日本インターナショナルオーディオ
協議会会長

安田 耕太郎
Kotaro Yasuda

輸入オーディオ協議会を
発展的に改組して
IASJを新たに設立

平成17年12月1日に「日本インターナショナルオーディオ協議会」が、業界のさらなる発展を目的として結成された。その初代会長にハーマンインターナショナル(株)代表取締役社長の安田耕太郎氏が就任。新組織では、従来、輸入オーディオ協議会を形成していた輸入商社に加え、国内メーカーも正会員として参加し、役員にも名前を連ねることとなった。初代会長に就任間もない安田耕太郎氏に設立の経緯、協議会の目的と今後の活動計画を聞いた。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

ハイエンドオーディオは
より豊かな人生を過ごすための
引き出しを増やします

グローバルな規模での
ハイエンドブランドを結集

―― 日本インターナショナルオーディオ協議会が新たに設立されました。最初に設立の経緯から聞かせてください。

安田 日本インターナショナルオーディオ協議会は、従来の輸入オーディオ協議会を母体として生まれたものです。輸入オーディオ協議会設立からほぼ四半世紀を経過して、設立当時と今ではハイエンドオーディオを巡る環境が変化してきました。
輸入オーディオ協議会はその名の通り、輸入品を扱う商社・メーカーを正会員として構成された組織でした。その主たる活動として現在では東京インターナショナルオーディオショウと呼ばれるショウへの出展社は、当初はほぼ正会員と同じでした。正会員の増加と共に出展社も増加してまいりました。ところが1997年から輸入品を扱っていない国内ブランドのラックスマン社やアキュフェーズ社などが、客員出展という形で東京インターナショナルオーディオショウに参加するようになり今日に至っています。
国内ブランドでは、例えばティアックエソテリックや、マランツなどもハイエンド製品を作っています。今やハイエンド=輸入オーディオという時代ではなくなってきています。このような状況の変化に伴い、協議会正会員と東京インターナショナルオーディオショウの出展社は当然同一であるべきだという空気が醸成されてきました。

―― 基本的に輸入品に限るという原則を見直されたということでしょうか。

安田 そうです。東京インターナショナルオーディオショウを、協議会会員全社の参加に基づくショーへと厳密に位置付けることで、文字通り日本を含めたグローバルなオーディオ・ブランドが一堂に会するショーに変えていこうということです。そのためにはショウに出展してきた国内のハイエンドオーディオメーカーも正会員として正式に加わった組織に変更することが必要になってきました。また、ショーを主催する会の名称も実態に合わせて変更することが自然です。そこで生まれたのが、「日本インターナショナルオーディオ協議会(インターナショナル・オーディオ・ソサエティー・オブ・ジャパン)、略称・IASJ」です。

―― 東京インターナショナルオーディオショウとその主催団体としての会の整合性をとったということですね。

安田 輸入オーディオ協議会の時代には正会員は東京インターナショナルオーディオショウへの参加を義務付けられていませんでした。また、客員会員として出展していた非会員社もありましたが、新しい協議会のもとでは東京インターナショナルオーディオショウの出展社と協議会正会員は完全に一致します。
これによってショウの運営、将来の展開などに関して会員全社の一致した共同歩調がより可能になります。


ハイエンドオーディオの魅力を
より多くのお客様に伝えたい

―― 「日本インターナショナルオーディオ協議会」の設立趣旨を聞かせてください。

安田 設立の趣旨は会則にもあるように、「国際的に優れたオーディオ製品及び関連機器の適正な普及と発展を目的とし、業界の健全な向上に努力していく」ことです。
私たちが取り扱っているハイエンドオーディオ事業は、経済的なメリットのみを目的に事業を興し、製品が作られているわけではありません。創業者個人もしくは有志の思い入れや夢、趣味性などを表現するために、ハードという経済的な活動を伴う物体に載せることによって世の中に提供していくということがその本質にあります。
われわれとしては、そのように作られた製品とその本質・性能を一人でも多くのお客様に理解していただくために啓蒙活動を行い、販売に繋げていかなければいけません。出版社や販売店の皆様方と一緒になって、製品に込められた夢を一人でも多くの人に理解・共有していただき、結果として需要を喚起していくような活動をしなければいけないと思っています。

―― 会員構成と入会手続きについてはいかがでしょうか。

安田 従来からの輸入オーディオ協議会のメンバーは、基本的にIASJのメンバーに移行します。また、新しくメンバーに加わるには、正会員の推薦を受けた上で、総会での投票によって一定数以上の賛成を得ることが会則で定められています。
本会に新規に入会するための具体的な条件や手続きとしては、設立後3年以上の営業実績を得た法人、あるいはそれに準ずる資格を有すると認められた法人で、会員2社の推薦状と電気用品安全法に基づく「事業届け出書」コピーを添えて、所定の申し込み用紙で入会を申し込んでいただくことになります。その上で、総会において検討の上、出席者の三分の二以上の承認を得られれば入会が認められます。今回、この手続きを通して、アイシン高丘、ラックスマン、アキュフェーズの3社が新たにメンバーに加わりました。

―― 電気用品安全法に基づく「事業届け出書」コピーの提出を入会申請の条件にされました。

安田 今年の4月1日から電気用品安全法の運用が本格的に実施されます。もしこれに違反した場合には、最大1億円の罰金もしくは最大一年の懲役刑に処されるという定めがあります。この法律の対象に該当する製品を取り扱うわれわれ会員社では、当然、これを遵守しなければいけません。製品全量の個別検査を行い、安全基準にパスした製品のみがPSEマークを貼ることを許され、販売できるということです。したがって当協議会の正会員社である以上、PSEマークが付けられた製品のみを販売することを会員全社で申し合わせました。これは単に法律を守るということだけではありません。それが消費者の安全にかなうことですので、絶対に遵守しなければいけません。


東京でのショーを軸に
地方での催事も主催したい

―― 輸入オーディオ協議会の時代には東京インターナショナルオーディオショウの開催がその活動の中心でした。新しい組織での活動として、どのようなことを計画されていますか。

安田 会則では「会員相互の親睦、あるいは日本各地で開催するハイエンドオーディオショーの開催およびその主催者たる役割など」となっています。先ほども言いましたように、われわれの最大の課題はブランド及びその製品の啓蒙・促進活動にありますので、当面の活動の中心は、有楽町の東京国際フォーラムでの東京インターナショナルショウの開催・運営ということになります。

―― IASJにとっての今後の検討課題は何でしょうか。

安田 先程申しました通り、協議会の会則では東京インターナショナルオーディオショウ出展社と協議会正会員はイコールです。新しくショウへの参加を希望される現在非正会員法人、即ち協議会入会を希望する法人に対して如何に対応するのかという問題があります。これに加えて、東京以外の地方への活動の拡大、関連団体との結びつきや協力関係をどうするかなども今後の検討課題です。中でも最大の問題は、東京インターナショナルオーディオショウの会場の問題です。
東京インターナショナルオーディオショウ(旧・輸入オーディオショウ)の会場を有楽町の東京フォーラムに移して、今年でちょうど10年目になります。入場者数も当初の3倍以上と大きく伸びてきました。昨秋のショウでは海外・国内合わせ合計154にも及ぶブランドの製品が出展され、非常に活気あるショウになってきております。東京フォーラムは、立地の良さに加えて、会場としての品格やオーディオ機器を聴いていただくための環境という点で世界的に観てもこれほど申し分ない条件を持った会場は他に知りません。
ただ、唯一かつ最大の問題は部屋数が限られていて、入会を希望するすべての法人を収容することができないことです。これが大変頭の痛いところです。今年の秋のショーでは限定された部屋数の枠の範囲内で出展社数が昨年よりも若干増えることが見込まれています。今後、さらに協議会への入会を希望する会社、即ちショウへの出展を希望する会社が会場の物理的限界を超えて出てきた場合にどう対処するかについては、今後の重要な検討課題です。
東京フォーラムの地下部分には広い催事スペースがあります。仮にそのスペースを会場の一部として使用することが協議会で正式決定なされたとしても、きちんとした試聴室を作るとなると、経済的な負担が大変です。また、個室を使われる正会員との間での公平さという問題もあります。これをどう解決していくかということが将来に向けての大きな課題です。

―― 地方への活動の拡大では、どのようなことを考えられていますか。

安田 東京インターナショナルオーディオショウは、オーディオファンの間にすっかり定着しています。東京以外の各地での催しについては、われわれは主催していません。
会員の賛同を得ながら、将来的には可能な限り、東京以外の地域においてもショーの主催が出来ればしていきたいと考えています。特に大阪は東京と並ぶ二大経済圏のひとつですので、そこでも協議会が主催できるショーを開ければと思っています。現在、大阪で開催されている大阪ハイエンドショウ会場は狭いので、今でも参加を希望されているすべての会社の出展を受け入れられていないのが現状です。新たな会場で新しく開催させるにしてもそのための時間と周到な準備が必要です。会場の問題も含めて、今後、様々な点での検討や準備が必要です。
九州や名古屋などその他の地域についても、われわれが主催するショーを開く積極的な意義、地域関係者のご意見、運営上の課題などは今後とも検討を続けていきたいと思っています。ただ、IASJは任意団体で、会の運営費はそれぞれの会員社で分担しています。催し物を行うには資金的にも人的にも負担が発生します。各正会員の考え方の相違を充分に踏まえて、会員各社に諮りコンセンサスを得て進めていかなければいけません。


業界を挙げた市場活性化の
中核的な役割を果たしたい

―― 国内のオーディオ団体にはIASJの他にオーディオ協会などがあります。業界全体を活性化させていくにあたっては、関連団体の連携を強めていくことも必要だと思いますが。

安田 非公式には個々のメンバーから様々な意見が出ていますが、新たな協議会が発足したばかりで、現段階では協議会としての意見はまとまっていません。ただ、今後、検討しなければいけない問題であることは認識しています。
ただ、ここで協調しておきたいことは、ただ、連携すればいいということではなくて、いかにしてマーケットの活性化と消費者にとっての最大の利益を生みだせるかという目的の達成に向けて意義がある連携を作れるかどうかということです。
われわれ協議会の正会員の中には、オーディオ協会の会員にもなられている法人さんもいらっしゃいます。ふたつの組織の関係をどうしていくかについては、今後のお互いの推移を見守りながら考えていきたいと思っています。

―― 最近の国内オーディオ市場をどのように見られていますか。

安田 協議会のメンバーからは、昨年末においては予想していた以上に製品の動きが良かったという声を聞いています。日本経済がバブル以降の低迷を脱しつつあることに加え、団塊の世代を中心とした可処分所得の比較的高い消費者の間でのわれわれの製品に対する理解度の高まり、そこにメーカー側の働きかけなどが合致するような兆候が出てきているように思います。ようやく長いトンネルから抜け出しつつある感触を持っています。
市場では、今、デジタルオーディオプレーヤーや液晶・PDPなどの薄型フラットテレビが爆発的に売れています。オーディオ需要がそれと同じように拡大することは見込めませんが、明るい材料が見えてきています。巷間言われているように団塊世代の約1000万人近い人達の可処分所得をわれわれ業界の製品の購入に充ててもらえる機会も生まれてきています。問題はわれわれが、このチャンスをどう活かしていくかです。
オーディオ産業が苦しいといわれている中にあって、各社からは非常に素晴らしい新製品がどんどん発売されてきています。今年1月に米国ラスベガスで開催されたCESでも、世界各地のメーカーから目をみはる勢いでハイエンド分野での新製品が発表されていました。これはまだまだわれわれの業界のバイタリティーと体力が十分残っていることの証しではないかと思います。

―― 最後に業界の皆様方へのメッセージをどうぞ。

安田 オーディオメーカーや輸入商社と雑誌社の皆様方、評論家の先生方は、ある意味でひとつの船に乗ってお客様の方に一直線に向かっています。そしてその間に販売店さんが補完関係をお持ちの立場で位置しています。
市場の中でライバル関係にある個々のブランドが、切磋琢磨しながら競合していくことについては望むところです。それがいい製品を生むことにつながり、いい製品が雑誌や評論家の先生方の活動をより活発にしていきます。そしてそれによって、ユーザーの購買に結びついていくという図式が描ければベストです。
ハイエンドオーディオ製品を聴かれた方には、その価格以上の精神的な満足感を得ていただくことができます。それによって人生をより豊かにする引き出しを増やしていただくことになります。
ユーザーや市場に対して、業界に携わっているわれわれ商社やメーカー、雑誌社や評論家の方々、そして販売店さんたちが力を挙げて市場の活性化に取り組んでいくことができることを切に望んでいます。日本インターナショナルオーディオ協議会では、その中核的な役割を担っていきたいと考えています。

◆PROFILE◆

Kotaro Yasuda

1946年福岡県生まれ。慶応大学在学中に2年間、80カ国を働きながら旅をして国際感覚を磨く。1971年ティアック(株)入社。香港支店長を経て、1977年ハーマン入社。ハーマン本社アジア地区セールスマーケティング担当総支配人、ハーマンインターナショナル(株)副社長を経て、1999年1月同社代表取締役社長に就任。2005年12月日本インターナショナルオーディオ協議会の初代会長に就任。テニス、スキー、登山など、スポーツを愛好する行動派。