(株)スタート・ラボ
代表取締役社長

君塚 雅憲
Masanori Kimizuka

好評価得る抜群の信頼性。
“日本製”の強みを活かし価値商品を積極提案

日本製によるこだわりの高品質と低コストを武器に、メディア市場で存在感を見せつけるザッツ。赤い丸のパッケージデザインが市場での浸透度を深め、「楽らく収納シリーズ」などの新提案にも力が入る。低価格化など課題も少なくないメディア市場に、どのような積極策を仕掛けていくのか。2月に新たに社長に就任された君塚雅憲氏にスタート・ラボの事業戦略を聞いた。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

―― 2月に社長に就任されましたが、メディアのマーケットならびにその事業についてどのような印象をお持ちですか。

君塚 私がソニーでPCペリフェラルのドライブを担当していた90年代中頃は、ちょうどCD―Rが立ち上がるタイミングで、当時は「650MBものデータをコンシューマーが何に使うのか」と揶揄されたりしました。いずれ写真をたくさん入れたり、設計図を納めたりするようになれば、フロッピーディスクでは容量が足りなくなる。10Mとか100Mとかもっと大きなものが必要で、CD―Rへデータを入れて持ち運んで使うようになると説明していましたが、それが現実になりました。
映像記録を主とするDVD―Rが出てきて、それではCD―Rが要らなくなったのかというと、そうではないようです。ピークは過ぎましたが、需要は堅調に推移しています。どこでも読める便利なメディアとして、お客様も手放せなくなりました。CD―R専用のドライブはさすがになくなるかもしれませんが、DVD記録機やさらに次のメディアの記録用ドライブが出てきても、CD―Rに書いて読めるという機能は必ず残っていきます。
DVDレコーダーも、ハードディスクが台頭していますが、地上デジタル放送が普及して、ハイビジョン番組やクオリティの高いコンテンツを録画するケースが増えてくると、ハードディスクはすぐいっぱいになってしまいます。中でもDVD―Rは、価格もこなれてきましたし、大事な記録を誤って消してしまう心配もないことから、これからもますます伸びていくと思います。

―― CD―RもDVD―Rも、ザッツのブランドはPCユーザーの間では非常に評価が高い。しかし、AVメディアとしては、PCほどの強烈なイメージはまだないように思います。その強みを、改めてご説明ください。

君塚 ザッツは、CD―RもDVD―Rも、ITメディアとしてもっともクオリティの高い、信頼性の高いメディアとしてご評価いただいています。しかし、マーケティングの仕方がどちらかというとマニアやアーリーアダプター向けの打ち出し方でしたので、一般の方に向けてのメッセージが十分ではなかったと思います。大切な映像記録を取り扱うDVD―Rでは、信頼性や互換性がCD―R以上に求められます。ザッツのメディアはそこに絶対の自信を持っています。今後ビデオの世界でも、その優位性を皆さんに知っていただけるよう力を入れていきます。
特に、これから地上デジタル放送が普及してくると、ハードディスクに録画したものを1回だけDVD―Rにコピーできる「CPRM」という仕組みがクローズアップされてきます。そこでは失敗は許されません。ザッツではこれまで、ITの世界でも業務用途などの大変厳格な場においても高い評価と信頼を勝ち得てきました。CPRMに対応した商品もどんどん出して参りますので、お客様に安心してお薦めいただきたいと思います。

――  DVD―Rは特にドライブ(レコーダー)の相手が多いですから、互換性という面でも大変だと思います。

君塚 互換性にもっとも関係するのは、ピックアップ、レーザー、レーザーをどのように照射するかというライトストラテジーの3つです。これには各社各様の仕様がありますから、ドライブメーカーさんとの密なコンタクト、日々の情報交換が大変重要になります。ザッツの場合、工場も技術も日本にありますから、短時間で、いろいろな形でフィードバックが行えます。DVD―Rを再チューニングする場合もありますし、逆にドライブメーカーさんに対応いただくケースもあります。そうしたやりとりが非常にこまめにできることは、信頼感をキープしていく上での大きな優位点になっています。


―― デジタル記録だから、どの商品も同じではないかという誤った見方があります。消費者にもきちんと理解されていないために、付加価値商品の価値も認められにくいのではないかと思います。

君塚 そこには2つの側面があると思います。
まず、デジタルだから音質も画質も変わらないとする品質に対する誤解ですが、CD―Rの頃から色々な人が指摘していますが、なぜ違うのか、そこが大変わかりづらいのが課題となります。われわれもいろいろやって来ましたが、その結果として、ジッターの違いが指摘できます。
品質の劣るディスクには、非常に細かな揺れが存在し、データも非常に細かく揺れています。これを、もう少し大きなレベルで見ると、ピックアップでデータを読み出すときに、ジッターが大きい、ピットがきれいにかけていないということになります。すると、サーボが強く働く。こうしたジッターやサーボ信号の揺れというものが、A/DコンバーターやD/Aコンバーター、映像回路等、アナログ系のところに必ず影響を及ぼします。測定器の限界を超えたレベルの話なのですが、確かに音質、画質が変わっているのです。
次に、信頼性という生産レベルの側面があります。ディスクをどのように成型し、どういう管理をして、記録層をどんな部材でつくるか。そこには各社の技術やノウハウ、経験が積み重ねられて、レベルの高い製品が生まれてきます。しかし、ここで問題となるのは、それを、今日つくったものも、明日つくったものも、そして一年後につくったもの、すべてをまったく変わらないレベルでつくることができるかどうかという、工場のコントロールの問題があげられます。
この2つが、どのディスクを使っても同じではなく、違ってくるのだという、大きなポイントになると思います。

―― こうした点をわかりやすく消費者に伝えていかなければなりません。さらには、メーカーが独自に持っているメディアIDの詐称といった問題も出てきました。品質の悪いディスクを使ったばかりに、結婚式のディスクを10年後に見たら見られなかったというのでは笑い話にもなりませんからね。

君塚 メディアIDの詐称については、正直言って、これぞという手がないのが実情です。関係当局への働きかけ等により、何か問題が起こったときにきちんと調査ができる段階まで来たところです。
デジタルで怖い点は、記録ができても、その場でその良し悪しがお客様には判別できないということです。アナログテープの時には、変な音がして、引っ張り出してみるとテープがくしゃくしゃになっていたなど、耳と目で、一般の方でも確認することができました。ですから、まずは信頼できるメーカー、ブランドの商品をお薦めいただきたいと思います。


―― それでは、日本製という品質面での差別化を強みとされるスタート・ラボの事業戦略についてお聞かせください。

君塚 何よりまず基本となります、「ザッツ」のブランドできちんと販売していくためにも、信頼性や品質の高さといった特長をきちんとお客様にわかっていただかなくてはなりません。DVDについては、家庭用の記録メディアとしての歴史がまだ数年と浅いですから、安心して使っていただくために、DVD―Rがどういうもので、どういうことができて、どこに気をつけて使えばいいのかといったレベルから、皆様にわかりやすくお伝えしていくことが大切だと考えています。
スタート・ラボは業務用のCD―Rからスタートした会社で、商用アプリケーションや業務用マスターなどをつくってきました。そこでは、非常にレベルの高い仕様や用途が求められ、オーディオ用ではスタジオで使用する機材も手掛けています。最近は、リタイアを間近にした団塊世代をはじめとしたハイファイへの回帰で、スーパーオーディオCD(SACD)に対する問合せもかなりの勢いで増えています。こちらでも、ソニーが開発してきたDSDの業務用システムの販売やインストールを含めた技術営業があり、ここも引き続き力を入れていきたいと思います。
こうした取り組みがDVD―Rのさらにレベルの高い用途や、その先のブルーのシステムにもつながっていくと思います。

―― 今、DVD―Rが急成長していますが、話題を集める青色系の次世代DVDについてはどのようにお考えですか。

君塚 今はまだザッツはこれをやりますという明確な話をできる段階にはありませんが、これからハイディフィニションの記録がどんどん増えていく中で、DVD―Rでは少し荷が重いようですね。もちろん、DVD―Rはまだまだ続きますが、新しい時代に対応した開発も進めています。これまでも大変厳しい世界でやってきた自負がありますから、次のブルーの時代にも、記録するにはこうなければならないという、一番クオリティの高いものを提供していく自信はあります。メディアの技術を積み上げてきた太陽誘電、システムクリエイターとしてのソニー、それぞれに自負があります。それらがうまく融合し、ザッツブランドの大きな強みとなっています。

―― ザッツでは、使い勝手という面からも「楽らく収納シリーズ」という新しい提案を展開されていますね。

君塚 DVD―RやCD―Rを保有する枚数がこれからもどんどん増えてきますが、特にDVD―Rの場合には、ドラマをシリーズでライブラリーするといったケースも少なくありません。そこで、きちんと収納でき、かつ、検索もしやすいという観点から、「楽らく収納シリーズ」として商品化し、今まで3モデルを販売してきました。おかげさまで認知度もかなり上がり、評価も高まりつつあります。
ディスクを入れる不織布ひとつとっても、出し入れしたときに傷がつきにくいとか、何度抜き差ししても角が折れ曲がらないなど、材質やデザインにも試行錯誤を繰り返して商品化しています。こうしたアイテムも、別途購入すると結構割高で、一緒にお買い求めいただくことでの割安感も含め、ぜひ、購入して一度お試しいただければ、そのメリットがご理解いただけると思います。「楽らく収納シリーズ」は引き続きラインナップを拡大・強化していきますので、ご期待ください。

―― ソニーというものづくりの会社から、マーケティングの会社に移られたわけですが、そこで何かお気づきになったことはありますか。

君塚 今は販売会社といえども、商品を右から左へそのまま流していたのでは通用しません。お客様や販売店の方から何か聞かれたときにも、商品の中身をきちんと技術面からも把握し、説明できるだけの知識を身につけていないとだめな時代だと思います。

―― デジタルメディアではそうした意味合いがさらに大きくなるのではないでしょうか。アナログテープのときにあったグレード別の展開を、DVDメディアでもぜひ浸透させたいですね

君塚 さきほどもお話したように、デジタルにはアナログと違ったわかりにくさがあります。「このメディアを使うとこういうメリットがある」ということを、どれだけお客様にきちんと訴えられるかではないでしょうか。
メディアでは、原油高に伴って材料費も非常に厳しい状況で、低価格化が依然として課題のひとつでもありますが、そうした中で、「少し割高でも品質のよい商品を使おう」という動きがユーザーの間に出てきていることは、われわれにとっては非常に頼もしい限りです。

―― それでは最後に販売店へメッセージをお願いします。

君塚 ザッツブランドは、いつでも確実に録れて、いつまでも残せることを大切にしています。「楽らく収納シリーズ」ではさらに使い勝手にも着目し、大切な映像記録を収めたメディアを、きちんと守りながら、抜群の収納性・検索性を実現しています。日本製という強みを生かした信頼性の高い商品の開発にこれからもどんどん力を入れて参りますので、店頭でもぜひ、お客様に自信を持ってお薦めできる安心できるメディア商品としてご推薦いただければと思います。

◆PROFILE◆

Masanori Kimizuka

1950年生まれ、神戸市出身。1973年ソニー(株)入社。オーディオ事業部にてカセットデッキの設計やDATの開発プロジェクトに携わった後、93年にはデータストレージ事業本部でCD−ROMドライブやCD−Rドライブの開発・設計を手掛ける。98年光デバイス事業部企画室室長、デバイスソリューション・カンパニー商品戦略部統括部長を歴任。06年2月(株)スタート・ラボ代表取締役社長に就任する。趣味は音楽鑑賞。