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DVDレコーダーの先駆ブランド・パイオニアの最新モデルは、全5機種。録画機としての性能とよりよい使い勝手を追求したラインナップを、ひとつひとつ紹介していこう。
text by
増田和夫
「録画機らしいスタイルとスペック、クオリティに惹かれる」というのがパイオニアレコーダーの印象だ。パイオニアのDVDレコーダーは、ハイブリッド機4機種+単体機1機種の全5モデルという豊富なラインナップから選べる。どのモデルもスタイルはほぼ同じで、高さ69mmというスリムなフォルムを実現している。パイオニアとルネサステクノロジー社が共同開発したレコーダーエンジンLSIを採用し、11個の従来回路を1個のLSIに統合することでスリム化を達成している。また、回路の統合によって信頼性の向上と、低ノイズ化&低消費電力化も達成している。カーオーディオ・カロッツェリアのデザイナーの手によるデザインには、同社らしい仕上げの良さと、落ち着いたスタイリッシュさが感じられて好感がもてる。
HDD搭載ハイブリッド機の録画機能
〜親切機能を追加、よりバランスのとれた録画機に
●高速DVDドライブ、起動・終了の早さを実現
まずハイブリッド機共通の録画機能を見てみよう。
パイオニアレコーダーの基本コンセプトは、「DVDドライブを活かすレコーダー」といえる。光ディスクの提唱メーカーであり、ドライブメーカーでもある同社の強みを活かして、最新のドライブ技術をいち早く投入し、その能力を最大限に活用している点が大きな特徴といえる。最近では高速DVDドライブを搭載したハイブリッド機が増えたが、パイオニアは高速ドライブの元祖で、1年以上以前のモデルDVR-77H、DVR-99Hですでに、高速ドライブによる最大24倍速ダビングを実現していた。こうした点に同社の技術力と、使いやすさへのこだわりが感じられる。最新機種では、DVD-RW(VRモード)→HDDへの無劣化書き戻しダビングにも新たに対応している。録画機として違和感のない起動と終了の早さを実現している点にもドライブのノウハウが感じられる。
●HDD→DVD高速ダビング中もHDDの録画・再生が可能
高速ダビング機能とともに、とても重宝するのがマルチタスク機能だ。これはHDD→DVD高速ダビング中に、HDDの録画・再生ができる機能で、ダビング中にテレビ番組が始まって録り損ねた、というトラブルが防げる。特に頻繁に録画&ダビングをする録画ファンには必須の機能といえるだろう。さらに、DVD-RとDVD-RW(ビデオモード)の「焼き増し」が手軽にできる「ディスクバックアップ機能」も新たに装備している。バックアップ中のHDD録画も可能だ。マルチタスク機能もパイオニアが元祖で、その機能の先見性を高く評価したい。
前モデルは、DVDへの高速ダビングを前面に出した、かなり尖ったコンセプトの個性派デッキだったが、今回のシリーズは、前モデルの高速性能を継承しつつ、親切機能を追加し、GUI(操作画面)も全面的に見直して、よりバランスのとれたフレンドリーな録画機に進化している。次に各ハイブリッド機の特徴を見てみよう。
●DVR-510H-S/DVR-515H-S
〜80GB/120GBのHDD搭載。上級機と同じ使い勝手のよさを実現

DVR-510H-Sは、80GBのHDDと高速DVDドライブを搭載したハイブリッド機のエントリーモデルだが、高速ダビングやマルチタスク機能、ディスクバックアップ機能などの基本スペックは全モデル共通で、ハードに依存しないGUIも同じ仕様となっている。このため、使い勝手の良さは上級機と変わらない。手軽にパイオニアスタイルのハイブリッド録画が楽しめる点でビギナーはもちろん、録画ファンのサブ機としても勧められそうだ。
DVR-515H-Sは、510HのHDDを120GBに大容量化したモデルで、スポーツや連続ドラマなどを、より長時間録画したい人向きといえるだろう。
●DVR-610H-S
〜160GBのHDD搭載。DVカメラコントロールもできるDV入出力端子を装備

DVR-610H-Sは、160GBの大容量HDDと高速DVDドライブを搭載するほか、DV端子を備え、DVカメラに対応している。DVカメラコントロールのほか、シーンの変わり目を検出して自動的にチャプター分けをしてくれる「DVまるごと取り込み」機能を備え、手軽にカメラ録りのDVD化が可能だ。DV入力だけでなくDV出力も可能で、DV音声1・音声2のミックスダウン比率が選べるなど、少し凝ったカメラ編集にも対応できる。

DVR-710H-S〜160GBHDD搭載のハイエンドモデルをテスト。
「テレビを録りたくなり、DVDも見たくなる」ような、使いやすさと高画質

●快適ダビングとマルチタスク機能を実現
そして今回テストしたDVR-710H-Sは、シリーズのハイエンドモデルという位置づけだ。160GBのHDDのほか、DVD-R4倍速記録の高速ドライブを搭載し、HDD(EPモード録画時)→DVD-Rへ最大24倍速の高速&無劣化ダビングが可能だ。快適なダビングとマルチタスク機能は同社の得意技といえる。アナログBSのほか、パイオニア初のGRチューナーを搭載し、クリアなアナログ地上波録画が可能だ。DVDマルチ対応やEPG、ネット機能などの新機軸は採用していないが、その分だけオーソドックスなモ録画機モにまとめられている。前モデルの課題の多くを解消し、録画デッキとしての完成度は格段に向上した。
●音声つき動画サムネイルのディスクナビなど親切機能が盛り沢山
GUIは多くの部分が改良され、とても分かりやすくなった。画面の表示速度も速くなり快適に操作できる。録画したタイトルの一覧を表示する「アドバンストディスクナビ」は、サムネイル表示が従来の静止画から、音声つき動画サムネイルに進化した。動画で直感的にタイトル選択ができるしくみだ。このほか「ディスク一覧」や「かんたん予約」などの親切機能の採用で使い勝手が向上している。
●タイトル・チャプター編集が手軽に
編集機能では、HDDでのタイトル・チャプター編集が可能になった。編集画面も一新され、サムネイルは音声付き動画で表示される。HDD編集は実タイトルのみだが、編集方式は、タイトルにチャプターマークを打って分割・消去・結合するMDライクなスタイルだ。「オートCMチャプター」機能を使えば、CMのシーンに自動的にチャプターマークを打て、手軽にCMカットできる工夫が凝らされている。通常の録画モードのほか、マニュアルレートで自在に録画時間をコントロールできる点も評価したい。
●DV入出力端子装備。入力・再生画質調整機能は最強だ
リモコンは前モデルとほぼ同じだが、機能とボタン配列の完成度が高く、編集などの細かい操作がしやすい。さらにDVカメラが繋ぎやすいDV入出力端子を装備し、DV音声1・音声2のミックスダウン比率が選べるなど、カメラ編集の機能も高い。多項目に渡る詳細な入力・再生画質調整機能はDVDレコーダーで最強といえ、TBCの同期安定化の効果も高く、これらは昔のビデオテープのDVD化などに重宝するだろう。D端子とデジタル音声光OUTだけでなく、コンポーネント端子とデジタル音声同軸出力を省かずに装備している点にも、AV機器としての良心が感じられる。
●再生回路にこだわり。高級DVDプレーヤー並のLSIを採用
クオリティ面では、再生回路へのこだわりがパイオニアらしい。映像DACは12Bit/216Mhzという高級DVDプレーヤー並のハイスペックなLSIを採用。このDACは、D端子やコンポーネント出力だけでなく、S出力やコンポジット出力にも有効だ。このほか独自のIP変換回路「VQE8」の採用で、フィルム素材だけでなく、テレビ録画などのビデオソースにも最適なプログレッシブ化を実現している。
●映画向きの素直な色再現を実現するチューナー画質
チューナーの基本画質は、同社らしく映画向きの素直な色再現と階調感をもった映像だ。詳細な入力イコライジングが可能なので、バラエティ番組向きの派手めな映像など、好きな画質に追い込むことも可能だ。GR性能も確実で、単純なゴーストなら確かな効果が期待できる。一般的に言って、GRチューナーはS/Nの低下を招く場合があるが、本機のGR機能はS/Nがほとんど変わらない。
●さらに高画質化、映像回路の実力がモノをいう録画画質
録画画質は、FINEなど高ビットレートはもちろん、SPなど中ビットレートでも、映像が滑らかでデジタル臭くない素直な絵柄を楽しめた。低ビットレートの画質もエンコード形式の変更で、前モデルより高画質化されている。エンコーダー性能の確かさとともに、ブロックノイズ用NRなどの映像回路の実力が感じられる。
●映画などフィルム素材の再生能力はほぼ完璧
映画DVDを視聴した印象は、ソースの質を素直に出すタイプで「トイ・ストーリー」など高S/NのCG映像は、目が覚めるようなクリアさで、高性能DACの実力が実感できる。解像感の高さと輪郭表現の素直さとともに、クロマエラーが目立たない点も評価したい。CGとともに夜のシーンも多い「ジュラシックパーク」(SUPERBIT版)では色の出や階調性が素直なシネマテイストで、これはパイオニアの伝統的な絵作りといえる。プログレッシブ変換の精度は、フィルム素材では、ほぼ完璧といっていいだろう。難しいとされるビデオソースのプログレ化もトップレベルで、テレビ録画でも再生能力の高さを活かせる点も特筆したい。
総じて見ると、DVD録画機、再生機としてのオーソドックスさに好感がもてる。思わず「テレビを録りたくなり、DVDも見たくなる」レコーダーといえるだろう。

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