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7.1ch対応のワイヤレスサラウンドヘッドホン

製品の強みと好調な売れ行きの秘密 - ソニー「MDR-DS7100」担当者インタビュー

2010/02/19 ファイル・ウェブ編集部
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ソニーのワイヤレスサラウンドヘッドホン「MDR-DS7100」の売れ行きが好調だとの情報がメーカーの担当者から編集部に寄せられた。その言葉を裏付けるように、ファイル・ウェブ「AV機器売れ筋ランキング」のヘッドホン部門でも1月と2月にランクインしている。そこで今回は製品を取り巻く現在の状況と特徴についてソニーの担当者に語ってもらった。

MDR-DS7100

写真左から栗栖氏、角田氏、太田氏

■TVの3D化に伴って「音の3D化」のニーズもますます高まる

まず、市場動向などについて説明してくれたのは、コンスーマープロダクツ&デバイスグループ PI&S事業本部 商品企画部門 商品企画3部6課 プロダクトマネジャーの太田貴志氏。

コンスーマープロダクツ&デバイスグループ PI&S事業本部 商品企画部門 商品企画3部6課 プロダクトマネジャー 太田貴志氏

太田氏は「CESでもソニーを含めた各社から発表があったように、3Dテレビがいよいよ本格化します。画面が3Dになれば、やはり音も3D、つまりサラウンドで聴きたいという欲求が出てくるのが人間の素直な気持ちだと思います」と、今後ますますサラウンドヘッドホンへの注目が高まるだろうと語る。

CESに出展されていたソニーの3D対応テレビ「BRAVIA LX900シリーズ」

また、太田氏はアナログ停波に向けて薄型テレビへの買い替え需要が高まっている状況にも言及。「当然ながらテレビに繋がるアクセサリーの需要も高まっていくことでしょう」とコメント。

そして、スピーカーを設置するスペースが取れなかったり、大きな音を出しにくいという日本の住宅事情にも触れ、「仮に大きな音を出せる状況にあっても、スイートスポットが狭いため家族大勢で楽しめなかったり、家具などに影響されて理想的な音場を作るのが難しいといった問題もあります」と指摘。そうした問題をクリアするためにサラウンドヘッドホンを制作しているといい、「手軽にサラウンドを楽しんでもらいたいですね」と開発にあたっての思想を語る。

続いて太田氏は「おかげさまでずっとトップの支持を頂いています」と同社の歴代デジタルサラウンドヘッドホンが市場シェアでも非常に好調であることを説明。最新モデルである本機についても「圧倒的なシェアを獲得できています」と語った。

■独自技術で「前方向への音の見通し」「セリフの明瞭度」を向上

製品は、プロセッサーの「DP-RF7100」とヘッドホン「MDR-RF7100」から成り、ヘッドホンにはCCAWボイスコイル採用の50mm径ドライバーユニットを搭載。再生周波数帯域は6Hzから25,000Hzで、3時間のフル充電時で約13時間の使用が可能。30分の充電で約4時間使用できる。こうした製品の詳細については、パーソナル イメージング&サウンド事業本部 パーソナルエンタテインメント事業部1部 主任技師の角田直隆氏が説明してくれた。

パーソナル イメージング&サウンド事業本部 パーソナルエンタテインメント事業部1部 主任技師 角田直隆氏

「DP-RF7100」の機体背面。光デジタル入力2系統/アナログ入力1系統のほか光スルー出力も備えている

角田氏は「当たり前のことですが、スピーカーから音を出した際に、例えば2チャンネルなら右スピーカーからの音が右耳だけに、左スピーカーからの音が左耳だけに届くというわけではありません」と、音の伝わり方の前提に言及。

「そしてこちらも当然ですが、左右それぞれの耳に届くまでの音の変化は異なります。この『スピーカーから耳に達するまでの音の変化』をDSPでシミュレートしているわけです」と言葉を続け、デジタルサラウンドヘッドホンの基本を改めて説明する。なお、「MDR-DS7100」ではビット浮動小数点演算DSPを搭載。角田氏は「AVアンプに入っているものと比べても遜色ないものです」と語った。

その後、1994年に発売した世界で初めての2chステレオバーチャルホン「VIP-1000」や1998年に発売した世界初の5.1chデジタルサラウンドヘッドホン「MDR-DS5000」などに触れながらデジタルサラウンドヘッドホンに対する同社の歩みを紹介。2007年発売の「MDR-DS7000」からは7.1chに対応し、最新機「MDR-DS7100」では新開発の信号処理アルゴリズム「Virtulaphone Tecnology」を搭載したことなどを説明する。

MDR-DS7000

また、「MDR-DS7000」から搭載されている「ゲームモード」も好評であることを角田氏は説明。同モードは、ソニーコンピューターエンタテインメント(SCE)とソニーが共同で開発し、Playstation 3等の3Dゲーム機のマルチチャンネル サウンドに最適なチューニングを施したというもの。

「EFFECT」ボタンでモード切り替えが可能

角田氏は同モードがSCEで音作りを担当しているスタッフからも高評価であるとして「彼らはプログラムで、ゲームの中での音の定位を決めるわけですが、『自分が音を置いたところから正しく音が聴こえてくる』とも言ってくれています」とのエピソードも明かした。なお、映画ソースなど用の「シネマモード」では、「映画館で聴いている雰囲気を味わえるような広めの音場を表現しています」という。

そして新たにドライバーユニットを50mm口径にした点については、「従来モデルよりもさらに音質を高めようとした」と開発にあたっての思想を紹介。「AV専用でダイナミックレンジを重視したユニットを開発して搭載しています」と語った。

続けて角田氏は新機能の「センターチャンネルレベルコントロール」にも言及。「マルチチャンネルの場合、セリフはセンターにアサインされている場合が通常ですが、ソースによってはセリフが聴き取りにくいものもたまにあるかと思います」とコメントし、センターチャンネルのレベルだけを他チャンネルに比べて持ち上げることが可能な同機能の利点も改めてアピールした。

センターチャンネルレベルが手元でコントロールできる

ヘッドホン部にもモード変更ボタンや音量調節など各種スイッチ類を装備

また、仮想サラウンド技術にドルビーヘッドフォンを採用することが多い一般的なバーチャルサラウンドヘッドホンとの比較においては「ソニーでは音場再生に関して非常にリソースを割いて、ナチュラルな音色を追求しています」とコメント。「我々は前方向への音の見通しが良く、セリフの明瞭度なども優れていると思っています」と特徴を解説する。

そして、「Virtulaphone Tecnology」やドライバーユニットなどを独自開発している利点を改めて強調。「トランスデューサーで言えば信号処理をしやすいものにできますし、逆もまたしかりで、トランスデューサーの特徴を活かしやすい信号処理も開発できるわけです。このように製品を一体開発している点が我が社のアドバンテージなのではないかと考えています」と開発環境まで含めての強みを説明し、製品の完成度にも自信を見せた。

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