新製品批評
Phile-web >> 製品批評 >> 東京防音GACシリーズ >> 2チャンネル視聴編

 



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GACシリーズの試聴テストは音元出版試聴室にて行った。はじめに2chオーディオの試聴環境をつくりこんだ。GACシリーズ各製品の組み合わせパターンについての詳細はこちら

 


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GAC-900を天井の各コーナーに配置した。ルームチューニングにおいて、まずは天井の四隅をおさえることを基本とした。これにより、明らかに音に明快さが加わった。

 


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シンプルな平面タイプのGAC-500は設置に様々な工夫を加えることができる。今回は2枚のGAC-500をタテに重ね、リスニングポジションの背面に配置することにより高さを調節してみた。

 


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GAC-500/600/700/900それぞれの持つ効果が、組み合わせて使うことにより一層強力に発揮される。高さ調節など、設置位置の微調整をそれぞれのオーディオルームに最も適したかたちで行うことができればベストだろう。

理想の2chオーディオ試聴環境を完成させる

一般に部屋というのは物が置いてあるものである。何もない部屋というのは珍しい。この「物が置いてある」という状態が意外に大事なのである。物があると音が拡散される。あるいは吸収されることもある。カーテンもかかっているだろう。いずれにしても通常のリビングルームや書斎のような部屋であれば、極度に音が響きすぎるということはないはずなのだ。

今回テストを行った音元出版の試聴室はそういった普通の部屋とは違って、試聴機材以外のものがほとんどない。壁がかなりの部分そのままになっている。つまり最も好ましくない状態である。ここを例に、GACシリーズの各製品を使ってチューニングの実験をしてみることにする。

それぞれの組み合わせ方法により、異なる音場効果を調節する

まず最初にGAC-900を4個配置する。天井の四隅である。ルーム・チューニングで初めに手をつけなければならないのが天井の隅だ。大概そこには何もない。だから確実に音を悪くしているはずなのである。実際各コーナーにGAC-900を配置してみると、高域の曇った感触が半ば以上取れる。解像度が上がったのはむしろ当然と言っていい。部屋全体のこもりといったものではなく、部分的な歪みや濁りが取れるため音調全体が明快になるわけである。低域も明瞭になり、骨格がはっきりしてくる。コーナーを押さえたことによる効果は他と競合するわけではないので、これはこのままにして次に進む。

部屋全体として最も気になるのが定在波である。ことに前後のそれは影響が大きい。この部屋でも高域に強いピーク感がある。おそらく定在波のせいである。リスニング・ポジションの背後にGAC-500を2枚並べてみる。これで定在波がかなり減少するはずなのだが、椅子の高さとの関係でやや位置が低い。何か台を置いて持ち上げるとちょうどよくなる。やはり耳の高さに吸音材があるとないとではずいぶん違う。この状態で奥行などの響きが出やすくなり、高域のピークが相当気にならなくなった。声自体の存在感やハーモニーの余韻はよく出るが、しかしまだ若干定在波があるようだ。

そこでさらに2枚上に積んでみる。この効果は大きく、S/Nがぐっと増し、楽器のディテールが非常に鮮明になる。響きからくせが消え、質感が自然だ。位置関係や存在感など立体的な感触が明確になる。ジャズではピアノの彫りが深まり、タッチのニュアンスが細かく音色が骨太になる。ピークが消えたのはかなり大きい。ベースもリアリティが高い。和音の厚みが違う。すぐそばで聴いている実在感がある。

次はGAC-600をスピーカーの背面に置く。これは定在波の除去というより、背面のポートから出る音のコントロールという意味が強い。音場の整理は利いて低域のエネルギーも増す。音調全体が締まった印象で、ハーモニーの感触がよく響きが厚い。試しにこれをGAC-500に替えてみる。そしてGAC-600をスピーカーの真横よりやや前に出して配置する。いわば発展形だが、輪郭がしっかりして密度が高く、芯の詰まった音調だ。エネルギーも十分に取れている。緻密さが増した印象である。できれば600は位置や高さをずらして使いたいところだ。完全に対称にしない方がいいこともあるからだが、下手にいじると左右のバランスが崩れて音場がおかしくなることもあるのでケースバイケースだ。

最後にGAC-700を前方コーナーに置く。これで完成形だ。音場が深く静かになり、始めに比べてS/Nが圧倒的にいい。音圧が下がる感じがあるのはそれだけ吸音が利いているということで、もちろんボリュームを上げれば済む。分離がよく音場は鮮やか。テスト当初と比較すると見違えるほどの音になった。