解説:貝山知弘

●DVDオーディオのしくみ

DVDオーディオは、世紀の狭間で誕生した新しい音のディスクだ。CDと同じ12cmの光ディスクだが、CDの約7倍(片面1層)という記憶容量を持っている。この膨大な容量は、高音質化に向けることも出来るし、長時間記録にも、マルチチャンネル化にも向けることができる。

すでに、音質上、最高のフォーマットである192KHzサンプリング24ビットのリニアPCM高音質ステレオディスク (*1)、マーラーの交響曲全部を1枚のディスクに収めた長時間ディスク、最大6チャンネルまでのサラウンド音声を収めたマルチチャンネルディスクなどが発売されている。( *1:サンプリング周波数は再生出来る音域の上限、ビット数は再生出来る音の強弱差の上限と対応する。192KHzサンプリングでの再生限界は、CDの20KHz を遙に越える96KHz まで伸び、24ビットでは理論値144 デジベルという広大なダイナミックレンジが得られることになる。)

DVDオーディオのサンプリング周波数は44.1/48/88.2/96/176.4/192kHzの中から、ビット数16/20/24ビットの中から制作者が自由に選ぶことが可能だ。

DVDオーディオ上位フォーマット(96kHz/20bit以上)のサウンドからは、CDをはるかに超えた力感と緻密な質感を聴きとることができる。

 


DVDオーディオ
(1層の場合)
DVDビデオ
(1層の場合)
オーディオCD
容量
4.7GB
4.7GB
780MB
サイズ
12cm、8cm
12cm、8cm
12cm、8cm
チャンネル数
高音質6ch
8ch(最大)
2ch
再生周波数
DC-最大96kHz
DC-最大48kHz
5-20kHz
ダイナミックレンジ(理論値)
144dB
144dB
96dB
記録時間
74分以上
平均133分
74分
最大転送レート(音声)
9.6Mbps
6.1Mbps
1.4Mbps








必須オーディオ信号
PCM
ドルビーデジタル、MPEG、PCM
PCM
オーディオオプション
ドルビーデジタル、DTS、MPEGなど
DTS/SDDSなど
-
サンプリング周波数(2ch)
44.1/88.2/176.4/
48/96/192kHz
48/96kHz
44.1kHz
サンプリング周波数(マルチch)
44.1/88.2/48/96kHz
48kHz
-
量子化ビット数
16/20/24ビット
16/20/24ビット
16ビット
スマートコンテンツ
6ch→2ch
-
-





静止画
あり
あり
なし
Real Time Text
あり
あり(字幕)
あり
リージョナルコード
なし
あり
なし
簡易再生情報
あり(SAPP)
なし
あり(TOC)







ライナーノーツ情報
あり
あり
なし
メッセージの再生
あり
あり
なし
ホームページへのアクセス機能
あり
なし
なし
リリックリンク
あり
あり
なし
各種メディアの仕様比較表。DVDオーディオが音声再生に特化したメディアであることがわかる

 

●DVDオーディオを再生するにはどんなシステムが必要か?

DVDオーディオを再生するには、専用のプレーヤーが必要だ。現在市販されているDVDオーディオプレーヤーは、いずれもDVDビデオ、CDも再生できるコンパチブル機である。

DVDオーディオのマルチチャンネルディスクは6チャンネルまでのデジタルサラウンド音声を収録できる。

DVDビデオと同じチャンネル構成→フロント3ch、リア2chは構成にしたディスクが多い。その場合、残り1chをDVDビデオと同じ低音効果チャンネルに使う場合もあれば、使わない場合もある。このあたりは、ディスク製作者の主張が最も現れるところである。

ITU推奨のスピーカー配置図。 リスナーから各スピーカーまでの距離や 角度が定められているが、部屋の都合で 不可能な場合はAVアンプの設定で補正 することもできる(クリックで拡大)


DVDマルチチャンネルディスクの再生では、ステレオ再生では得られぬリアルな臨場感と音の実在感が得られる。マルチチャンネルディスクを、ステレオで再生することもできる。この場合、サラウンド音声はフロント2chにミックスされるわけだが、その配分や度合いを製作者の意図通りに行うことができる。

マルチチャンネル再生のスピーカー配置は、基本的にはDVDビデオの5.1chの場合と同じに考えていい。フロント左右のスピーカーは60°に開き、センタースピーカーはその中央にセット。サラウンドスピーカーは、フロント左右から90°開いてセットするのが目安となるセッティングである。

視聴者と各スピーカーの距離は、すべて同じにするのが理想だ。しかし、実際にこのような配置がとれる部屋は少ないから、リアを近くに配置するなどというケースが生じる。こうした距離差はプレーヤーやアンプの<ディレイタイムの調整>で補正できる。

 

貝山知弘
Tomohiro Kaiyama

東宝勤務を経てフリーランスの映画プロデューサーに転向。『化石の森』、『雨のアムステルダム』を製作。その後フジテレビと組み、『南極物語』の大ヒットを飛ばす。DVDの優位性をいち早く専門誌上でアピールした。オーディオと映像の双方に深い見識を持つ。


DVDオーディオ ソフト総カタログ
 →ジャンル別、五十音別で閲覧できる

DVDオーディオ プレーヤーカタログ
 →DVDオーディオが再生できるハードを紹介