巻頭言

四人会

和田光征
WADA KOHSEI


私の友人に76歳のMさんがいます。知り合ったのは7〜8年前だと思いますが、余りに元気な方なので、いつも驚嘆の思いでお付き合いをさせていただいております。まず早足です。そして良く食べます。ゴルフ場の昼食でも残したのを見たことがありません。さらにどこでも眠たくなったら眠ります。マイナス志向なことを伺ったことは一度もありません。
いつしか、四人会なるものが結成されました。簡単に言ってしまえばゴルフと飲み会で、会のメンバーは他にSさんとOさんです。Oさんは歯科医、Sさんはリタイアされた悠々自適な方でした。というのはSさんは4年前の年の瀬に他界され、実質四人会は三人会になっていますが、ゴルフの時は気のあった方々をゲストとして声を掛け、飲み会は三人で不定期ですが楽しんでおります。
他界されたSさんは温厚で優しい人でした。ある時から声がかすれて、ちょうど映画「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドの声そのものでした。悪性の咽頭癌で四人会も流石に元気をなくしました。検査入院から退院された束の間の時間にゴルフをしましたが、久々の四人会にことのほか喜んでいて、また三人ともこれ以上ない励ましで包み込んだのでした。
「和田さん、今日でゴルフは終わりだよ」とSさん。その後、Sさんから悲しいことを言われました。ご自宅に電話をした折、「明日、声帯をとる手術をするから、僕の声は今日で終わりなんだよ」。そして3ヵ月ほどで他界されたのでした。
この会はどんな経歴で、どこで何をやっているか全く聞きません。目の前にいる人間と向かい合っている、そして信頼し合い人生を楽しんでいるという暖かいものです。Sさんの訃報記事が三大紙に掲載されたのには驚きました。それほど大きな仕事をされ、功成り名遂げた人だったとは微塵にも知りませんでした。四人それぞれがまさに自然体の関わりを保っていたのです。Sさんは72歳でのお別れとなりました。
さて、Mさんです。大手ゼネコンの専務で営業本部長をされ勇退されたことが分かりました。かといって、それだからどうということではなく、自然体のお付き合いです。宮崎出身の方で、Sさんも元気な頃、仲間11名で宮崎にゴルフ旅行へ行きました。流石に大物を感じました。ともかく人気者であちこちから声がかかってきます。「やあやあ」と破顔一笑で語り合っています。ともかく、人を惹きつけるのです。
そんなMさんは町の電気屋さんの大ファンで、この間も液晶テレビを私のアドバイスも受けて購入され、その画の美しさに感激していました。「確かに量販店で買えば安いけれど、サービスが悪過ぎる。そのことを考えれば電気屋さんは親切で安心で、長い目で考えれば安い」と、実体験を交えて熱っぽく語ってくれました。私もまた、量販店と対峙したかたちでの専門店時代の到来を感じていることから、同感の意をOさんに訴えていました。
Mさん76歳、Oさん68歳、私61歳。
四人会は春暖の中で翔いています。

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