巻頭言

独立峰/和田光征

和田光征
WADA KOHSEI


連日新製品の発表会が行われて、いよいよ年末商戦へ業界全体が燃え、走り始めた。同時に「ビジュアルグランプリ2007」「オーディオ銘機賞2007」へのノミネートも活発で、昨年の1000モデル(小物・アクセサリーも含む)を超えそうな勢いである。業界の回復、さらには基幹商品の機種増に加えて付加価値商品の提案が急増していることも大きな要因でだろう。

AV機器においては、薄型テレビが断トツで他のデジタル機器が続くという昨年同様の構図は変わらないが、横へのひろがりも活発で注目したいところである。

そんな中、エプソンのEMP−TWD3「ドリーミオ」の動きに注目したい。昨年発売されたEMP−TWD1の後継機で、DVD一体型プロジェクターの基本性能に加えて、PC接続端子を追加するなどユーザー本意の機能を付加している。私が商品を取り上げるのは異例のことであるが、何故そうしたかと言えば、この商品がエポックメイキング商品だからである。

時代の流れの中で様々なエポックメイキングな商品があって、これが新しい市場を生み、そこからまた次なる市場が創造される。その代表としてウォークマン等々があるだろう。

ハードの性能の強弱ばかりでないコンセプトの明確化がポイントで、現在中心を成す商品も多い。例えば液晶で薄型化を提案したシャープ、プラズマの松下、パイオニア、日立他による“薄型テレビ”というコンセプトが現在の市場を創っているのである。

昨年、エプソンからEMP−TWD1が誕生した時、そのコンセプトに私は興奮した。おそらく業界人の多くは否定的な様々な反応をしたと思う。プロジェクターという商品群から見るとなんとも物足りない、流通サイドでは売るものがあるから取り合う段階にない。しかし、前者は性能という一面からしか見ていないし、後者はコンセプトが理解できていない。だから今は売れる物を他社より早く売らなければということで薄型テレビに特化していく。それはそれで当然である。

はっきり言うならば、プロジェクターに新しいジャンルを切り開いた市場創造型商品であり、従来のプロジェクターの常識ではジャッジできない独立峰的存在で、高齢者や女性、一般層の購入者が多いことも当然なのである。そのコンセプトはこうだ。

1高性能 2簡単操作 3セッティングフリー 4シンプルデザイン 5リーズナブルプライス

見たい時に見て、片付けてしまう。尚且つ電源コンセントにつなぐだけの手軽さ。

私が提言する「2WAYシアター宣言」のフィールド、入口を構成する市場創造型商品として認識して戴きたい。とりわけ薄型テレビ購入者の付加価値としてアプローチすれば、高い確率で成約するのではないだろうか。

そもそも、プロジェクターにはハイエンド、カジュアルの2つの山があった。そこへ、EMP−TWD1、/TWD3が3つ目の山を形成したのである。私は他メーカーも一体型プロジェクター市場へ参入し、健全なる競争を展開して頂きたいと思っている。

そもそもホームシアターはグレードアップ型である。次なるステップの為にも一体型市場の確立は急がれるのである。


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