受賞インタビュー

パイオニアマーケティング(株)
代表取締役社長

校條 亮治
RYOJI MENJO

新しい顧客価値を創造する命題を
新しい商品で具現化していく

総合AVメーカーとして、新しい価値を創造する商品を世に送り出すことで、着実な再生を遂げているパイオニア。そんな使命を担った新商品50V型フルHDプラズマディスプレイPDP-5000EXが、ビジュアルグランプリ2006 SUMMERの特別金賞に輝いた。また同じ思想を踏襲するプラズマテレビPDP-507HX、PDP-427HXは同金賞を受賞。力強く歩み始めた新生パイオニアについて、パイオニアマーケティング代表取締役社長 校條亮治氏にお話を伺った。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征


販売店とひとつになって
価値を提供する

―― ビジュアルグランプリ2006SUMMERでは、御社のPDP-5000EXが特別金賞を、PDP-507HX、PDP-427HXが金賞を受賞されました。

校條 私共は、パイオニアらしさ、パイオニアならではという商品、そしてお客様に対してのコミュニケーションのあり方というものを求めて変化しようとしています。そんな中で5000EXという商品が、おかげさまで大変高い評価をいただきました。
 我々の変化という視点で見たとき、この商品はあまねくどこのお店でも展開すべき商品かというと、私はそうではないと思います。私共の価値をお客様にはっきり伝えていただける販売店様、また独自の付加価値を加えてお客様にご提供いただける販売店様という前提条件がないと、私共がどんなに良い商品をつくってもお客様に伝わりにくく、私共のビジネスモデルは成功しません。
 そういう意味で、量販店様のトップの方々に私からご説明に上がりました。今回5000EXを展開していただけるお取引様とは、私共とお話し合いをじっくりさせていただき、その上でお互いがこの商品を活用するにあたって、新たなお客様の層を広げる、定着させるという合意をさせていただいております。

―― パイオニアは、プラズマで先陣を切ったわけですから、当時40インチ、50インチを買われたお客様がかなりいらっしゃいます。そのお客様が買い替えの際は、上のサイズへステップアップするということが考えられるのですが、5000EXによって、同じ50インチであっても、クオリティアップにシフトするという横の展開が実現できるわけです。マーケティング的にも非常に有効です。また、当時たくさんプラズマを販売されたAV専門店さんにとっても朗報だと思います。

校條 AV専門店さんの会の中に、商品研究会という部会を設置させていただき、5000EXを発売するにあたって、コンセプト、売り方、お客様プロフィール、価格、といったテーマでさまざまな論議をさせていただきました。そんな中で、お客様満足とは何か、お客様に分かっていただける価値とは何か、お客様に価値を説明できるか、販売手法はどうか、とつきつめていったのです。色々とご意見はありましたが、あえて100万円という値づけもさせていただきました。当初買われたお客様、あるいは新しい価値を要求されているお客様には、十分お応えできる商品だと思います。
 プロジェクターを使ったホームシアターはある一定の環境条件を整えなくてはなりませんが、あえてそこにチャレンジし、通常環境の中でもお客様から要求されるホームシアターを実現できるというところにも新しい水平展開ができ、価値があるのではないかと思います。


これからのパイオニアは
オーディオ再復活が目標

―― 先日御社の会社説明会において、須藤社長から今後はオーディオも復活させるという発表もありました。

校條 パイオニアとは元来、創業者がダイナミックスピーカーを世に出したいということに始まり、以来ずっと世の中にないもの、また存在するものをさらに改革して世に提供するということをミッションにして今日まできました。今、プラズマが薄型テレビとして普及価格帯に入ってきた時点で、パイオニアはマスをとる企業ではないというポジショニングを明確にしました。我々が国内でビジネスをしていく上で、新しい顧客価値を創造する企業であるというポジショニングをはっきりすることが重要です。国内の営業部隊は、新しいお客様に価値をしっかりとお伝えするというミッションを担っていると思っております。
 その先駆けとして、昨年からS-1EXというスピーカーを発売しております。今回の5000EXもその流れの中にあり、このような商品が少しずつ生まれてきております。日本はAVの最先端市場ですから、国内ではあくまでも新しい顧客価値を創造、提案することが第一の命題です。そのためのマーケティングをどうするべきかというところがこれからの課題です。
 パイオニアが発足したときの企業理念である「より多くの人と、感動を」、当時は音がコンテンツですから、これからもオーディオを再度復活させたいという大きな目標があります。
 そして私共がレーザーディスクを手掛けた時には、音だけでなく最高のクオリティの映像が必要であり、映像と音とがあいまって最高の感動が再現できる、という思いがありました。最高の映像クオリティを提案する。ビジュアルについてもそういう決意でおります。それが今回のフルHDであるし、その次のステップもあるかもしれません。そこはあくなき追求です。
 そういうふうにパイオニアのビジネスモデルを明確化するには、当然商品が必要です。それは、新しい顧客価値創造でなくてはならない。それをどうやってお客様にコミュニケーションし、提供し続けていくかというと、これは私共メーカー側の考えていることと、流通さん側の考えていることが共通していなくてはなりません。お互い論議しながら新しい価値をお客様に常に提供するところに、新しい市場創造の意義があるのではないかと思います。
 そのシナリオを具現化する第一弾が、S-1EXであり、第二弾が5000EXであると。そしてこれから続々と商品提供、価値提供していきます。私共は、オーディオをメインの柱として、当然ながら2チャンネル・オーディオにも力を入れて参ります。また、ビジュアルも、情報をながら的に伝達するテレビジョンとは一線を画す世界を創っていく。お客様がポジティブに、アクティブに情報を得るというところがこれからの新しい世界としてあるでしょうし、創らなくてはならないと思います。
 これからは自分で自分の情報、自分のコンテンツを選んで、その中に自分の生活をエンジョイしたり潤ったり、ということになると思います。それが団塊の世代の方々への新しい生活スタイルの提案ということになるのかもしれません。そういうものがもう始まりつつあります。それがパイオニアにとっての重要な視点だと思います。
 オーディオは、今年中にも相当な機種数を市場に提案したいと思っております。パイオニアがやらなくてはならないのは、多くの方に楽しんでいただくための幅を広げ、そういう世界をいかに創るかということだと思います。2チャンネル・オーディオではそういう提案をして参ります。アンプ、プレーヤーではSACD、またブルーレイはビジュアルも含めて早急に提案して参りたいと思っていますし、スピーカーでは、サントリーさんとコラボレートしたピュアモルトスピーカーも幅を広げていきたい。またスピーカーは1EXで高い評価をいただきましたので、この世界を広げていきたいと思います。一方で、マルチチャンネルでも素晴らしい商品を提供していきたいと思います。
 ビジュアル関係の次のステップは、他のモデルへのフルHDの展開、より大画面へ展開していくということになります。レギュラーポジションのお客様にも、より質の高い画像の提供が必要ですので、ここでも飽くなき技術の開発があり、また新しい提案ができると思います。すでに着手していますので、楽しみにしていただきたいと思います。


大いなる展望が開け
新たなるスタートを切る

―― おっしゃったことは着実に具現化していくという印象を持っておりますし、業界にとってもパイオニアが元気でないと困ります。非常に頼もしいと思います。

校條 私共を含め、日本のメーカーは世界をリードする開発企業だと思うのです。もちろんプラントに投資したものを回収することは必要で、量を売っていくことも大切です。ただ、それだけでなく私共は地に足をしっかりと付け直し、次なる開発によって付加価値を付け、お客様に納得していただいて、付加価値の代価を頂戴するというところが開発メーカーのあるべき姿であろうと思います。我々が目指していくべきポジショニングは、この1年ほどの間にだいぶ明確化したと思います。

―― パイオニアらしい昔からの流れを感じます。今後も時間軸でぜひ実現していただきたいと思います。

校條 昔と比べて、今はスピードが要求されますので、チャネル研究やコラボレーションの実行、そういったものを時間軸の中でどれだけ間に合わせるか。ここ2年が勝負だと思います。この1年は苦しい状況を余儀なくされました。今期も苦しいですが、何も見えない苦しさから、次の展望を開くための苦しさに変わり、ある意味楽しさも見えてきました。ようやく先を見据えた形になり、遅れをとらないようにと顧客価値提供を模索しております。

―― 5000EXのような商品は、マーケティング的に理解しやすい商品です。横軸を組み合わせた商品としてユーザーにもわかりやすい。業界的にも功績のある商品だと思います。

校條 5000EXは、ある意味トップエンドのところに提案したものですが、レギュラーモデルはどうするかというと、昨年から提案して参りましたラックスピーカーB-07を、ツィンウーファーにバージョンアップして今年も展開しています。これが非常に大きなボリュームゾーンで広がりつつあります。いい画質のテレビであれば、いい音を提供したいという主張のもとで発売したものです。しかも質の高いデザインであり、オーディオメーカーならではの作り方をしています。これが市場を形成してきました。それをレギュラーモデルにおいても展開したわけです。
 もちろん、テレビだけでも高音質ですから、これでセパレートシステムを推奨しているというわけではありません。そうではなく、テレビもあって、さらにラックも組み合わせるという付加価値の多方展開ができるような商品としての提案です。それを受け入れていただくには、もっと我々の努力が必要だとも感じております。
 新しいAVの世界があるということ、トップエンドもあればミドルもある、スタイリッシュな世界もある、音場空間、映像空間を創るという世界もあります。ようやくそういう整理ができてきた気がします。

―― いよいよパイオニアらしい道筋が見えてきました。

校條 いい世界をつくっていくのがパイオニアの使命です。専門メーカーとして新しい価値の提案ができなければ、パイオニアの存在価値がありません。そして商品にメッセージが込められていなければなりません。メッセージのある商品を提供する必要があるのです。

―― これからのパイオニアに期待大です。本日はありがとうございました。

◆PROFILE◆

RYOJI MENJO

1947年11月22日生まれ。岐阜県出身。66年パイオニア鞄社。86年パイオニア労働組合中央執行委員長(専従)兼、パイオニア関連労働組合協議会議長。97年10月パイオニア(株)CS経営推進室長。04年6月パイオニア(株)執行役員CS経営推進室室長。05年7月パイオニアマーケティング(株)代表取締役社長に就任。現在に至る。趣味は、旅行、音楽、歴史。