新製品批評

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視聴を行ったのは、松下電器の一室。専用の視聴室ではないが、外光は入らず、室内光は自在にコントロールできる。視聴時には室内光はすべて落としている。

持参したDVDから、『グッドナイト・ムーン』を見る。これは、私が現代劇映画のリファレンスとしている作品で、ごく自然な輪郭の中で、十分な解像度が得られているディスクだ。視聴は、DVDプレーヤーから525iのインターレース信号を送り出し、それを本機の側で525p化した映像を見た。

 


愛用のテストディスクを次から次へと取り出し、長時間の視聴を行う貝山氏。「25万円弱の製品とは思えない」と感心することしきり



全体にジャギーはよく押さえ込まれているので、斜め線の部分がすっきり表現出来る。チャプター15『秘密の正体』は、色鮮やかな紅葉の中で始まる。一人の男性ををめぐって、元の妻(スーザン・サランドン)と、現在の愛人(ジュリア・ロバーツ)が対峙するシーンだが、色の詰まった背景のロングショットの自然な佇まいと、暗い背景の中で浮かび上がるジュリア・ロバーツのクローズアップの美しさが決め手となる映像だ。

一見すると、なんでもない映像に思えるが、実はこれが曲者で、液晶プロジェクターにとってはかなり難しい映像である。難しいのはジュリアロバーツの肌色。抜けるように白くあって欲しいが、大抵のプロジェクターでは、赤味の強い肌色となってしまう。これは、色の濃さと色あいだけの調整では、まず実現出来ぬ肌色で、ガンマを含めた設定が必要となる部分だ。本機で再生した顔色は、かなり私の理想に近いものだった。特に細かい調整機能を持たぬ本機で、ここまで画質が追い込めることにまず、感心した。

 

グッドナイト・ムーン
ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
SDD-26762
¥3,800


恋におちたシェイクスピア
ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
SUD-29936
¥3,800

  『恋に落ちたシェイクスピア』では、チャプター10を見る。シェイクスピアが、レセックス卿の館で行われる舞踏会に潜入し、卿の娘、ヴァイオラと踊るシーンだ。ここではまず、本機の色つきのよさが活きた。貴族たちの豪華な衣装の質感がリアルで、細かい飾りの部分まで、色はくっきりと乗っている。これに続く夜のバルコニーのシーンでは、夜の雰囲気がどこまで出るかが勝負だ。漆黒の中で、見えるものは見え、自然な明暗が得られなければいけない。これは液晶のディスプレーにとって最も難しい表現である。本機がかもし出した夜の雰囲気は、黒が決して浮き上がらず、暗部の明暗差も、かなり自然に表現していた。ブラウン管の映像には及ばないが、液晶のディスプレーとしては、最上のものといっていいだろう。

私がチーフプロデュースを努めた『南極物語』は、決して高画質の素材ではないが、オーサリングでは、十分なビットレートを確保し、オリジナル映像のニュアンスをきっちりと表出できる仕上がりとなっている。映画の後半、南極で生き残った2頭の犬、タロとジロが、氷が溶けはじめた氷海を駆け回る大俯瞰ショットは、この映画の中で、私が最も好きな映像だが、カメラを乗せたヘリが段々と上昇し、犬の姿が豆粒のような点景になっても、それをはっきりと目視することができた。80インチの投写で、これだけ細部の描写ができれば、解像度に関しての不満は、まず出ないだろう。従来のカジュアルなプロジェクターとは、一線を画す出来だ。

 


南極物語
ポニーキャニオン
PCBC-50118
¥4,800
(11月21日発売)

このように、明暗の表現でも、色の再現でも、細部の表現でも、本機は総じて高い能力を発揮した。24万8000円という価格からは想像できない高画質である。液晶の弱みを見せぬバランスのいい映像は、プログラムを選ばず、画質に煩いユーザーの視線にも耐えるものだといっていいだろう。

これを原型に、さらに、細かい調整機能を設けたマニア向けの製品も考えられる。本機の発売を期に、カジュアルなホームシアターの様相は一変するだろう。いかに簡便な機器でも、画質評価抜きでは問題とならぬ時代がすでに到来したのだ。