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【テスト機材】
HDD搭載DVD-R/RWレコーダー
PIONEER「DVR-77H」
\OPEN(予想実売価格14万円前後)

『AVレビュー』で大好評連載中の「SUPER HITMODEL LONGRUN CHECK」ウェブ特別版をお届けする。DVR-77Hをオーディオビジュアル評論家・増田和夫氏が長期試用して様々なテストや実験を行い、その結果をレポートする。


第5回:本機のダビング機能を使いこなす

テストではパイオニア製の4倍速対応DVD-Rと、2倍速対応DVD-RWメディアを使用。高速記録対応メディアは発売間もないが、PC用の高速DVDドライブの普及に伴って、太陽誘電や三菱化学メディア、日本ビクター、日立マクセル、TDKなどからも高速対応メディアが発売されている(以下の写真はすべてクリックで拡大)

今回は高速ダビングを体験してみよう。ハイブリッドレコーダーの特徴的な操作として「編集」と「ダビング」が挙げられる。これをいかに快適に行えるか?で評価が決まると言っても過言ではないだろう。

今回述べるように、本機のダビングには、それなりの予備知識が必要になるし、操作に慣れが必要な部分もある。また、DVDの規格上の制限で致し方ない点であるが「これは可能、ただし、この場合を除く…」という制約も多い。こうした点で本機はオールマイティな本機とは言えないだろう。しかし、ダビング性能に関してはトップレベルの性能を備えている。DVD-R4倍速/DVD-RW2倍速という最新の高速ドライブを採用している点が大きな特徴だ。PC用のDVDドライブでは、すでにマルチ規格対応と高速化がトレンドとなっている。AVの分野でも…と期待していたが、最近のDVD録画機の動向を見ると、どうやらAVの世界では、DVD-R1倍速記録の従来ドライブが主流であり続けるようだ。そのような状況の中で、最新のドライブ技術をAV用途に転用しているメーカーは、現状ではパイオニアだけである。また、高度なマルチタスク処理によって、真の意味でのタイムシフト録再を実現し、高速ドライブの能力を最大限に引き出している。これも同社独自の機能だ。こうした点で、本機は、まさにドライブメーカーならではの録画機といえる。その設計思想を一言で表せば「DVDドライブが主役」ということになるだろう。本機は「DVDドライブの付いたHDDレコーダー」ではなく「HDDが一時的に補助するDVD録画機」なのだ。こう捉えると、機能上の制約も理解しやすくなると思う。

HDDに録画したタイトルをDVDにダビングしてみたい。4倍速記録に対応したDVD-Rと2倍速記録対応のDVD-RWを使えば、高速ダビングが可能だ。高速ダビングはファイルコピーなので、高速な上に画質&音質の劣化が一切ない点がメリットになる。このほか等速ダビングも可能だが、この場合クオリティは劣化し、ダビングにかかる時間はタイトルの実時間になってしまう。このため本機の性能を100%活かすには高速ダビングが望ましい。

最もお手軽な高速ダビング法は、リモコンの「ワンタッチダビング」ボタンを使うことだ。HDDに録画した番組を見ながら「この番組をDVDに残しておきたい」と思ったら、このボタンを押すだけで、再生しながらDVDに高速ダビングしてくれる。見ながらダビングできてしまう点が新しい。これは、マルチタスク処理に長けた本機ならではの技といえる。高速ダビングは再生よりも速いので録画番組を見終わった時には、すでにライブラリが完成している、という寸法だ。編集ができないことや、下記の「高速モードでの制限」はあるが、操作が手軽で時間を無駄にしないという点では、忙しい人やビギナーに勧められる。

 
最もお手軽な高速ダビング法。録画番組の再生中にリモコン上部の「ワンタッチダビング」ボタンを押すだけで、再生中のタイトルを高速ダビングできる。再生を中断せずにダビングできる点がポイントだ。DVD残量が足りないとダビングされない   「ワンタッチダビング」ボタンを押すと高速ダビング開始のメッセージがオンスクリーン表示される。ダビングするか否か?を問うダイアログなしに、即ダビングが開始されるので注意

次に一般的なHDD→DVDへのダビング法を見てみよう。まず、DVDメディアの残量に収まるように録画する必要がある。このために事前に録画モードを設定する。DVD残量と録画モードの関係は「録画モード」ボタンを押すとオンスクリーン表示されるので、これを見ながら最適なモードを決定する。メディア容量をオーバーしてしまうと、タイトルを分割(この操作は次回以降に解説)するか、あるいは等速ダビングする必要がある。MN(マニュアル)画質レートを活用し、番組予約の際に、放送時間に合ったきりの良い画質レートを設定しておくと無駄なく高速ダビングできるだろう。また、HDDには二カ国語音声を記録できないことも覚えておきたい。「本体設定」-「音声入力」-「二カ国語時記録音声」で主/副音声いずれかを選択する。

まず最初にリモコンの「設定/予約」-「本体設定」-「基本」-「ダビング編集モード」で「高速モード」と「フレーム編集モード」を選択する。DVD-Rに高速ダビングしたい場合には「高速モード」にしておけばOK

HDDに録画したらダビングの準備をしよう。最初に「ダビング編集モード」を設定する。「高速モード」(出荷時デフォルト)と「フレーム編集モード」が選べる。「高速モード」はDVD-RとDVD-RW(ビデオモード録画)用の設定で、「フレーム編集モード」はDVD-RWのVR(ビデオレコーディングモード録画)/DVD-R/RWのビデオモード録画用となる。ただし、ビデオモード録画の場合、フレーム単位での編集結果は反映されない。DVD-Rに高速ダビングしたい場合は「高速」モードを選べばOKだ。ただし高速モードでの制限はチェックしておこう。特にワイド放送を特定の録画モードで録るとDVD-Rなどに高速ダビングできなくなる点に注意したい。

 

HDDからのダビングの場合「録画した番組を集めて、仮想のタイトルを作る。→このタイトルを集めてダビングリストを作る。→このリストを一括してDVDにダビングする」という手順になる。仮想のタイトルとは、いわゆるプレイリストのようなもので、HDDではプレイリストで編集し、元データには手をつけない方式だ。ただしこの仮想タイトルとダビングリストは一時的なもので、一定の条件で自動消去されてしまい、HDDなどに恒久保存ができない点は注意したい。

以上の手順で、HDD→DVDへの高速ダビングが可能になる。ディスクにフル記録してDVD-R(4倍速対応)では約15分、DVD-RW(2倍速対応)では約30分でダビングが終わった。他社のDVD-R1倍速記録のレコーダーだと約1時間もかかることを考えると、これはかなり快適だ。高速記録対応のDVDメディアは、発売されたばかりで低価格化の余地があるが、既存のDVD-R(従来機の1倍速記録用)でも、国産メディアであれば2倍速ダビングが可能だった(可能なメディアは自動的に2倍速ダビングに設定される)。これも本機だけのアドバンテージといえるだろう。

今までのハイブリッド機では「ダビングは寝る前や食事時に」というように待たされる作業だった。これに対して本機では、コーヒーで一服している間にダビングが終わってしまう。特にLPモードなど低ビットレートでHDD録画した場合、数時間分の録画を十数分でダビングできて、かなり効率的だ。ここまで早くなることで、誰もがストレス無く使いこなせるだろう。

ハイブリッド機では録画や視聴の合間をぬってダビング作業が必要になるが、予約や録画番組が貯まってくると、ダビングに費やす時間を確保するのが難しくなってくる。ダビング時間が節約できる、という点で本機の高速ダビング機能は、仕事に追われる人はもちろん、ヘビーなエアチェッカーにとっても絶大なメリットになる。

高速ダビング中でも録画が可能。ダビング中は表示窓上部のダビングインジケーターの電光バーが流れるように点滅する。と同時に、左横の録画インジケーターも点灯し、録画中であることが判る。これはパイオニア独自のマルチタスク機能だ

さらに便利なのは、高速ダビング中にHDD録画ができてしまうことだ。これが出来るのはパイオニアのハイブリッド機だけだ。他社機ではダビング中はじっと待つのみ、TV視聴はできても録画は不可となっている。ハイブリッド機はタイムシフトが得意と言われているが、これでは逆に待たされる結果になってしまう。本機ではそんな時間の浪費を防げる。機能から考えてみると、高速ダビングはファイルコピーなのでMPEGのエンコーダーは使われていないし、HDDの読み書き速度にも十分余裕がある。なので、同時に処理できるのが当然ともいえるが、今までに、こうしたマルチタスク処理を実現した録画機はなかった。「ダビング中に番組を録り損ねた」という失敗がない点は本当に助かる。「沢山のビデオテープをDVD化したいが、時間がかかりすぎる・・・」という人にも、HDD→DVDに高速ダビングしながら、次のテープをHDD録画できるので効率的だ。

このように、本機のメリットは「何しろ早い!DVDを気軽に焼ける!」ことに尽きると思う。前章で書いたように起動やタイトル削除などの動作も高速で、この点でもストレスを感じさせない。従来機をヘビーに使いこなそうとすると、どうしても複数台欲しくなってしまうが、高速ダビングとマルチタスクに長けた本機なら、1台でも十分に活躍してくれそうだ。「HDDに気軽に録画して、DVDにどんどんダビングしたい」人や「ハイブリッド機のタイムシフト機能を存分に活かしたい」人にうってつけの録画機といえるだろう。

増田氏制作による「HDD→DVDダビング」メニュー画面ギャラリー

 

HDDには二カ国語音声を記録できない
DVD規格ではHDDへの録画フォーマットは定められていない。つまりダビングの互換性を確保できれば、HDD内はブラックボックスでいい訳だ。このため、各メーカーで工夫を凝らした独自のHDD録画フォーマットが採用されている。本機では、ダビングの高速化を最優先にするため、HDD内の録画データはビデオモードに近いフォーマットで記録されていると推測される。DVD-Rはビデオモード記録なので、こうしたほうが、DVD-Rに高速ダビングする際に、余計なフォーマット変換をせずに済み、高速ドライブの性能を最大限に発揮できるからだ。その反面で、ビデオモードは規格上、二カ国語音声をサポートできない、という制限を受ける。

高速モードでの制限
録画モードLP、EP、MN1〜18で録画した16対9(ワイド)画面の番組は、ダビングリストに追加できない。つまりワイド放送の録画をする際に注意したい。この制限にかかった場合は、編集モードを「フレーム編集」に切り替えて、DVD-RW(VRモード)に高速ダビングするか、DVD-Rに等速ダビング(再エンコード)すればいい。
1タイトルのチャプターには以下のカテゴリー内の映像のみ混在できる。●EP(またはMN1〜6)●LP(またはMN7〜18)●SP(またはMN19〜31)とMN32(DV端子から録画)●FINEとMN32(DV端子以外から録画)。また、4対3と16対9の映像は、1タイトルに混在できない。要するに、異なる録画モード(解像度)を1タイトルに混在できないということになる。この制限を避けるには「DV映像だけで1タイトル、LPモード録画だけで1タイトル」というようにカテゴリー別にタイトルにする。以上の制限は、本機独自というよりも、ビデオモードというDVD規格上の制限といえるが、異なる解像度の場合、自動的に別タイトルになる、などのユーザー補助が必要に思える。
また、ダビングリストにコピーワンス(一回限り録画可能)な番組を追加できない。チャプター分割が0.5秒単位になるという制限もある

一定の条件
ダビングリストとリスト中のタイトルは以下の条件で、自動かつ強制的に消滅する。HDD内の録画番組を1つでも消去した時。ダビングしない番組を消去してもリストが消滅するので注意。コピーワンス番組をHDDからDVDに移動ダビングした場合、HDD側の番組が移動消去されるので、この場合もリストが消滅する。また「ダビング編集モード」を変更した場合も消滅する。このため、ダビングリストは、あくまでもその場限りの一時的なリストと考える必要がある

 

第1回 

長期テスト開始にあたって

第2回  基本操作をチェック
第3回  録画時の設定・画質をチェック
第4回  DVDプレーヤーとしての実力は?
第5回  本機のダビング機能を使いこなす
第6回  本機のダビング機能を使いこなす