことです。今回のアルバムも、いろいろなかたちでひとりでも多くの方に聴いていただけたら嬉しいです。

              ◇   ◇   ◇          

こちらのインタビューのダイジェスト版は、4月28日発売の「Net Audio Vol.6」に掲載されている。「Net Audio Vol.6」には、「Sings With The Duke Ellington Orchestra」より「A列車で行こう」の無料サンプル音源が特別付録「e-onkyo musicからの0円ダウンロード企画」としてついてくる。平賀マリカさんとデューク・エリントン・オーケストラによる“古くて新しい”エリントン・サウンドを、ぜひご体験いただきたい。

■平賀マリカ ライブ情報
<九州ツアー>
5月30日(水)【福岡】ニューコンボ
5月31日(木)【熊本】酔ing
6月1日(金)【小倉】ビッグバンド
6月2日(土)【長崎】慶巌寺
6月3日(日)【佐賀】浪漫座

< シングス・デューク・エリントン・ツアー 2012 >
7月1日(日)【名古屋】名古屋ブルーノート
featuring C.U.G. Jazz Orchestra
7月4日(水)【大阪】ビルボードライブ大阪
featuring  Arrow Jazz Orchestra
7月12日(木)【東京】STB139スイートベイジル/六本木
featuring  Marica Hiraga Premium Big Band

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