森の音場プロジェクト 日東紡音響エンジニアリングが提唱する新世代のルームチューニング Acoustic Grove System 柱状拡散吸音体
タイトル画像:コンシューマー向けモデル「Sylvan」(シルヴァン)がついに発売!その効果を検証する レポート:田中井佐資  
目黒に住む友人の惣野正明さんが、自宅で日東紡音響エンジニアリングのパネルを試し、即座に購入を決めた。どんな感じだったんですか?と電話をしたら、「痛いところを突かれちゃってね」という話だった。

どこが痛いかというと、部屋の複雑な定在波によって100Hzあたりがずっとぼやけていた。それが、パネルを置くとスカッと消えた。測定した結果もそうなった。「はい、さようなら」というわけにはいかなくなったらしい。

という断片的な情報ぐらいしか頭になかった僕だが、そのパネル「シルヴァン」(森の住人、森の精霊の意)を自宅で試すことができた。営業推進部の山下晃一副部長と佐竹康主任が、じきじきに運び入れてくれた。

 
Acoustic Grove System「Sylvan」¥210,000(1台)●サイズ:400W×1,400H×200Dmm 右はカラーバリエーションの例

効果を試す前に、日東紡音響エンジニアリングという会社を紹介してもらった。それを思いっきり端折ると、日東紡音響エンジニアリングは、日東紡から派生してできた会社である。親会社はグラスファイバーや断熱材などを製造しているが、その関係で音場を整える業務を以前から着手していた。次第に音響分野の需要が高まるようになって、専門に別会社、つまり日東紡音響エンジニアリングが設立された。社員数は85人で、総務の2〜3人を除いて全員がエンジニアという異色な会社である(ちなみに日東紡は連結で3,600人を超す巨大企業)。

事業はテレビ、ラジオ、レコーディングスタジオの施工や建築会社のコンサルティングなどプロユース一直線でやってきた。オーディオファンになじみが薄いのもそのためだ。そして、今回紹介する「シルヴァン」はコンシューマー向け商品の第一号になる。

その開発の切り口は「森」の音場ということらしい。いきなり森と言われても面食らうが、なぜいい音響空間なのかを山下さんが説明してくれた。「壁がないので低域がきれいに抜けます。木が適度な間隔で立っていて、音が心地よく返ってくるんですね」。

惣野正明さん宅での実験
惣野正明さん宅の37畳のリスニングルームでは、部屋後方の壁面に設置してテストを行った。はじめは「SYLVAN」を、その後は奥行き60cmのプロ仕様も設置してみた。本文中にもあるように100Hzあたりの定在波が、聴感でも測定上でも解消されることがわかった

森の音響については、はるか昔から学問として研究が繰り返されているようだ。「そこで森に見立てたようなパネルを作りました。奥行きが60cmで太さが異なる円柱が林立しています。大手のスタジオでデモしたところ、自然な響きと解像度を両立させ、リスニングエリアが広がった評価され、採用されました。このスタジオで仕事をすると疲れないということで稼働率が急激にあがったようです」。

もちろん、この「仮想・森」は日東紡音響エンジニアリングによって、科学的に分析した産物である。試聴室でリスニングポイント背後の壁に単板を立て、そこに120カ所もマイクロフォンをセットして音を計測してみた。その結果、スピーカーからの音は単板に跳ね返って直接音と混濁していることがわかった。また跳ね返った音は減衰すればいいが、前方の壁にも到達、これがまた戻ってきていっそう音を濁らせていた。プロの現場はこれを避けるためにデッドな部屋を作る。そのため一般に仕事をしていて疲れる音響になっていることが多い。

次に、開発した「仮想・森」パネルを背後に立てかけて計測すると、細かく間接音を砕いて分散させ、直接音に色づけをしない。時間をおいてじわじわと減衰していく。それが心地よい緻密な響きになっていることがわかった。

とはいえ、60cm厚のパネルでは一般市民にとって現的ではない。そこでダウンサイジングした誕生したモデルが、この「シルヴァン」だった。

この円柱の素材はタモの集成材。それがランダムに立っている。ランダムといっても、いい加減に並べたのではなく、シミュレーション技術を使って、音の波長と径を計算して割り出したものだ。

 

それでは部屋で実際に聴いてみよう。最初に2枚を左右スピーカーの間、リスニングポイントの正面に置いた。2枚はぴったりくっつけている。

音楽全体が落ち着き、なんともいえない安定感が出た。安定感といっても分かりづらいが、音のにじみのようなものが取れて、定位すべきところに定位するようになった。特に低音方向が著しい。別にベースがもこもこしているなんて思っていなかったが、すっきりした。ただし、センターに音像が集まるような傾向がある。50年代のジャズを聴くなら間違いなくいいが、汎用的とはいえない。

そこでパネルの間隔を1mほど離してみた。センターに空きができたせいなのか、落ち着きはそのままで、音に奥行きがでた。こちらのほうが好ましい。

今度はセンターを外し、部屋の左右側面に1枚ずつ立ててみた。一次反射の成分をここで粉砕するというもくろみだ。これはもうひとつのようで、いままでの効果には及ばない。というより正面パネルの存在が大きすぎた。

「SYLVAN」を部屋の左右側面に1枚ずつ立ててみた

ここから枚数が増える。側面はそのままで、さらに2枚を正面に追加。これは飛躍的に効果があがった。2+2が6以上の成果だ。

たとえばライヴ盤を聴いても、拍手の抜けがいい。よく立ってる。変な話、あたかもお客さん全員が、きれいに手を洗ってきたようなのだ。つまり音色が微妙に変化している。低域がすっきりして、中高域に波及しているのだろう。

最後に「SYLVAN」を試聴者の背後、耳のすぐ後ろに設置

今度は、正面はそのままで、側面2枚を背面に移動させてみた。背面といっても部屋にゆとりがないので耳のすぐ後ろにパネルが立った。このケースが最高だった。楽器の位置関係もよく見える。像の前後感が素晴らしい。山下さんは「耳のすぐ後ろは、試したことなかったのですが想定以上でした」と言っていた。

部屋が狭くてパネルなんてとても置けないという人もいるだろうが、狭いからこそ、こうしたパネルで音を整える必要があるように思った。また形状が円柱なので反射角度などセッティングがシビアではない。ポンと置くだけでいいのは利点だ。

ちなみに「シルヴァン」は、オーディオファンだけでなく、スタジオやオーディオメーカー、演奏家からも引き合いがあるということだ。

 
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