AV REVIEW

AV REVIEW特選 製品批評

SANYO
LP-W1000
液晶プロジェクター \898,000

 

文:吉田伊織
TEXT BY Iori Yoshida

250WのNSHランプで1200ANSIを実現

これは昨年のLP−A7に続いて三洋が放つホームシアター用液晶プロジェクター。かなり大型だし価格設定も最上級。それに明るさが家庭用としては最大級という大作だ。

最初にその明るさをもたらす光学系の話をしておこう。光源は250WのNSHランプ。これはウシオ製の高圧水銀ランプであり、フィリップスのUHPランプと同系統と考えていい。家庭用というとLP−A7(500ANSIルーメン)のように150Wかそれ以下の光源を使うのが普通だが、こちらは強力光源により1200ANSIルーメンを確保しているのである。しかも2台スタックすると最大2400ANSIルーメンとなる。とすると、これは業務用をも意識した基本設計に違いない。学校とか公共施設、あるいは映画の録音スタジオなど、大きな光パワーを要するプロジェクターの需要は強まっているのである。ちなみに本機は静音化にも配慮していて、騒音レベルは39dBに抑えたという。家庭用としてはまだ大きいが、たしかに甲高さは感じない。

投映レンズが交換式というのも多方面の用途を意識しているからだ。投映レンズの標準品はf=48.4〜62.8mmの1.3倍電動ズームとなっている。画面投映位置を上下にシフトする電動レンズシフト機能も備わっている。標準レンズでの投映距離は3.5mで100インチが可能、80インチは2.7mだから、標準的な和室でも十分使いやすい。14mの投映距離で400インチまで想定しているのはさすがハイパワー機である。

ところで、強力な光源にさらされる液晶パネルは、偏向された光の散乱が画質を損なう問題がある。そこで必要な方向以外の光を吸収する独自の光学フィルターを液晶パネル部分に初採用している。これが黒浮きを抑えて、力強い表現力につながるわけだ。

また光源からの光をRGBに分解するダイクロイックプリズムは、色再現性に大きく影響するのだが、これも新設計のものを採用。これまでのデータプロジェクター用のものより緑成分を抑えて、フィルム調の色表現に近付けるように配慮したという。

何とコントラスト比は500対1を確保した

さて、もうひとつのキーデバイスである液晶パネルだが、これは画素構成1366×768の3板式であり、いわゆるワイドXGAである。LP−A7は800×600のSVGAだったから大きな違いだ。ところでこのワイド液晶パネルのサイズが1.35インチというと何かを思い出す。そう、ソニーのVPL−VW10HTに採用されたものと同じデバイスなのである。

プロジェクター用液晶パネルの製造メーカーは数少ないので、こういう水平分業は当然だろう。これまでソニー以外に採用例がなかったのは意外なくらいだ。時代はDLP方式に流れつつあるのだが、高級ホームシアター用としては、安定供給や良品率、色フリッカーの問題もあって液晶の利点はまだ捨て難いと思う。

ところで、先行のVPL−VW10HTが大人気を博したのは、従来の液晶プロジェクターとは隔絶した自然画の表現力が評価されたからだ。とすると、三洋としてもそこが生命線であり、しかもDLP方式の高コントラスト性能と競わなければならない。先述の光学的な「かぶり」防止策はそのコントラスト対策であり、結果としてコントラスト比500対1を確保しているのには驚く。LP−A7は400対1であったし、並のDLPプロジェクターと同等かそれ以上の数字なのである。いかにもサンヨーの意気込みが感じられる特性である。また10ビットのデジタルガンマ補正機能により、滑らかな階調表現力を得ているが、これはLP−A7を発展させた技術だろう。

それと画素変換やプログレッシブ変換などの映像処理回路については、画素構成が高精細になった関係もあり、LP−A7のものよりずっと高性能の新しいプロセッサーを採用している。もちろん1080iのハイビジョン信号の直接入力が可能であり、その精細さを十分生かせるという。

入力端子で意外なのは、D端子が装備されていないこと。家庭用としては不便な気もするが、コンポーネント信号はRCA端子とRGB兼用の5BNC端子の2系統が使えるというのは、画質を重視する立場から歓迎したい。

BSハイビジョン映像はさすがに鮮鋭で力強い

本番直前の試作機の画質を「シネマ」モードで確認してみた。BSデジタルハイビジョンはさすがに鮮鋭で力強い。140インチスクリーンに目一杯投映しても白ピークがしっかりと伸びていて、光沢の触覚をもよおす質感など、ワイドパネルならではの緻密な表現力に圧倒される。フィルム映像も雄渾な陰影表現がたしかに得られる。しかしゲイン1.3のマットスクリーンでは黒の締まりがもうひとつ。とはいえ、ただ浮いているわけではなく階調性はLP−A7以上に表現できているので、「シアターグレイ」のように暗部を巧みに沈めるスクリーンだと、さらに本格的な造型力が得られることだろう。

100インチなど「中画面」にすぎない、という大画面派にとって注目するべき強力なプロジェクターである。
<LP-W1000のニュースリリース:http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0103news-j/0313-1.html

正面向かって左側面に位置する端子部。RCAコンポーネント入力を1系統ほかBNC端子を装備。左上にはパソコン用RGB端子(15ピン)およびシリアルポート(9ピン)がある

LP-W1000 SPEC

●方式:3原色液晶シャッター投映方式 ●光学系:ダイクロイックミラー分離/プリズム合成方式 ●液晶パネル:サイズ/1.35型×3枚、アスペクト比16:9、駆動方式/ポリシリコンTFTアクティブマトリクス、画素数/1,049,088画素×3枚、配列/ストライプ ●投映レンズ:電動ズーム・フォーカス(1〜1.3倍)、F1.8〜F2.1、f=48.4〜62.8mm ●光源:250W NSHランプ ●画面サイズ:最小31型〜最大400型 ●色再現性:フルカラー(1677万色) ●明るさ:1200ANSIルーメン(16:9投映時) ●周辺照度比:1 90%以上 ●コントラスト比:1 500:1(全白/全黒) ●騒音:39dBA ●対応走査周波数:水平/15〜100kHz、垂直/50〜100Hz、ドットクロック/180MHz以下 ●表示可能解像度:RGB信号入力時/1366×768ドット、ビデオ信号入力時/NTSC:800TV本、PAL/SECAM:800TV本 ●入出力:コンピュータ入力(1系統)/映像・ミニD-sub15ピン×1、音声・RCA端子×2 、コンピュータ入力/ビデオ入力兼用(1系統)/ 映像・BNC端子×5(VIDEO又はY/Cb/Cr又はY/Pb/Pr又はRGBHV)、S端子×1、ビデオ入力(1系統)/映像・RCA端子×3(VIDEO又はY/Cb/Cr又はY/Pb/Pr)、音声・RCA端子×2、制御入出力、他/シリアルポート(1系統)・ミニD-sub9ピン、音声モニター出力(1系統)・RCA端子×2、ワイヤードリモコン接続端子(1系統)・ステレオミニジャック×1 、外部スピーカー接続端子(1系統)・ステレオミニジャック×1、インピーダンス8Ω ●使用温度:5〜35℃ ●消費電力:360W(待機時11.7W) ●外形寸法(突起物含まず):316W×164H×480Dmm ●質量:9.2kg