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Report : 美崎 薫


■ 雷の被害は防げる

木村富至マネージャーは、「雷は天災とはいえ、被害を防ぐことが可能です」とおっしゃる。その切り札となるのが、オーディオテクニカ製のサージバスター・シリーズである。

「誘導雷」による雷サージ電流の被害は、どうすれば防げるのか。まず、「誘導雷」の特徴を理解して、それに対応した機器を用意する必要がある。「誘導雷」は、雷が近づいてきて遠ざかるまで何度も発生する。しかも、「誘導雷」の被害は、雷というと想像しがちな何千Vとか、何万Vという電圧ではなく、そのとき機器に流れる電流値の方が重要なのである。

以上を踏まえると、
(1)大容量のサージ電流特性をもち、大電流に耐えられること
(2)連続した何度もの誘導雷に耐えられること
に加えて、
(3)使用素子の故障による発熱により、火災の発生しない構造
というのが重要である。雷保護の主な方式は、バリスターやアレスターと呼ばれる避雷素子を用いて、雷サージ電流を大地アースに流して接続機器を保護する方法である。


★ バリスター

バリスターは、定電圧ダイオードのような働きで異常電圧をアースへ逃がし、危険のない電圧分だけを機器へ伝えることができる素子。この電圧分は制限電圧と呼ばれ、素子自体の規格で決定する。

応答速度が速く、大電流に耐えることができるが、素子は1〜2回で劣化するので、定期的に交換する必要がある。半導体素子であるため、制限電圧より大きな電圧が長く加わる(電圧の大きさにもよるが数秒〜1分位で)と発熱のため故障し短絡する。その後、短絡のため大電流が流れて一瞬で破壊される。

選択の目安は、雷サージ電流が大きく(10,000Aが理想)、エネルギー耐量の大きなものを選ぶのがよい。1回の雷のあいだに繰り返し発生するという「誘導雷」の特徴から考えると、たった1回の「誘導雷」でも素子が劣化しきって、まったく効果がなくなってしまうこともある。比較的安価であり、最近のAC電源タップには、はじめから内蔵されていることも多い。


★ アレスター

アレスターは、内部に火花放電を起こすことで異常エネルギーを吸収、大地へ逃がす放電管素子である。劣化が少なく、大電流に耐えることができるが、異常がなくなっても自己放電を続けやすい性質をもっている。この性質を続流と呼ぶ。

大電流に耐える点で非常に優れているが、50V以上の電圧が常時かかっているような回路では使用できない。そのため電源には使用できず、主に通信回線に使用する。


★ サージバスター回路(アレスター+バリスター方式)

アレスター方式
バリスター方式
サージバスター回路
サージバスターは、アレスターとバリスターを組み合わせることで、両方の短所を補うように作られた。すなわち、アレスターの続流という欠点をバリスターが補い、バリスターの劣化という欠点をアレスターが補い、相乗効果で信頼性を高めている。

サージバスターは、大量の雷サージ電流を何度もバイパスさせることができる。「誘導雷」では、1回の雷の間に繰り返しサージが発生することがあるが、サージバスターならばナノセカンド(十億分の1秒)単位の超高速応答と、10,000Aにおよぶサージ電流耐量を両立しているため、くり返し発生する「誘導雷」にも、数百回は耐え得る。特に電源回路の保護に有効で、発電所などの設備にも同じ方式がとられている。


■ 技術に裏付けされた実力製品「SURGE BUSTER」


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アンテナ、電話、電源にひとつですべて対応したサージバスターATC-SB7F。実際に配線してみた
つまりサージバスターなら、単におまじないのお札のような気休めではなく、実際に有効な雷対策が可能なのだ! 雷は繰り返し起こる可能性がある、という話からも、これは朗報と考えた。ケースの樹脂材料も難燃性樹脂のUL94V0材を使用し、安全性を確保しているという。

使い方は簡単で、従来壁のタップから直接とっていたACや電話、アンテナなどを、サージバスター経由でとるようにすればよい。アンテナは75Ω同軸ケーブルのF型フラグに対応している。

当然、サージの対応回数には寿命があり、インジケーターが消えると、そのサージバスターは、サージ対応としては使用できなくなる。ACタップ式の場合は、ACタップとしては使用を続けることができる。


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従来、バリスターの薄型タイプをおまじないのお札のように使っていた。発火の危険があると知り、即座に使用を停止 サージバスターATC-SB6に変更してみた。これで安心 サージバスターATC-SB26を使用しているところ。ACタップと電話回線に対応している


■ 雷の脅威もこれで安心

サージバスターはお札タイプのものに比べて高価ではあるが、大事な機器を雷から守るための保険として、信頼を買うと考えれば導入もやぶさかでない。

サージバスターは、電源用、電話回線用、アンテナ用など様々な種類が用意されている。中でもATC-SB7Fは、テレビ、ビデオ、ケーブルテレビ、衛星放送チューナーなど電源とアンテナ、電話のすべてをいちどに雷から守ることができる。

上位モデルのカウンター付きモデルATC-SB9では、サージバスターの回路の稼働回数がインジケーターに表示されるので、実際に働いた経過を知ることができ、安心感もひとしおである。もちろん、雷は落ちない方がよいのだが…。


1.  急増する雷被害の実態に迫る!
2.  SURGE BUSTERで安心AVライフ